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物語はマジで突然に


「おめでとうございます、神崎(かんざき)(きずな)さん。このたび貴方は異世界転生の権利を獲得しました」


白い。白くて何もないこの空間で、目の前に佇むこれまた白い女性は俺にそう言った。


「え、はい……はい?」


――異世界転生。聞き慣れた言葉だ。

今や世のオタクコンテンツの大半にこの言葉は絡んでいると言ってもいい。正直聞き飽きた言葉だが、目の前の女性が言っていることはつまり……


「……俺、死んだんですか?」

「はい、その通りです」


「ははは……冗談?」

「本当にそう思いますか?」

「…………」


そうじゃないな、突然のことで気が動転していたけれど、思い出した。俺は確かに死んだんだ。道路の横断中にトラックに轢かれるっていう、物語としてはあまりにもベタな原因で……


「はぁ、確かに死んだんですね、俺」

「はい」

「……もう少し、その、情緒とかないんですかね……」

「申し訳ありません、そういったことは得意としておりませんので」

「そうですか……」


まぁ、いい。話が早いのは俺も嫌いじゃない。小説の読み過ぎか、女神ってもう少しうざかったり理不尽なことを言ってくるような先入観があったけど、普通に考えればこっちの方が正常だろう。というか、


「……女神さまで合ってます……よね?」

「はい」

「ああ、やっぱり……そうでしたか。お目にかかれて光栄です、なんて……はは」

「…………」


「……えっと」

「本題に戻っても、よろしいでしょうか」

「! あ、ああ、本題! そうですよね! お願いします! いやぁ、すみません、無駄話ばかりしちゃって」

「いえ……それでは改めますが、神崎絆さん。このたび貴方は異世界転生の権利を獲得しました。貴方には転生特典が一つ与えられ、今まで生きてきた世界とは異なる世界、『ウァナディーズ・アーデ』にて新たな生を受けて頂きます」


「わな……すみません、なんて?」

「『ウァナディーズ・アーデ』です。ご心配なさらずとも、この呼び方は私たちが便宜的に使用しているだけのもの。貴方があちらで使うことはないでしょう」

「そうなんですか」

「はい。この世界に住む人々は、己の生まれた大地を『アスティラ』と呼びます。貴方もこちらの呼び方を覚えておけばよいかと」

「アスティラ……わかりました。ありがとうございます」


「あちらの世界で貴方が何をするかは自由です。己の思う通りに新たな生を謳歌してください」

「思う通りに……」


「それでは、転生の儀を始めます。少しの間、じっとしていてくださいね」

「あ、えっ!? あ、はい……」

(ちょっと待って、説明とか無いの?? 転生特典とやらがなんなのかも、転生先がどんな世界なのかも聞いてないんだけど……こんなにあっさり進んで大丈夫?)


そう思うも束の間、俺の周りは次第にホワイトアウトしていき……


「貴方に祝福を」


最後に聴こえた言葉と共に、俺は意識を失った。

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