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悲惨なのはもう一人

 レビーを包んでいた聖火が消えると、彼女の負っていた傷は、何事も無かったかのように消えた。

 勿論切断されていた四肢も元通りだ。


 まあ今回は斬られただけで、手や足が原型を留めていたから元通りに出来た訳だが、もしグチャグチャになっていたら元通りの身体に治すという事は不可能だっただろう。

 運が良かったな。


 「相変わらず凄いわね。聖火というのは何でもありなのかしら」

 「何でもありではねえよ。アザレンカの時もそうだったろ」

 「それもそうね……すぐにマット達を呼んでくるわ」


 そう言うとダリアはマット達を呼びに、急いで部屋を出て行った。

 復燃治癒(リラプス・ヒール)で回復しても、魔力や精神的ダメージまでは回復しない。

 

 セリーナとエリーナに拷問をされていたアザレンカがそうだった。

 普通のアザレンカへ元通りになるまで一ヶ月近く掛かってたしな。


 ダリアもそれを分かっているから、急いで呼びに行ったのだろう。

 精神的ダメージに関しては、俺にもどうしようもないからな。

 早いところ治療や回復をする事が出来るのなら、さっさとしてあげたほうが良いに決まっている。


 ……けど、治療や回復をした所で……彼女はまた剣を握れるのだろうか。


 眠っているレビーの姿を見ながら、ふと考えてしまう。


 目の前で仲間が殺された上に、自分も死にかけた。

 治療の為に無理矢理眠らされたのか、痛みで気絶してしまったのかは分からないが、彼女が目覚めたらどうなるのだろう。


 もし、俺が彼女の立場だったら。

 仲間が目の前で殺されて、しかも自分は四肢を斬られて負けたなんて事があったら、俺も正気を保っていられる自信がない。


 それどころか、一生剣だけじゃなく武器全般は持てなくなるね。

 何なら、一生戦う気も起きないんじゃないか。


 ……まあ、彼女にとって本当に大切な人間が死んでいなかったのが幸いか。

 最後の最後まで、言い争っていたんだし、そこまで仲間って関係でも無いかもしれん。


 むしろそうであって欲しい。

 そうじゃないと、彼女も一生戦えなくなる気がするから。


 「さあ、早く入って。彼女のケアを急いで」

 「いやいや、ダリア様……あの大怪我ですよ? 流石に早過ぎじゃ……って、ええ!?」

 「治ってますよ!?」

 「い、一体どんな回復魔法を!?」

 「……これ、私達いります?」

 「いいから早くあなた達の仕事をしなさい! 私達も彼女に聞きたい事があるの!」


 マットに回復出来る奴をすぐに動かせるようにしておけと頼んでおいたお陰もあってか、数分も経たない内に、ダリアが魔法使いと医者を連れてきた。

 ……って、マットはどこ行きやがった。

 あの野郎……面倒臭い事は俺達に任せて、自分はやりませんってか?


 「ここからは、任せましょう。私達がやれる事はやったわ」

 「おい、ダリア。マットの野郎はどうした? 俺らに要請までしてきたクセに何やってんだあいつは?」

 「お母様からの呼び出しよ。何でも、ラックスの処遇と新しい副団長の件ですって」

 「……最初っから俺らに丸投げするつもりだったのか……あの野郎……」


 完全にハメられた。

 どのみち彼女の治療をしなければいけなかったとは分かっていても腹立つ。


 「まあ……仕方無いわよ。どうせ、彼女を元通りに出来るのはプライスしかいなかったんだから、怒ってもしょうがないでしょう?」


 やれやれといった感じで、ダリアは俺をなだめる。

 それはその通りだけど……やっぱマットって……いや、バーゲンハーク家って嫌いだ。





 ◇





 彼女の治療を始めてから数時間。

 すっかり暗くなってもう夜だ。


 「レビーさんが話せる状態まで落ち着いたとはいえ、彼女への質問は慎重に選んで頂ければ……」

 「分かってるわ」


 ようやく彼女が会話出来るくらいには回復して、なおかつ色々聞いても大丈夫だと医者が判断したため、彼女の眠る部屋の前へと戻ってきた。


 だが、その判断をした医者は既にいない。

 なぜならルアレも治療が必要な状態のため、レビーの治療を終えるとすぐにルアレの元へ行ったからだ。


 ……そういや、彼女の悲惨さに隠れて、ルアレもアザレンカに負けた上に、母親であるフルーレを処刑されているんだよな。


 まあ、女王様のフルーレ処刑判断は間違っちゃいないし、俺もフルーレを殺した事に後悔はない。


 ……でも、ルアレは納得出来ないよな。

 俺にとっては、ただのヒステリッククソババアでも、ルアレにとってはたった一人の親だった訳だし。


 父親も小さい頃にいなくなってるはずだから、本当にキツくなるのは今よりもむしろこれから。

 オルセク家としても、ルアレ個人としても。


 「では、自分もルアレさんの元へと行かせて頂きます。ちょっと、暴れ回って大変みたいですので……」


 俺達にそう言うと、残っていた魔法使いもルアレの元へと走って行った。


 暴れ回ってるのか……。

 ……まあ、俺にそれを咎める権利は無いな。


 「……あなただけが気に病む事は無いわ。あれはお母様の厳命。あなたは何も間違っていない」

 「分かってるよ。……だけど、このまま有耶無耶になったらルアレも納得しないだろ。そのためにも色々聞かないとな」


 そう、彼女……レビーに。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは87話+アザレンカルート7話まで掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

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