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雑魚聖剣使い

 「聖魔法ホーリーマジック? 何ですかそれ? プライス知ってる?」


 ステフの言葉を聞いて、アザレンカは分からなかったのか、俺に聞いてくる。

 ダリアや爺様達も、何だそれ? と不思議そうに俺を見てくる。


 だが、俺に聞かれても分からないので、説明出来るわけが無い。

 というか、初耳なんだが。


 元々の火の聖剣の所有者だったアザレンカが、知らない上に、先代の勇者であるマルクから、説明されてもいない事を、俺が聞いたことあるわけ無いのは当然なんだろうけど。


 ……まあ、聖魔法の事について聞いた事があるはずなのに、単純に忘れているだけ、ってのがあり得るのが、アザレンカなんだよなあ……。


 「いや、知らない。何だその聖魔法って?」

 「ええ……アザレンカはともかく、プライスは知らないで使ってたの?」


 ステフにため息を吐かれながら呆れられる。

 知らないで使ってたの? ってことは、俺は聖魔法を使えるって事なのか。


 「え、もしかして聖火トーチって、聖魔法だったりする?」

 「当たり前でしょ……聖魔法は威力が凄い上に、聖剣の持ち主が攻撃しないと決めた人や、破壊しないと決めた物には影響を与えない。正に聖火は良い例でしょ?」


 ……そう言われるとそうだな。

 聖火は、普通の火属性魔法とは違って、自分の燃やしたい物を灰にしたら勝手に消えるし、自分の燃やしたくない物には影響を与えないから、便利だなって思っていたけど、そういうことか。


 よくよく考えりゃ、聖剣に選ばれてから、聖火を使えるようになった訳だし。


「それなら、俺が聖剣に選ばれてから、使えるようになった、聖火、連天滅火スカイ・バーンアウト神聖火炎ホーリーフレイム復燃治癒リラプスヒールは、全て聖魔法って事で良いんだな?」

 「そうだよ。……って、なんやかんやプライスは、聖魔法四つ使えるんだもんね……。私一つしか使えないから、プライスの方が聖剣使いとしては上ね」


 ステフは聖魔法一つか。

 ……ん? でもステフがそれらしい魔法を使った所を見たこと無いな。


 「ステフの聖魔法って?」

 「ああ、プライスにはまだ見せてなかったね。というか、ほいほい聖魔法を使っているプライスがおかしいんだけど……」

 「確かにそうですね。あんまり先代勇者が、聖火とかを使っていた覚えないですし」


 アザレンカは、マルクと俺を比べて、ステフの言葉に納得する。

 ……た、多分、マルクも若い時は、俺みたいにガンガン聖魔法使っていたかもだろ……。


 「そもそも、魔力量に自信が無いはずのプライスが、聖魔法を使っているのが不思議だったの。聖魔法は大量の魔力が必要だし」

 「それは、詠唱短縮ショートキャスティングで魔力消費を抑えているからだ。現に普通に詠唱する連天滅火と復燃治癒はガンガン使っていないしな」

 「なるほどね……。ある程度聖剣に認められれば、魔力消費も少なくなるっては聞いたことあったけど、まだプライスは聖剣に選ばれて数ヶ月だから、それは無いし」

 「後は、ダリアだろ」


 ステフが納得しないのは分かる。

 多くの魔法が使えるけど、魔法使いにならない理由は、魔力量が普通の魔法使いよりちょっと上ぐらいのレベルでしかないからって昔話した事があったからな。


 ステフも俺より魔力量はあるけど、エリーナ、ダリア、アザレンカクラスの魔力量では無いし。

 だから、魔力を大量消費する聖魔法を今まで使って来なかったのだろう。


 「ダリアの強化魔法のお陰で、魔力消費が大幅に減るんだ。多分そのせいで、聖魔法をガンガン使えるんだと思う。だから、詠唱短縮が出来る聖火と神聖火炎はほぼ魔力消費が無いな」

 「聖魔法の魔力消費を大幅に減らすって……ダリア凄くない?」

 「本人には全く自覚無いけどな」


 ボーンプラントで戦った時もそうだったな。

 ダリアに強化して貰った状態で聖火を使ったら、魔力消費を抑えつつ、聖火の威力が跳ね上がったし。


 「聖魔法については良く分からないけど、これからは貴女も聖魔法を一杯使って良いわよ? 私の強化魔法で、貴女の魔力量を上げつつ、魔法の魔力消費を抑えて、魔法の威力を上げてあげるから。申し訳ないけど私にはこれくらいしか出来ないのよ」


 俺達の話を聞いていたダリアが、申し訳なさそうに笑う。

 ……聖魔法の事について知らなかった事を申し訳ないと思っているんですよね? まさか。


 「……ねえ、ダリアってさらっとヤバい能力持ってない?」

 「そもそも、イーグリット王国の王家や貴族が、ダリアの能力を過小評価し過ぎなんだよ。だから、ダリアが自分に自信を持てないんだ」


 ダリアの能力をちゃんと分かっているなら、他国に嫁がせちゃいけない人間だって分かるはずなんだけどな。

 ……いや、ロイ辺りは分かっていて、嫁がせようとしていたのかもな。

 自分達に口出しされるのが嫌で。


 「それに、聖魔法のデメリットが魔力消費が大きいってだけなら、アザレンカには問題無いな。魔力量はバカみたいにあるし」

 「本当プライスは一言余計だね! まあ、確かに僕は魔力量には自信あるよ」

 「……それなら、あの雑魚聖剣使い達とは一緒にならなそうね。少し安心した」


 初めて聞いた時から気になっていたけど、ステフの言う雑魚聖剣使い達って何なんだよ。

 雑魚聖剣使いって、パワーワード過ぎるだろ。

 聖剣って一応、国を滅ぼす力があるはずなのに、それを使える奴らが、雑魚って訳が分からねえよ。


 「なあステフ? 雑魚聖剣使いってどういう意味だ? マリンズ王国の聖剣って、粗悪品が半分も混じってんの?」

 「ああ、ごめんごめん。ちゃんと説明しなきゃ分からないよね」


ステフは、自分の言葉が足りないと気付いたのか、雑魚聖剣使いと区別する言い方をしている理由を話す。


 「そもそも、聖剣には本来性能の差なんて無いの。それなのに、聖剣使い同士で差が出てしまうのは、聖剣の使用者に差があるから」

 「まあ、それはそうだけどさ。一応、選ばれた連中だろ? 雑魚って言える程俺達と差あんの? 舐めてかかると死ぬぞ? 聖剣なんだし」

 「話は最後まで聞いて」


 俺の言葉に分かってるからと言いたげに頷くステフ。

 何かちょっと腹立つな。

 これは夜お仕置きしないと。


 「まあ簡単に言っちゃうと、聖魔法が使えないのよ。私が言う、雑魚聖剣使い達ってのは」

 「どういう事だ?」

 「プライスで例えれば、聖火すら使えないって事。聖火すら使えない状態でロイやセリーナに勝負を挑んで勝てたと思う?」

 「……」


 ちょっと待て。

 マリンズ王国の聖剣使いの半分は、聖火を使 事が出来ない俺と同じようなもんだと?


 ただの雑魚じゃねえか。

 紛うことなき雑魚だぞ。

 聖火を使えない俺なんて。


 聖火が使えない俺とか、セリーナには何とか勝てるってレベルだろ。

 魔剣の力で、威力のある火属性魔法を使えるようになっていたロイには、聖火無しじゃ勝てなかっただろうし。


 「ようやく意味が分かった? だから、言ってるでしょ。過大評価し過ぎ、ビビり過ぎだって」

 「ふむ……そうじゃったのか……分からんかったのう……」

 「隣の芝生は青く見えるってことですかな。マリンズ王国には聖剣が九本ある! などと知らずに騒いで……いやはや、お恥ずかしい」


 爺様とホセさんは、俺以上にマリンズ王国に聖剣があることを危惧していたからな。

 これで、少しは安心出来るな。


 「あ、でもマリンズ王国の第一王女、第一王子、第二王子は聖魔法使えるからね。しかもプライスみたいに複数の聖魔法使えるから」

 「その三人は流石にステフも警戒するんだな」

 「レベルが違うからね。……それに、テレサに至っては二つの聖剣の聖魔法が使えるし……」


 恐ろしいな、テレサっていうマリンズ王国の第一王女は。

 そりゃ、双聖の姫だなんて呼ばれる訳だ。


 ……エリーナクラスの存在とステフが評するのも分かるな。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは85話まで掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

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