表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空の鱗と海の翼  作者: 『空の鱗と海の翼』制作委員会
天縛の輝石/橘 紀里
11/40

いつかまた(最終話)

「本当にいいのかよ」

「いいの。それに別にあなたがついてこなくてもいいんだけど」


 隣を歩く背の高い男に、シェンはため息混じりにそう呟く。セラノは相変わらず雑に(くく)った鉄紺(てつこん)の髪を揺らし、無精な髭まで生えた顔に癖のある笑みを浮かべて肩を竦める。

「あんたみたいな世間知らずを一人で放り出すわけにもいかねえだろうが」

「別に何かあれば飛んで逃げればいいだけだし」

「知らねえのか、魔術師や研究者にとっちゃ竜は研究対象だ。あんたみたいな世間知らずの雛はすぐに捕まっちまうぞ」

「なんて罰当たりな……」

「散々見ただろうが」

 それもそうか、と納得した彼女に、セラノは深いため息をつく。自分が仕えていた神官長がイカれた研究者であった事実は今だに彼に暗い影を落としているのだろう。だからこそ、旅立つ彼女の護衛を買って出た。

「でも、空の神殿って本当にあるの?」

「あるさ。俺は訪れたことはないが、今も神の声を聴く神官たちがいるはずだ」


 翼を取り戻した彼女に、ネルクは空の神殿を訪れるようにと言った。狭間の神殿で白竜と黒竜が害されて以来、他の白竜と黒竜の姿を見たものはいない。緋竜はハルが生み出した、人を害し竜の居場所を探る使い魔のようなものであったが、その彼らをもってしてさえ、いっかな見つからなかった。


 少ないとはいえ、それなりの数の竜が残っていたはずだ、とネルクは語った。


「すべての竜が滅んだとは思えません。神がお隠しになっているのか、あるいは封じたもうたのなら、いずれにしても神殿を訪ね、神のご意向を伺う必要があるでしょう」

 竜を付け狙っていたハルと緋竜が滅ぼされてもなお、竜が姿を見せないのには何か理由があるのか。神気の乱れによって曇った空は、一時的に浄化し青空を見せたものの、まだ全てが払いきれるほどではない。


「大仕事だな」

 ニッと笑った顔にもう一度ため息をつく。大空を飛ぶことを知った。もし、他にも仲間がいるのなら、会ってみたい。そして何よりも。

「青空を、見てみたい」

「ああ、そうだな。海も見にいこうぜ。あんたのその瞳みたいに綺麗な場所がある」

 じっと見つめる瞳に何か不思議な光を感じ取って、心臓がおかしな音を立てた。

「……あれ?」

「ふうん、まあいい傾向か」

 ニヤニヤ笑う顔になんだか意味深さを感じ取って、その腕を掴もうとしたけれど、するりとかわされ。そのままスタスタと先を歩き出してしまう。

「な、何なの?」

「別に」

 セラノはくつくつと笑うばかりで振り返りもしない。ひらひらと手を振る後ろ姿にもう一つため息をついてから、空を見上げる。


 ほんの一面とはいえ、靄を払われた空は透き通るように美しかった。見渡す限り広がる空の全てがあの青さを取り戻したら。


「おい、置いてくぞ」

「別にいいけど」

「可愛くねえなあ」

 呆れたように言いながらも、足を止めたその背の高い姿に追いつきながら、一度だけ振り返る。いつか本当に、澄み渡る空を取り戻すことができたのなら。


 一緒には行けない、と哀しげに笑った彼と共に、また笑えるだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ