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正式決定

 「……プライス? 今、なんて言ったのかしら? 聞き間違いかもしれないから、もう一度話してくれる?」


 風の聖剣が俺を選んで数時間。

 女王様にも報告はしなければならないので、王宮内の玉座の間に来ていた。


 ちなみにレビーにはもう伝えてある。

 色々と文句を言われることを覚悟していたが、

 レビー曰く、風の聖剣が彼女に話しかけてくれたことは一度も無かったらしい。


 そのせいだろうか。

 悲しそうに笑いながら、完全に吹っ切れましたと言って、彼女は納得した……のだが。


 俺を選んだとはいえ、あくまで風の聖剣はマリンズ王家の物。

 すぐにでも、マリンズ王国へと行き、風の聖剣が俺を選ぶまでに至った今回の一連の騒動をマリンズ王家に説明して下さいと頼まれてしまった。


 ……説明して下さいと言われてもな。

 他国の王家に簡単に会えるわけがない。


 なので、報告も兼ねて、どうにかマリンズ王家に会えないか女王様に相談しに来たわけだが……まあ……やっぱり焦るよね。


 「……信じられないかもしれないですけど、マリンズ王国の聖剣が俺を選びました。それを前の聖剣所持者であるレビーさんに伝えたら、すぐにでもマリンズ王家に説明してくれと」

 「……聞き間違いじゃなかったのね。また面倒なことを……」

 「……すいません、女王様。次から次へと面倒事を持ってきて。……本当にすいません」


 頭を抱える女王様に対して、俺は謝ることしか出来なかった。

 本当、女王様は可哀想に。


 魔剣関連といい今回の一連の騒動といい、ベッツ家の関係者はどこまで女王様に迷惑をかければ良いのだろう?


 あ、俺もベッツ家の関係者だったわ。


 「はあ……分かったわ。イーグリットの使者としてダリアと一緒にマリンズ王家に説明してきなさい」

 「え? ダリアもですか? ……しかし、今回の件はあくまで俺のせいですし……わざわざダリアの手を煩わせなくても……」

 「……良いのよ。ついでにユリアとダリアを久し振りに会わせたかったの。……ダリアはとてもユリアのことを心配していたから」


 ……ユリアさんか。

 ベッツ家や第一王子派による計画の最初の被害者であり、最大の被害者でもあるからなあの人は。


 本来だったら、ユリアさんが次の女王としてイーグリット王国のトップになるはずだったのに、アイツらに無理矢理嫁がされて、評判の悪いマリンズ王国の第二王子の夫人という、不名誉な肩書きを得てしまった。


 ステフの話からしても、あんまりユリアさんがマリンズ王国で幸せそうにしている……というわけでも無さそうだし。


 ……あれ? それならダリアと会わせない方が良いんじゃ……?

 しかし、俺がそう考えているのを読んでいたかのように女王様は話を続ける。


 「……ダリアには覚悟を持ってもらわないといけないわ。私の跡を継げるのはダリアしかいないのだから。マリンズ王家の人間の子を孕んだ時点で、ユリアはもうイーグリットの女王にはなれない。……でもね、どこかダリアはまだユリアを女王にすることを諦めていないのよ。……自分に自信が無いからなのか、それともユリアという民に愛された第一王女の幻影を追い続けているのかは分からないけど」

 「…………」


 分からなくはない。

 ダリアは常に周りの人間から過小評価され続けてきたからか、俺と旅を一緒に続けて、少しは改善したかもしれないが、それでもダリアが自分に自信が持てないと言い出すことはまだある。


 それに俺と同じように、優秀で人望のある姉と常に比べられていた。

 ユリアさんの幻影を追うなというのも酷な話だ。

 ダリアだって追いたくて、追っているわけじゃない。

 無意識に追ってしまうんだ。

 

 ……かつての俺もそうだったから、よく分かる。


 ……ん? あれ?

 普通にスルーしてたけど、私の跡を継げるのはダリアしかいない?


 「……あの、女王様? ダリアが次のイーグリットの女王になるっていつ決まったんですか? 色々と面倒なことになるから、ダリアとは決まっているけど正式決定は先じゃ……?」


 次の王はダリアと決めてしまうと、第一王子派の貴族に加え、領主や王族の人間の反発があるから、一応第一王子にも可能性があるようにするしかないとか言っていたのに。


 「昨日決まったばかりよ。ラックス達と話し合いをするからって、アザレンカに私の護衛を頼んでいたでしょ? その時に決まったのよ。……まあ、ラックスにまだ騎士王でいたいのなら中立派などと言わず、第二王女(ダリア)派になりなさい? と私は言っただけ、選んだのはあくまでラックスよ? そうしたら何故かマットも第二王女派になりますと言ってね? 女王である私、騎士王であるラックス、大賢者であるマット。この三人がダリアを次の女王にすると決めたのだから、反発も出来なくなるだろうし、正式決定で良いわねってなったのよ」


 女王様は満面の笑みで頷く。


 ……いや、女王様……ラックスのことを脅して無理矢理第二王女派にさせたのか……。

 ラックスが第二王女派になったと聞けば、マットも焦って第二王女派を表明することも見越して。


 やっぱり……怒らせると怖いな。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは87話+アザレンカルートが掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

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