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「お、あの木はいいな。川もいい感じに近ぇし、、マルメロの実もなってるじゃねぇか」
マルメロの実は甘く水々しい果実で、よく酒の材料に使われている。寝床に辿り着けたウィールはそこで、何やら白いものを目にした。
更に近づいて木の根元に寄ると···
「なっ···んで、子どもがこんな所に···!」
ウィールは絶句した。
白い髪、白い手足。白い睫毛に縁取られた瞳は閉ざされている。一糸纏わぬ姿で倒れていた少年は夕日を浴びてキラキラと輝いていた。
まるでそこだけ絵画をくり抜いたかのようだった。
思わず立ち尽くしていたウィールだったが、ハッと気を持ち直して少年に駆け寄る。
「おい、大丈夫か!しっかりしろ、目ェ覚めせ!」
ジャケットを華奢な少年に掛けて肩を揺する。
その呼び声に少年は覚醒する。
「···んっ···、ぅん······」
長い睫毛を瞬かせながら、ゆっくりと瞼を開き目を合わせる。
···が、ウィールはまたもや絶句してかける言葉を見失う。
(目も真っ白だと!?色を持たねぇ奴とか聞いたことがねぇぞ!?)
ウィールが驚く原因はこの世界の仕組みにあった。
この星、〈ガイア〉に住む生き物は全て例外なく色素を持っている。
赤(火)→緑(植物)→茶(土)→紫(風)→琥珀(雷)→青(水)→赤(火)···
黄(光)⇔黒(闇)
ピンク(付与)、オレンジ(治癒)、金(覇者の力)
このような順序で属性の優劣が決まっている。
光と闇は互いに干渉しあい、付与、治癒に属性の優劣は該当しない。
金は王族や、先天的指導者の素質があるものに生まれやすく、特有の能力を持つが、稀に能力が顕現しないこともある。
滅多に見られない異界の住人でさえ、色を持っていると言われる。生き物は自分の色に沿った魔素を操ることで魔法を使用することが出来る。中には複数色を持って生まれるものも居り、色の相性や、才能に合わせて人々は仕事をしたり生活したりしている。
しかし、白だけは例外だった。
これまでの歴史に白を持つ個体が確認されたことは無かったし、また白が司る能力は無いのではないかと予測されていた。
すなわち、白の個体は全くもって未知数の存在なのだった。