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周回作戦実行!大変好評です!

「うおおお!すげえなこりゃ!」

「マジでこの規模の魔法を一人で使ってんのかよ!」

「時々騎士団についてってるところ見たことがあるけど、こんなバケモンだったなんて……」


 地属性魔法を利用して、特定のエリアの地面すべてを動かす『自動移動床』だが、大変好評であった。


 さすがに階段でやるのはフェルノとしても不可能ではないが大変だるいので階段の昇り降りは個人でやってもらうものの、平地なら高速で移動し、しかも地面からの奇襲も罠も完全無視!


 持ってきた荷物はすべて『地中倉庫』に突っ込んでいるので、手にもって運ぶ必要すらない!


 ここまでなら、『雑用系チート』でもできそうだし、ある意味フェルノが疑似的にそのチートを再現しているといえる。


 ここまででも十分すごいが、空から襲ってくるドラゴンは『イラプション・バーストオオオオ!』で一網打尽にしてしまう圧倒的な火力!


 同じ冒険者としては、『圧倒的に強いリーダー』に見えるのだ。


「高評価のようだね」

「ここまで至れり尽くせりで文句を言う人なんていないわよ。少なくとも最初はね」


 エルフィナはフェルノの観察をしつつ、ほかの冒険者の歓声を聞いている。

 それに対してアリアスは微笑んでいるが、確かに彼女の言う通りだろう。


「魔法の部分の凄さは理解しきれていない部分があるようにも見えますが、まあ、仕方のないことですね」


 シンシアがつぶやく。彼女の言う通りで、彼らはフェルノの凄さを理解しているとはまだ言い難い。


 今回の作戦は、深層に一気に突入して周回することが目的である。


 そのため、近道を使って深層に直行。その後は回り道を利用することになるわけだが、地下大迷宮の近道は滑りやすいが回り道にそのような鬼畜さはないので、必然的に、『フェルノ以外の地属性魔法使いが必要ない』のだ。


 それに、空を飛ぶドラゴンばかり出てくるのがこのダンジョンの深層であり、地面を起点とする地属性魔法使いは、このダンジョンでは戦闘に参加できない。『パーティーの枠』に直結するので外されている。


 実際に地属性魔法を使っている者の意見がない以上、『凄さ』はわかっても『異常性』はわからないといったところか。


「ま、地属性魔法云々は仕方ねえさ。ま、俺としてはここまで褒められれば悪い気分じゃないし、大丈夫だろ」


 軽く笑うフェルノ。


 五十八人(フェルノたち四人+六人パーティー九つ)すべてが乗れる地面を操作し、さらに全員分の荷物が入った地中倉庫を動かしながらも、時々出現するドラゴンを一網打尽にしているが、特に苦労した様子がない。


(とんでもない魔力量だね。学者として、魔法を研究するものとしては、ゾッとするよ)


 エルフィナは行使されている魔法から実際の消費魔力量を計算しつつ、唖然とするしかない。


「フフッ♡参加メンバーにもかわいい子がいるし、隙を見て食べちゃおうかしら。次も優先的に参加させてあげるっていえば……」

「馬鹿なこと言ってないで集中してください」

「シンシア。それは無理な話よ。だって道中に必要なことはすべてフェルノがやってるもの。暇で仕方ないわ」

「え、道中に襲うつもりなのですか?」


 シンシアの予想としては、それぞれが周回するとなったときに、隠れて襲うつもりだと考えていたようだ。

 だが、アリアスの考えはそうではないらしい。


「私は大勢に見られていても気にしないわ。エルフィナは嫌がるからやらないけど」


 フフッと胸の下で手を組むアリアス。


 胸が強調されて、後ろで立っている冒険者たちの視線が動く。


「アリアス。ちょっとは自重しろ」

「ちょっとならすでに自重してるわよ」

「それならかなり自重してくれ……」

「フフッ。まあいいわ」


 普通に待機することにした様子のアリアス。


「……はぁ、この性癖と性格で処女っていうのも、こだわりが強くて疲れるね……」

「!?」


 エルフィナの言い分にシンシアが驚いた。





 まあ、そんなやり取りもあったが、一同は深層に到着することとなる。


 ★


 当然のことだが、大迷宮で戦うノウハウを持っている冒険者なら、何らかの事故が起こらない限り、普通に周回して規定時間になれば帰ってくる。


 ただ、規定時間に集合場所に帰ってくるときは地中倉庫がなく、それぞれで荷物を持っているため、『どれくらいの魔石を持って帰ってきたのか』が大変よくわかるのだ。


「よっしゃあああ!稼ぎは俺たちが一番のようだな!」


 規定時間五分前。

 最後の一組が返ってきたようだ。


「おお、やっぱりガイゼスたちが一番か」


 ほかの冒険者たちも納得した様子で、その冒険者を待っていた。


「……実力はあると思ってたが、まさか、主武装が『剣』であれだけ稼いできたのか」


 ジャラジャラと袋を鳴らす袋を背負って帰ってきたのは、剣を主武装とする男。


 ガイゼスという名前らしい男は、以前、フェルノとシンシアがチームを組む時に、酒に酔っていちゃもんをつけてきたやつだ。


 どうやらAランク冒険者として優秀であることは間違いないようだ。


「どうだフェルノ!俺だってやるだろう!」


 自慢するように宣言するガイゼス。

 愛嬌のある良い笑みを浮かべており、どうやら本当に『酒癖が悪い』だけで、根はいいやつらしい。


「ああ。思ってたよりはやるね」

「クックック。だろ?……で、第一パーティーの稼ぎはどこにあるんだ?」


 ガイゼスがきょろきょろと見合わす。

 フェルノたちのそばに袋がないのだ。

 先ほど、『ガイゼスたちが一番』という反応があったが、あれは『どれくらい稼いでいるのか不明なフェルノを除いて』という意味である。


「んなもん。俺の地中倉庫に入れてるにきまってるだろ?」

「そりゃそうか」


 他のパーティーは地中倉庫や異空間収納の手段を持っていないようだが、フェルノは持っているのだからそれを使えばいいのである。


「まっ、お楽しみは後に取っておけよ」

「そうかい。ま、お前さんがそういうならそうさせてもらうぜ」


 ガイゼスはニッと笑うと、そのまま離れていった。

 ……その様子を見ながら、シンシアがつぶやく。


「本当に、いい人なんですね」

「酒に酔った時の人格だけで人のこと考えるなよ……」

「ガイゼスといえば王都でも名を聞くほどの冒険者よ」

「剣を持っているが、このダンジョンで稼げるのなら魔法も使えるだろうね。突き抜けている部分はないが、安定して仕事を任せるにはいい人材ということかな?」


 酒癖が悪いことを除けば本当に優秀。といったところか。


「騎士団にいた時も名前だけは聞いてたな。まあ、満足してるようで何よりだ」


 おそらく、冒険者ギルドが設定する選考基準ではまず選ばれる人材だろう。いい付き合いをしておいて損はない。


 持ってきた食糧には、肉とパンの他に野菜もしっかり持ってきていたので、思ったより健康的だ。

 ただ、初対面がアレ過ぎてマイナスが大きく見えるだけだろう。



 別に、珍しい話でもないが。


 ★


 さすがのフェルノも、ダンジョンから出るとなった段階では、地中倉庫から手に入れた魔石などを出すしかない。


 その段階で、わかりやすく言えば『ギョッとした』冒険者たちだったが、当然、それは冒険者ギルドに戻ってきても同じだ。


「うーわ……最初とはいっても遠慮がないね。フェルノ君」

「その必要がないからな。Sランク冒険者になったんだし、これくらいは普通だろ」


 応接室では、フェルノとトーラスの二人で話していた。


 数多くの袋が並んでいる。

 騎士団が持ち帰ったとき……いや、それ以上の膨大な量になっている。


「かなりの換金額になるだろうね、これは新聞にもいい記事を書いてもらえそうだよ」

「そう、それが重要なんだよ」


 さすがにオルレイドだって、新聞は読むからね。

 わかりやすく、本当にわかりやすく、目を背けることができないように『数字』で示したい。

 それも、『可能性』ではなく、『実物』で!


「結果になって満足だし、次回も早めにやりたいね」

「さすがに、全力で挑む必要がある集会を何度もやるのはストレスになるが……」

「まっ、最低で月一ってところか」

「そうだね。『深い階層で大量に』という条件で何度もされては、物価の急激な変動もありうる。それ以上間隔をあけるのは避けたいが……まあ、そこは続けなければわからないからね」


 冒険者というのは確かに、命を掛けてダンジョンに潜っている。

 ランクが高ければそれ相応の功績が求められ、そしてそれに応えているものが多い。


 これは事実なのだが、それと同時に『自殺志願者ではない』のだ。

 ダラダラやっていいわけではないが、無理をさせる意味はない。


「思ったよりいい結果だ。一応、ほかの冒険者にも意見を聞く必要があるから、私は失礼しよう」

「ああ。俺もいろいろ……特に『攻略』で考える部分があるからな。またなトーラスさん」


 双方、いろいろ予定があることは事実だ。


「あ、それと……どうやら団長がいろいろ動いているという噂がある。様子からすれば、明日にでも来るだろうということだ」

「なるほど、その時、俺たちの作戦は完遂するわけだな!」


 楽しみにしてるぜ!といった様子で、フェルノは笑みを浮かべるのだった。

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