71話 手加減スキルからの……
「ユウ、バトルロイヤルに参加させろ」
ナティさんのダンジョンから戻った途端にエルさんから脅される。
「だめ。エルさん出るとみんな怖がるんだもん」
初参加でやらかして参加者を恐怖で震えあがらせた。その後しつこい懇願に負けもう一度参加させたら棄権者が出た。
参加者を殺せないだなんて何の旨味もないじゃないか……
強すぎるのも考えものだがもう少し考えて戦えばこんな事も起こらないはずなのだ。
「手加減するからさー。頼むよユウ」
「ぜっっっったい出来ないでしょ?」
「やるって!俺だってちゃんと手加減できるって」
いやこの人に限って手加減など出来るはずがない。一度戦闘が始まってしまったら楽しむ姿が手に取るように分かる。
「やっぱり無理。どうしてもって言うなら手加減スキルを取得してきてよ。そしたら参加許可するよ」
「手加減スキルって、そんなのあるのかよ?」
「いや知らん。少なくともうちのダンジョンにはない」
「そうだろうよ!聞いたことねぇもん、そんなスキル」
そりゃそうだ。大体ダンジョンで手加減なんてする必要はほぼない。
殺すか殺されるか。手加減して殺されたら目も当てられない。
手加減が必要になるとしたら相手を殺さずに捕えたいとかそういう場合にのみだろう。
そう考えるとうちのダンジョンにあってもおかしくないと思ったが、よく考えるとうちも全力で殺してるんだった。リストに現れないはずである。
「誰か知ってるダンマスで持ってる人いないの?」
「ああ、ちょっと調べてもらってくるわ」
そう言ってエルさんは転移陣から戻っていった。
ちなみにナティさんは自宅謹慎中だ。無断外泊のつけは大きかった。
そして俺はエルさん達がいる時にはじっくり出来なかった自己鍛錬を始めた。
うちの連中はもう慣れたので報告などは鍛錬が終わるまで待ってするようになった。ただし緊急はセバスに伝え、そこから俺にすぐ伝えるかの判断はセバスに任せてある。
ただしエルさんやナティさんにとってはまだ珍しく映るようで茶々を入れてくるのだ。
何故そんな事をしてるのか?そんなことしてて楽しいのか?そんな所ならかわいいもんだ。
エルさんなどは土団子を投げてきたり、殺気を飛ばしてくる。
さすがに殺気を飛ばされたらそちらを警戒してしまうのは本能なので仕方ない。
「邪魔すんな」って注意したら「お前を倒す隙を見つけてたんだ。気にするな」だとさ。
勝手にさせたら10~20秒に1回くらい殺気を飛ばしてきたので訓練にならなかった。
いや、気配察知とかの訓練にはなったのだが鍛錬の時は基本的な動きを反復させて体に覚えさせているのだ。いわゆる型ってやつだな。
この型を基本とし自分流に応用する。つまり形をしっかりと身に付けることではじめて高度な応用や柔軟な対応が可能になるということである。
ルーリも最近はナティさんに教わった鞭の練習を繰り返しやっている。
魔族の姿で鞭を振るうルーリはなかなか様になってきている時と思うよ。
そして念願の鞭術スキルだがルーリがLv1を獲得した時にリストにアップされた。
すかさずLv10にしてそこからは鍛錬の日々である。日々と言ってもだ2日目だがな。
鞭の素材だがミスリルを使用している。ミスリル?鉱石じゃん。と思うかもしれないが鍛冶と錬金スキルで細く加工しそれを1本に編み込んでいく。
するとどうでしょう。なんと鉱石だったミスリルが柔軟な鞭に大変身したではありませんか。
皮で作ったものよりは堅いのだがなかなか良く出来たと思っている。
しかも丈夫で強固。鋼の鎧なら1,2発当てると穴が開く(ナティが実験)
そのままナティが貰っていったのはご愛敬だ。
将来的には魔道具作成で雷属性も組み込む予定でいる(麻痺目的)
先端に棘や刃を付けたりすればさらに面白いかもしれない。そのうち作ってみよう。
鍛錬が終わりルーリと風呂に入って汗を流していたらエルさんが酒持って入ってきた。お前スキル探しに帰ったばかりだろ…
「おう、ユウ。一杯やろうぜ」
そう言うといきなり湯船に入ってきた。
「おいエルさん。掛け湯くらいしろよ」
洗わないで入るならせめて掛け湯。これ大事。
「ああ、さっきまで自分の所の風呂入って飲んでたからピカピカに綺麗だぜ」
「え?なんでわざわざこっちに来たんだ?しかも手加減スキル探しに帰ったばかりだろ?」
そのまま風呂酒楽しんでたらいいのに。来たら嫌ってわけじゃないよ?なんで?って思っただけだ。ってか帰って風呂楽しんでただけじゃねーか。
「馬鹿だなユウ。一人で飲んでも面白くないでしょうが。それにほらここに来れば見た目綺麗なお前が酌してくれるしな」
馬鹿はお前だ。俺は男だぞ。
でも確かにその気持ちは分かるよ。一人で飲む酒もいいものだが、みんなで飲めばそれはそれで楽しいからな。
「まぁ付き合うけどさ、手加減スキルは?」
「そうこなくっちゃ、ほれ」
おい、スルーか。スキル探しに帰ったんだよね?
「嬢ちゃんも飲むか?」
「それマズイからいらない。ビールがいいな」
「わははは。子供には分からない味だったか」
「子供じゃないわよ!今は人化で小さくなってるだけだもん」
エルさんに笑われてルーリがムキになって反論してたので脱衣所に戻りサブコアでビールを出し、持っていってあげた。
美味そうに飲んでるルーリではあったが俺にしたらビールは風呂上がりだな。中で飲むならクイクイと日本酒がいい。
いやそうじゃない。スキル探しに帰ったはずだよね?
「で、エルさん?スキルはどうだったのさ?」
「ああ。今バルスが探してくれてるんじゃないか?」
やっぱり!たまには自分で動いた方がいいよ?
「バルスさん可哀そうに」
「何言ってんだ、あいつ喜んでやってくれるぜ?」
それあんたの中ではって話だろ。絶対面倒臭いって顔顰めてるって。なんなら自分の名前叫んじゃうかもしれないって。
「でも今日は参加できないからね?」
「ああ、ちゃんとスキル手に入れてから参加するよ。その代わり手に入れたら3日、いや2日に1回参加するからな」
「却下」
手加減覚えたからってそんなに参加されたらうちのメンバーがレベルアップできないだろ!
俺はいいよ。戦わなくても経験値入ってくるからさ。
でも他のやつらはPTでも組んでない限り入ってこないんだから。
そうやって一つ一つ丁寧に説明しないとこの人は納得しない。力がある分子供よりたちが悪い。
「ちぇ!しかたねぇな」
何とか聞きいれてくれたようだ。まったくこの人を止められる人バルスさんしかいないってのもまずい。俺が(配下のLVアップの)防波堤として踏ん張らねば。
――そんな時だった。
≪ 緊急のお知らせが届きました ≫
ん?こんなコアから報告は初めてだぞ?
今まではレベルアップの時くらいしか報告なかった気がしたんだが、いやな予感がするな……。
「エルさんコアからの報告で緊急のお知らせが来たってさ」
「はぁ?そんなの聞いた事……あ、あったわ。ダンジョンルール変更の時に聞いたな」
まさか今回もルール変更とかか?
蘇生禁止とか1回のみとかになったらうちのダンジョンは死ぬぞ。
サブコアを取り出し恐る恐るお知らせを確認してみる。
そこに書いてあった言葉は――、
[ 攻略・侵略目的でない場合に限り戦闘を許可する ]
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