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「おい、俺の声がわかるか、話せるか?」
上半身を起こした少年はゆっくりと頷く。
「名前は?年は幾つだ?なんでここにいた?どこか痛む所はないか?」
そう矢継ぎ早にかけられた質問に戸惑いながらも答えていく。
「···なまえ···は、わかんない。···とし···は、···?それに···ここ···は、どこ?」
ちょっと身じろぎしながら、
「ん······、ちょっとせなか···、かゆい?」
目覚めて間もない少年は、少し舌足らずな口調で。
歳は大きく見積もって10~12歳、このあどけなさでは7~8歳くらいかもしれない。
(この子の色が原因か···?なんだって、こんな小さな子どもがよりにもよってマルスの森に···!!)
もしかして、と思う。貴族の私生児かなにかかもしれない。この色では様々な思惑が飛び交っただろう。しかし、まだ養育を、庇護を必要とする子どもにこんな仕打ちをするなんて···。
ウィールは心の中で激昂する。
この男、普段はガサツですぐ筋肉に訴える荒々しい男だが、その心根は優しく人情味溢れる熱い漢なのだ。
「···おにいさん···は、だあれ」
真っ白で綺麗な、大きな瞳がウィールを真っ直ぐ見つめる。
「っ、俺はウィールだ、仲間と来たがあいつらがはぐれちまって今は1人だ···」
自分が迷子なのでは、という考えはウィールの中にはない。
「ちょっと背中さわるぞ?」
どこか痛む所はないか、と尋ねながら大きな掌をそっと白い背中に這わせていく。
まるでシルクを触っている感覚である。
何かイケナイことをしている気がしつつも、目視の時点では目立った外傷がないことにホッとしていた。
「···んっ···、くすぐったい······」
ふふっと笑う少年に安心しつつ、話しかける。
「この森···マルスの森の夜は危ない。起きたばっかで悪いが、ん?どうした」
話している途中、木を背にこちらを見る少年の顔が一気に青褪めていく。
「う···、うしろ···っ」
震える声に示された先に、そいつはいた。