百十八雨
「(・・・・)」
"ジジッ------
「・・・それにしても------」
「・・・・」
「I'm sure you'll soon grow tired of the
relationship if you talk boredom with the
woman in the right palace--------
(適当にその場の女と退屈な話をしても、
すぐに関係には飽きが来るだろうな------)」
どこからか時折聞こえてくる声を聞きながら
征四郎が、雅、尚佐、綾音の隣で
無言でグラスに入ったウイスキーを傾けていると、
雅の隣に座っている尚佐がグラスを片手に
何かを呟く
「------結婚式、と言うのも....
男にとっては、大した事じゃあ
無いかも知れないが
女にとっては、ある意味
大切な事なのかも知れないな...」
"カラ...."
「------何を言ってるんだ」
"ヒョイッ!
「だって、そうでしょ----っ!?」
「・・・・」
"ガタッ"
よく分からない、曖昧な言葉で語り掛けてくる
尚佐に征四郎が不快な表情を見せると、
隣の椅子に座っていた雅が
カウンターの上に身を乗り出しながら
征四郎に大きな声を上げる
「あのさー、あのさー...」
「・・・何だ?」
回りくどい話が好きではない征四郎は
雅の様子に無関心を装うが、
カウンターの上に身を乗り出した雅は
何か、気恥ずかしそうな様子を見せて
下を向きながら喋っている
「や、やっぱ、式ってのはさー...」
「・・・結婚式の事か」
「そ、そうなんだけど...」
「------結婚式ってのは、女の一生を
左右する一生の出来事だものね」
「------"!"
そう! そう!」
カウンターの端にいた綾音の言葉に、
雅は大声で返事をする
「やっぱ式ってのはさー
こう、女にとって...大事って言うか...」
「・・・何の話をしてるんだ?」
「"一生"をちかう物なんだよ?」
「・・・・」
「そ、それでさー...」
「(・・・・)」
目の前の雅は、子供だからか、
何か取り留めの無い事を話しているが、
征四郎にはそれより、今この状況の
おかしな曖昧さに意識が向く
「・・・あの時、お前は、
"圭介"といたのか?」
「・・・圭介?」
「・・・知らないのか?」
「圭介・・・」
子供の姿をした雅は、征四郎の言葉に
目を丸くしながら、何かを考えている様な
顔付きをしている
「・・・圭介ってのは、前の雅の旦那だろう?」
「知ってるのか?」
「------どうだろうな ククッ」
「・・・・」
圭介の名前を突然口に出した尚佐に
征四郎が目を向けると、何故か
尚佐の左の耳が大きく腫れ上がっている様に見える
「あの、結婚式の意味はなんだったんだ------?」
「Lamenting your life in self-mockery is
not enough to move on....
(自嘲気味に自分の人生を嘆いても
先へ進むのには不十分だ....)」
「どうなのかなー」
「やっぱり、雅が圭介君と式を挙げてたって事は、
雅は圭介君の事が
気になってるんじゃないのか?」
「う~ん....」
「(・・・・)」
尚佐が、隣に座っている雅に問い質すと
雅は困った様な表情を浮かべながら、
視線をふらふらとさせている...
「やっぱり、結婚は大事だものね------」
「----そうだね!」
「(----------