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最終話『チョコレートケーキ・ユリーシャルテ』

「たしかに、先だってのシェアステラ動乱も、突き詰めれば庶民が食べていけなくなったことで、ついには王都全域に及ぶ大規模な抵抗運動へと繋がりましたからね。チョコレートケーキで私が失脚する可能性は、絶対にないとは言い切れません」


「パンがなければケーキを食べればいい――なんて、ついうっかり冗談で言ってしまったがために、飢えに苦しむ民衆の怒りを買ってギロチンされてしまった王族だか王妃だかも、かなり昔にいたらしいしな」


 何の冗談かと思うような話だが、歴史的な事実だった。

 食べ物の恨みはかくも恐ろしい。


「うーん。人間いろんな死に方があるとは思いますが、ギロチンはちょっと遠慮したいですねぇ。庶民の皆さんに恨まれてしまっては大変です」


「俺もギロチンは勘弁願いたいな」


「いいでしょう、この情報は大々的に公開することにします。これで私の身は安全です。むしろお得な情報を公明正大に公開したと賞賛されるのではないかと。それと――」


「それと?」


「このチョコレートケーキを女王アストレアの名の下に商品化します。そのうえで、さらに作りたても食べられるようにします」


「そんなに気に入ったのか。まぁ素人製作とは思えないくらいに、よくできていたとは思うが」


「私が個人的に気に入ったのもなくはないのですが、これはお礼です」

「お礼? 誰へのお礼だ?」


 急に話が飛んだように感じたリュージは、オウム返しに聞き返した。


「愚かな先王により暗闇に囚われていたこの国と私に、明るい光を与えてくれたリュージ様への、これはほんのささやかなお礼なんです」


「アストレア――」

 その言葉に、リュージはわずかに目を見開いた。


「覆水は盆に返らず、失われたものは戻ってきません。ユリーシャさんももう帰って来ることはありません」


「そう……だな」


「ですがユリーシャさんの想いはリュージ様の中に受け継がれています。ユリーシャさんはリュージ様の心の中に生きています。このケーキはその証なんです」


「──」


「ですがリュージ様もいつか鬼籍に入ります。大切な想いも思い出も、いつかは消えてしまいます」


「人の心だけは、どうやったって残せないものな」


「だから私は、ユリーシャさんの生きた証を形として残したいと思っています。この思い出のチョコレートケーキという形で、この先もずっと、長く、永遠に」


 アストレアは強い意思と切なる願いと共に、しっかりとリュージの目を見据えて言った。


「ありがとうアストレア。このお礼は、俺にとって人生最高のプレゼントだ」


 穏やかな声でつぶやいたリュージの目じりに、うっすらと涙が浮かんでいたのを、アストレアは見逃さなかったが、敢えてそれを指摘するような無粋は、もちろんしはしなかった。



 こうして、かつて『ブタの餌』とまで評されたチョコレートケーキを、アストレアはリュージの力を借りながら見事にリベンジし。


 さらにこのあと少ししてから、この日作ったケーキを元にした『チョコレートケーキ・ユリーシャルテ』が発売され、シェアステラ王国中で人気を博することになるのだが、それはまた別の機会に語りたいと思う。


―――――――


【改稿版】クロノユウシャ(全方位復讐譚)~最愛の姉を奪われた少年は、勇者の力を手に入れ復讐の鬼となる~「泣いて喚いて許しを乞うても、今さらもう遅い。あの世で姉さんに懺悔しな」


(完)

今度こそ完結です。

15万字に及ぶ長編をお読みいただきありがとうございました。


やっぱりね。

モレイオス男爵とかいうポッと出のモブの話で終わるより、アストレアとのメインストーリーの延長かつ本編のミニエピソードのフラグ回収みたいな話の方が、1億万倍エモいと思うんです!


ブタの餌

チョコレートケーキ・ユリーシャルテ


だよ?

進化を極めてて超エモくない!!??(≧▽≦)


皆さんの応援、とても励みになりました。

また読んでもらえるような作品を執筆できればと思います。


最後にブックマークと評価(☆☆☆☆☆)を入れてくれると嬉しいです!



そして

子猫を助けたら俺んちが1年生キラキラ美少女ツートップの溜まり場になった。

~子猫が繋いだ恋物語~2人の少女が恋したのは、過去の俺と今の俺――


https://ncode.syosetu.com/n8578jf/


子猫を助けたことで2人のキラキラ女子たちから好き好きされる甘々ラブコメです。

こちらもどうぞよろしくお願いいたします(ぺこり


それではまたどこかで~!٩(*´ᗜ`)ㅅ(ˊᗜˋ*)

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