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第14話 近衛騎士たち

 進むにつれてまばらになる群衆を横目に、リュージは王宮の北塔へと向かった。


 そして王宮の建物とは完全に切り離された、敷地の最北端の隅にあるこの北塔に付いたころには、周囲に反乱暴徒たちの姿はなく、嘘のように静かだった。


 もちろんそれも今だけのことで、すぐにこの辺りも蜂起した民衆たちによって埋め尽くされるだろう。


「怪しい奴め。ここは部外者は立ち入り禁止だ、即刻立ち去れ」


 そんなリュージに、北塔の入り口を守るように立っていた衛兵の一人が居丈高に呼びかけた。


「ここにいるっていうアストレア王女に用があるんだけど、通してくれないか?」


 リュージの返事を聞いて、衛兵たちの表情が一気に険しくなる。


「ここにアストレア王女がおられることは、ごく一部の者しか知らされていないはずだ。どうしてお前が知っている?」


「フレイヤ王女から聞いたんだよ」

「フレイヤ王女から? 王女様の使いの者か?」


「ま、そんなとこだ。だから通してくれ」

「いいや、それでもダメだ。我々はここでアストレア王女を守り、誰も通さぬようにとの王命を受けているのでな。確認がとれぬ相手を通すわけにはいかん」


「急ぎの用なんだ」

「ならぬものはならぬ」


 リュージがフレイヤ王女の名前を出しても、しかし衛兵たちは取り付く島もなかった。

 そんな衛兵たちの傲慢な態度に、リュージの中で怒りが渦を巻きはじめる。


「おかしいな? アストレア王女はここで幽閉されているはずなんだが、お前らの中では閉じ込めて出さないことを『守る』って言うのか?」


「なんだと? 近衛騎士たる我々を愚弄する気か貴様!」


 衛兵の一人が――それもただの衛兵ではなく近衛騎士だ――が、威嚇するように剣を抜いた。

 つられるようにして他の面々もそれぞれ剣を抜く。


「はぁ……、せっかく人が穏便に済ませてやろうと思ったのによ。慣れないことはするもんじゃねえな」

「はあ? 何を言っている?」


「ただの独り言さ。少しだけ情に流された甘すぎる自分を反省してたんだ」


 フレイヤが男どもに好き放題犯され泣きわめく姿に、リュージは姉の姿を重ねてしまい、本気で気分が滅入っていたのだ。

 だから次は少しだけ優しくしようと考えていたのだが、どうやらそんな考えは間違いだったと知る。


「みずから善悪を把握することもなく、主君の過ちを(いさ)めることもなく、言われたことをただただこなすだけ。王女の幽閉に平然と加担し、さも正しいことをしているかのように振る舞い続ける。その姿のなんと醜悪なことか。へどが出るぜ」


「我らを醜悪だと申すか!」


「そうさ、アンタらみたいなのしかいないから、姉さんやパウロ(にい)みたいな悲劇が生まれるんだ」

「は? いったいなんの話をしている?」


「ほんとこの国は、上か下までどうしようもなく腐っていやがるよ。ま、それが再確認できただけでも収穫とするか」


 リュージがわずかな音すらさせずに刀を抜いた。


「貴様、抵抗する気か――かはっ……」


 しかし次の瞬間には、声をあげた近衛兵が崩れるようにその場に倒れ伏していた。

 物言わぬムクロとなり果てた衛兵の身体から、真っ赤な血の海が広がっていく。


 リュージが目にも止まらぬ速さで斬り捨てたのだ。

 さらに、


「神明流・皆伝奥義・三ノ型『ツバメ返し』」


「なにっ! ぐは――っ」

「貴様! こふ――っ」

「ひぃっ!?」

「ぎゃぁっ!」

「や、やめ――」


 残りの近衛兵たちも、リュージの放つ目にも止まらぬ連続斬りの前に、まともな抵抗すらできずに次々と斬り捨てられていった。

 6人いた衛兵はものの10秒もかからずに、全員がその命の(ともしび)を消し去ることになった。


「ったく、無駄な時間を使っちまった。最初からこうしておけばよかったよ」


 リュージは自分の甘さを大いに反省をすると、浪費した時間を取り戻すべく、最上階へと続く北塔のらせん階段を、3段飛ばしで軽やかに駆け上

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