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とばっちりを食らう

「待たせて申し訳ない、第二王女と勇者アザレンカ。スパンズン領主、サラキア・バーネッツだ」


ミラ園長が、もう少しで来ると言って応接室を出た後、スパンズンの領主が来るまで俺達は十分も待たなかった。

領主なのに、あまり待たせずに来るということ素晴らしい心掛けだ。


……俺だけいない人間かのように扱って、無視しなければなお素晴らしかったんだけどな。


ダリアはそれに気付いたのか露骨に不快感を示す。


「貴女、ここにいるのは私とアザレンカだけじゃないわよ? それが人に依頼をする時の態度なの?」

「……何の事でしょうか?」

「良い大人が私怨でそんな事を……」


あ、これ面倒臭くなるやつだ。


そう察した俺はアザレンカにダリアを止めるよう目配せをする。

アザレンカは無言で頷いた。


「まあまあ、プライスは気にして無さそうですし、依頼の内容を聞きましょう? 二人が争っても何も解決しませんから」

「……仕方ないわね。プライスが気にしてないというのなら、もう良いわ」


あー助かった。

アザレンカのお陰で何とか面倒な事は回避出来て良かった。

領主クラスと言い争いになんかなっても何も良いことなんて無いからな。


そして、スパンズンの領主は依頼を話し始める……と思ったのだが。


「まず、お願いします。第二王女とスパンズン領主サラキア・バーネッツが会ったということは、絶対に秘密にして頂きたいのです」


依頼の前にお願いしてくるとか新しいな。

まあ、何でこんな事を言ったのか理由は察するけど。


「分かってるわよ。それに近い事をラウンドフォレストの領主にも言われたわ」

「というと?」

「王家の目があるから積極的に私達に協力したり、何か頼むことは出来ないってね」


スパンズンの領主はダリアの言葉に納得しながら頷く。

……第一王子が次の王になるって、もしかして領主クラスには通達されているのか?

となると、第二王女であるダリアに会ったりしたのが、バレたら不味いよな。


……でも、国民にも明かしたら、反対運動とかが起きかねんぞ。

それくらいには第一王子は無能で人望が無いんだから。

なのに、第一王子を何故王家が次の王に推しているのかは分からんが。


「ボーンプラントのように、領主が第一王子が次の王になる事を反対して、派遣されていた騎士を召還されるなどという嫌がらせを受けたく無いですからね」


スパンズンの領主は笑いながら話す。

その目は全く笑っていなかったが。

更に、今度は俺の方を見ると、俺を睨みながら話を続ける。


「しかも、元々いた騎士を召還した後、ご丁寧に第一王子派の騎士を大量にボーンプラントに派遣したんですから、騎士王は。おまけに騎士達に、王家に従わない人間が領主の街など守る必要もない。好き勝手にやれと言ったんですよ」


スパンズンの領主の言葉に俺達三人はただただ驚くしかない。

俺は申し訳ない気持ちにもなったが。


……あのクソ親父。

俺は親父がボーンプラントの騎士達が、暴れているのを放置していると思っていた。

まさか、親父の指示だったとはな。


その結果、スパンズンにも被害が出ている。

まあ、ボーンプラントで好き勝手にやれと言われても限界があるだろうからな。

飽きたから、今度は近くの街スパンズンでも好き勝手にやらせて貰おうとボーンプラントの騎士達も考えたのかもな。


「そんな事をして、ボーンプラントの住民から反抗されたりしなかったの? いくら騎士とはいえ、数万人はいる住民達を敵に回したら、ただじゃ済まないはずよ?」


ダリアの疑問にスパンズンの領主は、今度は呆れながら笑って答える。


「だから、わざわざマリンズ王国から氷の女勇者を引き連れて、住民達を黙らせたんですよ。この氷の女勇者も騎士王がボーンプラントに派遣したんですよ?」


そしてまた、スパンズンの領主は俺を睨む。

何をお前はとぼけているんだ? と言わんばかりに俺を疑いながら睨んでいる。


……いや、知らねーよ。

疑われるのは分かるし、睨まれるのも分かるけど、本当に俺が知らない話だよ。


というか、まずマリンズ王国の女勇者と俺の親父にどんな繋がりがあるって言うんだ?

そもそもマリンズ王国が良く勇者の派遣を許したな。

イーグリットのしかも比較的田舎の街の住民の反抗を鎮圧させる為になんて。


「ちょっと待って……マリンズ王国って、お姉様が嫁いだ国じゃない……。つまり、氷の女勇者は王家が招聘したってこと?」


ダリアが青ざめた顔で、スパンズンの領主に恐る恐る聞く。


マリンズ王国には第一王女が嫁いでいる。

どちらかと言えば、俺の親父よりもイーグリット王家がマリンズ王国に頼んで、氷の女勇者を派遣させたという方があり得そうだ。


しかし、スパンズンの領主は首を振る。

そしてまた俺を見た。


「いい加減にとぼけるのを辞めたらどうなんですか? 氷の女勇者は騎士王の知り合いなんですよ?」


この言葉に俺もだが、ダリアとアザレンカも初耳といった反応をする。

そして俺達は顔を見合わせる。


「いや、俺は初耳だ。というか、わざわざマリンズ王国の勇者を呼ぶ意味あるか?」

「そうよね……一応イーグリットにはアザレンカって勇者がいるし」

「い、一応って……酷いです。でも、確かにマリンズ王国の勇者に頼む前に僕に話が来るはずだよね」


ダリアとアザレンカが言う通り、一応イーグリットにはアザレンカという勇者がいるんだ。

アザレンカがやるかどうかは抜きにしてもアザレンカへ頼む事もせずにマリンズ王国の勇者に頼むのは不思議だ。


しかしスパンズンの領主は俺の親父がマリンズ王国の女勇者を招聘したと確信している様子で、また俺を見る。


「女勇者の名前は、ステファニー・ベッツと言われてもまだとぼけますか?」


いや、だから知らねーよ。

そんな名前の女性はベッツ家に居ないですけど? と即座に否定したかったが、一応親戚にそんな名前の女性がいなかったか確認する。


そして確認(あくまで俺の中で)した結果、やっぱり親戚を含めてもいない。

……一人、ステファニーという女性は知っているが、ベッツ家の人間ではない。


正確に言えば、ベッツ家の人間になるはずだったが、その話が無くなった。の方が正しいけどな。


そういえば、俺が知っているステファニーはマリンズ王国の令嬢だったな。

ステファニーの家が没落して、婚約は破談になったが。


……フッ、そうだよな。

あんな屈辱的な事を俺の祖父母から言われたステフが、いくらイーグリットの騎士王である俺の親父が頼んだとはいえ、イーグリットに力を貸す訳がない。


だから、そんな人間は知らないってスパンズンの領主に答えても大丈夫だな。


「は? 誰ですか? ベッツ家の女性にそんな名前の女性はいませんが?」

「そうよね、私もベッツ家の事をそれなりに知っているつもりだけど、ステファニーなんて名前の女性知らないわ」


俺だけじゃなくダリアも、ステファニーという女性がベッツ家にいないと答える。


だが、スパンズンの領主から帰ってきた答えは想定外の言葉だった。


「騎士王は、将来この女勇者は私の娘になるから、ベッツ家を名乗らせていると、周囲に話していたそうですが?」

「「え?」」


俺とダリアは、思わず間抜けな声を出してしまった。


え? いつの間にベッツ家は養子なんて迎え入れたの?

俺初耳なんだけど?

俺も困惑しているが、ダリアもそんな話聞いたかしら? と言わんばかりに困惑している。


「それって、もしかしてプライスとその女勇者を結婚させるつもりなんじゃないの?」

「は!? そんな訳ねえだろ!? 俺に話が通ってないんですけど!?」


アザレンカの斜め上の考えに、俺は思わず全力で否定する。

いや確かに、俺とマリンズ王国の女勇者が結婚すれば、その女勇者は俺の親父の義理の娘になるけどさ。


「……そうよね? 私を守るだなんて大勢の前で言っておいて、実は結婚する相手がいるなんて話、ある訳無いわよね? プライス?」


……何故か、ダリアは冷たい目で俺を見ているし。


「え!? プライスそんなことダリアさんに言ったの!?」

「ええ、しかも私がライオネルの王太子との縁談中に乱入して、女王や大賢者の前で宣言したのよ?」

「そ、それってプロポー……」

「話を盛るなダリア! ただでさえアホなアザレンカが勘違いするだろ!」

「僕がアホだって!?」


ダリアが意味ありげに言うから、やっぱりアザレンカが勘違いしたじゃねえかよ。

ただでさえ、頭ピンクの変態女勇者なのに。


「話を盛ったなんて、失礼ね……。縁談を破談にさせて、私を瞬間移動テレポーテーションで王都から連れ出したでしょう?」

「……か、駆け落ちだ……。駆け落ちじゃんプライス! これは言い逃れ出来ないぞ!」

「話をややこしくするなよ!」


そんな騒いでいる俺達を見て、スパンズンの領主は一言。


「騎士王の息子は女たらしだったとは、益々ベッツ家を軽蔑しますね」

「だから、誤解ですって! 後その女勇者は知らねえええええ!!!!!」


結局、氷の女勇者を聞く話の前に、何故か俺が浮気? したみたくなってしまい、アザレンカとスパンズンの領主の誤解を解くのに、王都で俺がやった事を説明するハメになったのだった。

 ここまでご覧いただきありがとうございます。


 カクヨムでは85話まで掲載されているのでそちらもお願いします。


 ※悲しい・キャラや敵にイラッとするお話もあるので一部の話がカクヨムでのみの公開としています。

 ご了承下さい。

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