追放されてブチ切れたら、地属性からマグマがあふれた
アルマテリア王国の南西部に位置する大きな町。ギフトネスト。
武器や防具などを身にまとった『冒険者』が数多く滞在するこの町の外れに、とあるダンジョンが存在する。
竜王の神殿・地下大迷宮
大昔に建設され、もう今では使われなくなった神殿の地下に存在するダンジョンであり、出現するモンスターがすべて『ドラゴンに関係する種族』で構築されているという、冒険者界隈の中でも困難と超えて危険といえる難易度を誇るダンジョン。
浅い階層であっても、竜人と呼ばれる人間にドラゴンの要素がプラスされて膂力が高いモンスターが数多く出現し、中層、深層となるにつれて、空を舞う巨大なドラゴンまで出現する凶悪なダンジョン。
しかし、素材を手にして帰還すれば、希少種圧倒的なリターンがあることも事実であり、高ランクパーティーにとっては綿密に計画を立てて一攫千金を狙える環境となっている。
そんな環境で回っているギフトネストのとある建物。
四階建てで敷地も広く、広大な資金力を影響力を醸し出す建造物で、とある少年が最上階のとある部屋に入った。
「……団長、何か用ですか?」
茶髪の少年だ。
体格はよく、身長も確かにあるが、覇気……いや、『激情』が表に何も出ていないような、そんな少年。
腰には安っぽい雰囲気の刀を腰に吊って、不思議な模様が描かれた腕輪を左腕につけたその姿は、一応、『魔法剣士』という印象がある。
「フェルノ。貴様をこの騎士団から追放する!」
「……ええっ!?」
フェルノ。と呼ばれた少年は、ふくよか(自称)な男性が言った『追放』という言葉に愕然とする。
「何を驚いているんだ。この『シーロカ騎士団』で、地下大迷宮の深層のドラゴンを倒していないのは貴様だけだぞ!貴様のような平民の雑魚がいるから騎士団の中で緩みが生じて、今、この騎士団は伸び悩んでいるのだ!」
「いやぁ。でも、俺は雑用を頑張って……」
「ふざけるな!何が雑用だ!騎士団の最前線パーティーが『マジックバッグ』を手に入れたことで、荷物持ちは不要なんだよ!」
怒鳴り散らす騎士団長。
それに対して、フェルノはあれこれと考えているが……。
「空を飛ぶドラゴンを倒すためには、強大な遠距離攻撃を行う魔法が必要。貴様が強大な『土属性』や『岩属性』なら万に一つ、一考の余地がある。だが、地面を起点とする『地属性』魔法など、何の役にも立たん!」
「え、あの『近道』の構造は……」
「しかもなんだその腰の刀は!中層以降で、空を飛ぶドラゴン相手に、そんななまくらなど必要ないんだよ!」
「いや、表層で魔力を無駄にしないために……」
「とにかく!何の役にも立たん給料泥棒の貴様に、この騎士団の居場所はない!」
「いや、でも、俺の月給って……」
「ごちゃごちゃうるさい!第一、この誇り高い騎士団に、平民の貴様がいることそのものが、最大の罪であり間違いなのだ!さっさと出ていけ!」
(暴言吐くときだけは頭の回転が速いなこのジジイ……)
癇癪を起こしたかのように怒鳴り散らす騎士団長。
(そろそろ切り時でもあるのか……初代団長との約束があるからいろいろこなしてたはずなんだが……はぁ)
内心で溜息をつくフェルノ。
「わかりました」
フェルノは騎士団長の追放宣言に対して首を縦に振って、部屋を出て行った。
★
「はぁ、あそこまで言うことないだろ……」
フェルノは団長執務室を出て、小さい声で愚痴る。
沸々と、心の奥から何かが湧き上がってくるような感覚。
だが、フェルノはそれに無理やり蓋をして、それでも抑えきれなかった部分が、小さく、つぶやくように口から出てくる。
「雑用を頑張ってたっていう質問にマジックバッグがあるから問題ないとか、雑用の仕事がそれだけだと思ってんのかよ。斥候とか、普段の交渉とか、事務処理とか、いろいろあるに決まってるだろうが」
愚痴る。
「しかも、地属性をバカにしやがって、鍛えれば地底のダンジョン内部で環境整備すら可能なこの魔法が弱い訳ねえじゃねえか。浅い層には竜人くらいしかいねえから、地属性魔法とこの刀でも倒せるっつーの」
愚痴る。
フェルノがここまで愚痴ったとき、ほかの騎士団員に遭遇した。
最前線パーティーのリーダー。アグロ・オーバーン。
伯爵家の嫡男であり、赤髪を逆立たせ、騎士団の刺繍が入ったローブと杖を装備しており、貴族風のイケメンだ。
彼はフェルノを見つけると、嘲るような笑みを浮かべる。
「ん?誰かと思えば雑用係の平民じゃないか。どうしたんだい?団長室から出てきて」
ニヤニヤしながら見下して、フェルノに言うアグロ。
彼にとって、平民出身で中層以降のドラゴンの討伐実績が全くないフェルノは、騎士団にとって邪魔者であり、反応を楽しんで遊ぶおもちゃのような価値しかない。
「……お世話になったってあいさつしただけだよ」
「なるほど。追放されたのか!それはいいことだ」
嘲りつつ見下して、誉めるアグロ。
「……どうも」
フェルノはそれだけ返す。
初代団長の時はそうではなかったらしいが、二代目、今の団長になって、当時優秀な成績をたたき出していたこの騎士団という『箱』が貴族のものになって相当の時間がたっている。加えて、今の団長は平民嫌いで、就任した時からフェルノを目の敵にしていた。
そしてアグロは、騎士団長の派閥の貴族では上位の格を持っている。
『掃除』と称して平民を甚振ることもザラだ。
「つまんない反応だな。まあ、これから頑張ってくれ」
愉快そうな笑みを浮かべている。
とりあえず言いたいことは言い終わったのか、高笑いしながらアグロは去っていった。
アグロは相当な美食家だ。今の楽しい気分のまま、秘蔵のワインを出して酒盛りでもやるのだろう。
その後姿を見て、ふつふつ、ふつふつと湧き上がるものを抑えながら、フェルノは騎士団の本部から出ていく。
★
まっすぐ向かう先は、竜王の神殿・地下大迷宮。
普段は雑用係として、大勢の騎士団員に交じって入るが、今回は久しぶりに一人だ。
サクサクと進んでいくフェルノ。
そんな彼の前に、一体の竜人が現れた。
人間のような四肢を持っているが、頭はトカゲのような形をしており、腰布を巻いているものの、ほかの部分の多くは鱗に覆われている。
右手には一本のサーベルを握っており、切れ味は高そうだ。
とりあえず……ご愁傷様です。
「ごちゃごちゃいってたけど、俺が、給料泥棒だって?……ふざけんなあああああ!」
刀を鞘から引き抜き、竜人に向かって突撃するフェルノ。
慌てたように竜人はサーベルを構えるが、その時には『地面から伸びた棘のようなもの』が右手首を刺していた。
竜人は悲鳴を漏らしながら棘から離れて、フェルノにサーベルをふるう。
しかし、隙だらけである。
「俺の月給は減額され続けてんだよゴルアアアッ!」
一刀。
振り下ろされた刀は、竜人のサーベルの刃を切断して切り落とす。
「団長は毎日毎日上位の貴族を招いて宴会だろうが!ボス系のドラゴンを倒してもボーナスなしとか、ふざけてんじゃねえええっ!」
右足でドンッ!と地面を踏み込むと、竜人の下の地面が高速で盛り上がる。
その勢いで浮いたことと、少しだけ盛り上がった地面がさがったことで、竜人は空中に取り残された。
「あのクソアグロだって、普段は後ろでお菓子をボリボリ食いまくって、攻略後は稼ぎで高級レストランに入り浸ってんだろうがあああっ!」
バランスを崩している竜人に向けて、刀の突きを一閃。
竜人の腹に突き刺さり、フェルノが抜くと血が噴き出す。
「自分の派閥の貴族は優先的に給料上げるくせに、俺ばっかり減額しやがって、最終的に経理から『額がマイナスだから金払え』って言われたんだぞっ!」
竜人に蹴りを入れてぶっ飛ばす。
そして、地面に刀を突きさすと、そこを中心に、直径一メートルほど、地面の材質が変わった。
心なしか、グツグツと、煮えたぎっているようにも見える。
「しかも団長はほぼ休んでばっかじゃねえか!自分のことを棚に上げて給料泥棒呼ばわりするんじゃねえええっ!」
地面の手前に、思いっきり左のこぶしをたたきつける。
すると……岩のようなそれではなく、まるでマグマのようなドロドロでアツアツの物体が地面から噴き出して、竜人を飲み込んでいった。
「Gyaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
八つ当たりという、人間の理不尽を体現したそれを受け続けた竜人の断末魔がダンジョンに響く。
マグマの噴射が止まった先では、黒焦げた竜人が屍から魔石となっていた。
ダンジョンではモンスターを倒すと、魔力の塊である魔石を残して塵になるため、小さな魔石だけがそこに残された。
「あれっ?」
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