EX1 憧憬
※閲覧注意
読まずに飛ばしても大丈夫な話です
最近森でよく見かける二人組。
一人は長身で黒髪のお兄さん、もう一人は焦げ茶色の髪の毛のお兄さん。
たぶん二人とも私と同い年かそれくらい。
最初に見たとき、背が高い方のお兄さんはずっと立っているだけで、
魔物と戦っているのは焦げ茶色のお兄さんだけ。
よくわからないけど、先生とお弟子さんみたいな関係らしい。
スライムのことを攻撃してぼーっと立ってるお兄さんを見て、
思わず「危ないよ」って言ってしまいたくなる。
まだ冒険者になって二月も立ってない私でも心配になるような動き方、
きっと冒険者になりたての新人さんなんだろうな。
なんて思ってたんだけど、彼は見る見るうちに成長していった。
私も倒すのに苦労するバウルを、一人で3匹も相手にして勝っちゃうなんて!
私がへっぽこなだけかもしれないけど、
それだけとは思えないほどあのお兄さんの成長速度は凄かった。
いいなぁ、私もあのお兄さんみたいになれたらなぁ……
最近は森に入るとすぐに二人を探してしまう。
あの二人は冒険者だと思ってたんだけど、ギルドでは一度も姿を見たことがない。
どうして依頼も受けないでずっと魔物を倒してるんだろう……
すごいすごい!
焦げ茶色のお兄さんは、空飛ぶ黒いスライムの群れや、
私が見たこともない大きな魔物をみんな一人で倒しちゃった!
最初は初めての敵に戸惑っているのがここから見てもわかるくらいだったのに、
気付いた時には魔物を圧倒して、一方的にとどめを刺すお兄さん。
「かっこいい……」私はいつの間にか彼のファンになっていた。
初めてギルドであの人を見かけた。
あの人っていうのはいつもの二人組の背の高い方。
黒い髪のお兄さんは受付で何かの依頼を受けてすぐに出て行ってしまった。
あの二人が受ける依頼ってなんなんだろう?
最近はちょっとお金にも余裕あるし、1日くらいなら仕事休んでもいいよね?
二人を追いかけていたら、随分深いところまで来てしまった。
こんなところ一度も来たことないよ……
焦げ茶色のお兄さんが魔物を全部やっつけてくれたからここまでこれたけど、
このままついていっちゃっても大丈夫なのかな……
たどり着いたのは岩の陰にある小さな洞窟。
そういえば、森の奥にはゴブリンの群れが出るって、誰かが言ってた気がする。
本物のゴブリンは見たことないけど……もし私が戦ったら勝てるのかな?
そうこうしているうちに二人は洞窟の中に入っていく。
慌てて後を追おうとすると、一瞬だけ、
背の高いお兄さんがこっちを見たような気がした。
もしかして気付かれた!?
つい木の陰に隠れてしまったけど、
二人はそのまま洞窟の中に入っていったみたいだった。
念のため少し時間を置いてから私も洞窟の中を覗き込む。
薄暗くて静かで不気味な感じ……
入りたくないなぁ、なんて思いながらも私は――――
世の中救いようのないこともあります