報復だ
ある国のプロリーグで、キャッチャーAがデッドボールを食らった。
二打席連続だ。さすがに頭にくる。
相手ピッチャーのCをにらみつけながら、一塁へと向かった。
しばらくして、味方の攻撃が終わる。攻守交替だ。
先ほどデッドボールを食らったキャッチャーAは、味方ピッチャーのBにひそひそ声で言う。
「報復だ。全力でぶつけろ」
報復のデッドボールを指示した。
目には目を、歯には歯を。やったら当然、やり返される。それが人の世の常識だ。
なので、デッドボールにはデッドボールを!
「相手がしばらく地べたをのたうちまわる、そんな素敵なデッドボールを希望する」
「勘弁してください。自分、そういうのは苦手なんで」
報復のデッドボールを断る、味方ピッチャーのB。
すると今度は、チームの監督と話し始めた。
(何を話しているんだろう?)
Bが首を傾げていると、二人が会話をやめる。
そして一分後、球場にアナウンスが流れた。
「ピッチャー交代のお知らせです」
そこまでするかと思ったが、その続きを聞いて、さらに驚いた。
新たにマウンドに上がるのは、キャッチャーAだ。しかも、新たにキャッチャーをするのは、今までピッチャーをしていた自分?!
要するに、バッテリーのポジションが入れ替わった形だ。
球場がざわつく中、さっきまでキャッチャーをしていたAが、マウンドに上がる。
そして、打席にいるのは、相手チームのピッチャーCだ。二打席連続でデッドボールをしてきた、憎い相手である。
当然ながら、報復のデッドボールだ。渾身のストレートが、Cの顔面を直撃した。
「おっしゃああ!」
悶絶する相手を見ながら、大喜びでガッツポーズをするA。
その直後だ。球場にアナウンスが流れる。
「ピッチャー交代のお知らせです」
報復完了。バッテリーはそれぞれ元のポジションに戻った。
次回は「ジグソーパズル」のお話です。