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第20話 新生シェアステラ王国誕生

 リュージとの密約を結んだアストレアは、リュージの先導で北塔の入口へと降りたった。


 アストレアの傍らには、目を覚まして事の顛末(てんまつ)を聞かされたセバスチャンも、影のように控えている。


 そして、


「同志たちよ聞いてくれ! ライザハット王と重鎮貴族たちは、既に俺が討った! さらには北塔に幽閉されていたアストレア第一王女もお救いしたぞ!」


 リュージは声も高らかに、誇らしくそう叫んだ。

 リュージは今、自分が暴徒たちの一人であるかのように振る舞っているのだ。


「アストレア様だと?」

「ここ数年見た者はいないといわれていたが、幽閉されていらしたのか!」

「そう言えば聞いたことがある! アストレア王女はライザハット王の圧政を批判したせいで閉じ込められたと!」

「アストレア様は俺たちの味方だ!」

「真に我らを導くのはアストレア様だ!」

「アストレア様!」


 アストレアの名前を聞いた途端に、暴徒たちは口々にその名を連呼し褒めたたえた。


「さすがだなアストレア、たいそうな人気ぶりじゃないか」


 これはリュージも事前に調べていたことなのだが、庶民たちのヘイトを溜めに溜めていた王侯貴族たちの中で、アストレアとその一派だけは驚くほどに評判が良かったのだ。


 しかもアストレアは、リュージが舌を巻くほど頭の回る切れ者ときた。


 群衆の反応を見て、アストレアに王を任せることにしたのは正解だったとリュージは確信するとともに、ほっと一安心していた。


 もしもアストレアの王位継承に反対する民衆が多ければ、そいつらを見せしめに殺して回る必要があったからだ。

 復讐のためならばリュージは手段は択ばない。

 殺すのにためらいもない。


 アストレアには今後の隠れ蓑として必要な新生シェアステラ王国の、王になってもらわなくてはならない。

 であれば、アストレアの地位を脅かす者がいれば、障害として排除することに何らためらいはなかった。


 とはいえリュージは殺人鬼でも殺人狂というわけでもないので、できれば殺さないに越したことはないとも考えている。


 その点、アストレアの庶民からの人気ぶりはリュージに十分な満足と安心を与えてくれていた。


「知っての通りアストレア王女は、国民を愛する善良な王族だ。しかしながらライザハット王とフレイヤ王女の姦計によりこの北塔に閉じ込められ、自由を奪われていたのだ! それを今、解放した! 新たなシェアステラ王国は、やはりこの方が導いていくべきだと俺は思う! みんなはどうだ!」


 リュージの多大に扇動的な言葉に、


「アストレア様バンザイ!」

「新生シェアステラ王国の誕生だ!」


 群衆たちは声を大にして賛意を示して盛り上がる。

 その中には暴動の最初にリュージが会話を交わしたリーダー格の青年もいた。


 彼はリュージの言葉を引き取るように、周囲の者にアストレアがいかに女王としてふさわしいかを言葉巧みに語って聞かせている。


「さてと、流れは作った。後はアストレア、お前次第だ」


 アストレアを支持する声がどんどんと大きく広がっていくのをしっかりと見届けてから、


「う――」

 リュージは精魂尽きたとでも言わんばかりに、派手にぶっ倒れた。


「リュージ様!? 突然どうされたのですか!?」


 アストレアが呼びかけるものの、リュージの意識はもう完全に闇の中にあった。


 リュージの使う神明流の『気』とは生命エネルギーそのものだ。


 膨大な『気』を消費する神明流・皆伝奥義・十ノ型『不惑』によってアストレアの目を癒したことで、リュージの生命エネルギーは完全に空っぽになっており、もはや立っていることすら不可能だった。


 むしろ今まで一度立ちくらみをしただけで、後は疲れた素振りすら見せなかったのが不思議なくらいだった。


「リュージ様、リュージ様! だめです、意識がありませんわ。セバス、すぐにリュージ様を安静な場所へ! 私は今、新たな王としてこの場所を離ることはできないのです」


「承知しております。すぐに手当てを施しますゆえ、どうかアストレア様は新王としての職責を果たされますよう」


 こうして『気』の使いすぎによる極度の疲労で意識を失ったリュージは、セバスチャンに背負われて新女王誕生の晴れの舞台を後にしたのだった。


――――――


(作者注)アストレアはメインヒロインなので、復讐ざまぁの対象外です。アストレアに関してはリュージが殺すことは決してありませんので、安心して読み進めてください。

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