Sランク昇格!この勢いで周回作戦に関してもある程度まとめてしまおう!
「フェルノ君。まずはSランク昇格おめでとう」
「ありがとうございます」
冒険者ギルドギフトネスト支部。
その応接室で、フェルノはSランク冒険者のライセンスを受け取った。
「これで、君はれっきとしたSランク冒険者になったわけだ。君を軸に据えたいろいろな話があるようだが、それに対しても乗ってくれるね?」
「ええ、俺が『それ』に乗り気だったら、騎士団にもいい当てつけになりますし」
情報を集めるのは早いフェルノとトーラス。
フェルノを軸とした『周回作戦』に関してもすでに広まっているため、これを利用しない手はない。
「というか、草案なら練ってきたぞ」
そういいつつ、フェルノは資料をカバンから取り出す。
「……よく作れたね」
「大人数で潜ることそのものは昔からやってたからな」
というわけで、内容にこんな感じだ。
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フェルノ考案・地下大迷宮深層周回パーティー
①:作戦の要であるフェルノを第一パーティーに入れるとして、第一から第十パーティーまで結成し、深層に入って周回することを目的とする。なお、一パーティーの上限は六人。ただし、第一パーティーのメンバー選択権はフェルノにあるとする。
②:より多くの利益をたたき出すため、第二から第十のパーティーはBランク以上とする。ただし、暫定Bランクと判断される冒険者も参加可能とする。
③:大手の商会から必要物資を購入する(その際、買取金額を何割か上げる)。第二から第十のパーティーは、この金額を十等分した金額を参加費用とする。(作戦中に各パーティーに振り分けられる物資は別途資料参照)
④:フェルノの地属性魔法を利用し、全員でまとまって、安定してそれぞれが周回できる階層に向かう。その後、規定時間までそれぞれのペースでドラゴンを狩る。
⑤:規定時間に全員が集合し、フェルノの地属性魔法を利用してダンジョンを一気に脱出する。
⑥:冒険者ギルドで納品し、後日換金額を受け取る。
備考①:冒険者ギルドから周回作戦で手に入れた素材を買い取る際、何割か安く素材を買い取れる契約をすること。
備考②:契約する商会は、何割か増しでアイテムを売り、通常より安く素材を買い取る代わりに、Bランク以下の冒険者が使うアイテムに対して割引を行うこと。
備考③:参加を希望する冒険者が多くなる場合、冒険者ギルドが定めた選考基準に沿って参加メンバーを決定すること。
備考④:深層からの帰り道で規定時間に遅れても、放置して帰ることはしない。ただし、その場合はそのパーティーメンバー全員は、原則として半年間作戦に参加不可とする。
備考⑤:作戦の要がフェルノにあるため、集会作戦中、フェルノ自身の行動は安全第一を徹底すること。
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「こんなところか」
「ふむ……まあ、フェルノ君自身にできないところは我々冒険者ギルドに押し付けつつ、『集会作戦』という範囲の中で発生する利益を、できる限り関係者全体に公平に振り分けよう。ということだね」
『何割か』とか『原則として』みたいな言い方をしたり、『深層』と言いつつ具体的に何層なのかを決定していなかったりするが、これは純粋に、『集まるメンバーがどのようになるのかが不明なため』である。
「大勢で潜るノウハウはあっても、そのメンバーを選ぶノウハウなんてないからな。今までは俺が関係ないところで決まってたし」
「なるほど。そして、どうしても参加することができない冒険者にもメリットを与えることで、文句を封殺しようということか」
別に新人強化をするための作戦じゃないからね。
だが、ギフトネスト全体の冒険者に対してメリットを与えることができれば、それだけ好印象になる。
「できることなら冒険者ギルド内に『運営委員会』みたいなものを作ってほしいんだけどな」
「継続するようなら考えよう。まあ、おそらく君もそれに所属することになると思うけどね」
「それは仕方ないな。で、契約取れそうな商会ってある?」
「君が騎士団にいた時の取引相手は?」
「嫌いだからダメ」
「即答か」
「俺の持論だが、『嫌いな奴と組んだら、成功しても失敗しても後悔する』というものがある」
というわけで、騎士団時代のコネは軒並みアウトである。二年前、騎士団が変わる前のものなら考えるけど。
「そうか。なら、こちらで用意しよう」
フェルノの言い分に苦笑するトーラスだが、同意できる部分があるようだ。
加えて、フェルノはSランク冒険者にして、作戦の要だ。
つまり、『相手を選べる立場』である。
そのフェルノが冒険者ギルドに選考を委任する以上、冒険者ギルドの言うことを聞くしかない。
(というより……フェルノ君がその商会に仕返ししたいんだろうね)
貴族社会になった騎士団の取引相手だ。貴族と癒着するような商会が相手なのだろう。
交渉だって苦労したはずだ。
(大人っぽい部分もあるが、まあ、まだ年を取ってるとは言えない。そこが君らしいね)
経験豊富で、それを次に活かす知恵はあるし、実力も十分。
修羅場も潜っていて『成長している』部分はあるが、子供っぽい部分もある。
まあ、どこか子供っぽいのは十八なので当然か。
「というわけで、これをもとに幹部で決めてくれ」
「ああ。そう変わらずに通ると思うよ。この町にいるAランク冒険者は……アリアス君を除けば七人だったはずだ。アリアス君が君のパーティーメンバーだとして、残る二枠の選考も、暫定Aランク冒険者が何人かいるから、すぐに決まるはずだよ」
「第一回は成功させたいなぁ。あーっ!騎士団に嫌がらせできる日が楽しみ!」
楽しそうに語るフェルノ。
拠点まで購入する予定の彼は、ギフトネストに骨を埋めるつもりだろう。
ギフトネストの冒険者との付き合いは良くするべきだ。
そのための作戦ではあるが、やはり一番やりたいのは騎士団への仕返しであり、オルレイドに中指立てて笑い飛ばしながら『ざまぁねえな!』と言いたいのだ!
(人間らしいね。フェルノ君)
確かに彼も仕返ししたい会のメンバーである。
だが、そんなトーラスから見ても、まだ、フェルノは若いと思うようだった。




