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元荷物持ちの冒険者生活  作者: 近視のスナイパー
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3人組の冒険者

 冒険者生活2日目。俺はボロいけど容量の大きそうな鞄と中古の盾を買った。合わせて銀貨2枚。良い買い物だったと思う。これで少しは薬草採取の効率が上がるはずだ。

 薬草採取はギルドに常にある常設依頼。わざわざ受注しなくても受け付けに薬草を持っていけば依頼として対応してくれる。主に駆け出しがやる仕事だが、俺は駆け出しなので問題ない。むしろ適任だ。

 帝都の門を出て森に向かう。今日は時間に余裕があるから街道から少し外れて歩いて売れる物を集めながら森を目指した。

 薬草はほとんど生えてないけど…たまに魔石が落ちていたりする。魔物を倒した人が回収しなかったんだろう。魔物の体内にあるから回収も手間がかかる。それなりの冒険者にもなると小物の魔石はいちいち回収しないんだ。


 「俺にとってはお宝だけどな」


 最近、自分のスキルを確認していないけど何か採取系のスキルでも発現したのかもしれない。なんとなく惹かれる感じがするほうに進むと薬草の群生地があったり、魔石が落ちていたりする。…俺、これだけで生活できるかもしれない。

 街道から逸れると平原が広がっている。遠くまで見えるなだらかな地形。これだけ見通しがいいと魔物がいてもすぐに見つける事ができるだろう。パーティーにいた頃は索敵をしてくれる子がいたから安心だったけど、今は俺1人。常に警戒しなきゃいけない。そこら中に魔石が落ちてるって事はこの辺りに魔物がいるって事だからな。


 森に着くまでに2回襲われた。ウルフ4匹とゴブリン3体。どちらも2体盾で撲殺したら残りは逃げていった。ウルフは収納に入れてある。解体する道具がなかったからね…明日はナイフを買ってこなきゃな…だからとりあえず収納に入れたんだ。帝都の近くまで行ったら収納から出して担いで帰ればいい。帝都の中で収納から出すのは気を使うからな…

 ゴブリンが小さい棍棒を持っていたので使わせてもらう事にした。武器を使う事に慣れていない俺には丁度良さそうだったから。俺でも棍棒を振り回すくらいはできるだろう。死体は放置した。ウルフが食べると思う。


 森に着く頃には鞄の3割くらいは集めた素材で埋まってた。…しまった。昼飯を買ってくるの忘れた…

 仕方なく森で木の実を拾って腹を満たす事にした。森には茸もいっぱい生えてたけど…食べる勇気はなかったな。俺が知ってる茸なんて売ったら高い茸くらいだ。他の茸は種類が多すぎて無理。ちょっと色が違うだけで毒茸だったりするしな…わかんねぇよ。


 森での採取は順調だった。途中で新人っぽい3人組の冒険者がいたけど、剣士の男が怪我をしてたから薬草を使って応急処置をしてあげた。もちろん打算だよ。助けて感謝されたい訳じゃない。見て見ぬ振りをして悪評が広がるのを避けたかっただけだ。前衛はこの小柄な剣士だけか。残り2人は弓と杖を持っている。後衛だな。


 「ありがとうございます」


 「血の匂いで魔物が寄ってくるかもしれない。余力が無いなら帝都に帰ったほうがいいよ」


 「…まだ依頼を果たしていないので…」


 「どんな依頼?」


 特別な依頼じゃなければ隠す義務は無い。普通の依頼なら依頼板に依頼書が貼ってあるからね。必要なら他の冒険者と助け合うのも選択肢の一つ。自分のパーティーだけで達成したいって気持ちもわかるから俺から協力するとは言わない。


 「ボアの討伐です」


 「無理」


 思わず言ってしまった…だって…ボアだぜ?体重200kgの好戦的な魔物だぜ?いかにも駆け出しっぽい3人組がどうにかできる相手じゃない…アイツ…すげぇタフなんだよ…


 「やってみなきゃわからないじゃないですか!」


 「ゴブリンに手傷を負わされるような力量じゃ無理だ。命を失ってもいいなら止めないけどね」


 3人の傍には2体のゴブリンの死体があった。あ…ナイフ持ってる…あれ欲しいなぁ…


 「…怪我の治療をしてくれた事には感謝します。でも…僕達はやらなきゃいけないんです!」


 「…なんで?」


 「お金が無いんです!」


 「………」


 なんだろう。妙な親近感を感じてしまった…俺にはこの3人を見捨てる事ができない…しかし…


 「ボアねぇ…討伐するなら縄張りを探さなきゃいけないけど…」


 「大丈夫…ここ…縄張りだから」


 弓を持った女の子がそう言った。周りを見てみると何本かの木の根元にボアの縄張りを示す傷が付いている。マジかよ…

 周囲の空気が変わった。何かに見られているような感覚…はぁ…関わるんじゃなかったな…コイツらがいなければボアの縄張りに入った事に気付いただろうに…


 「来るぞ!」


 俺の声で3人は臨戦態勢に切り替わる。望まぬ共闘だけど仕方ない…先輩としてここで見捨てる訳にもいかないしな。駆け出しだけど…

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