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Survive of Ballets  作者: 上田龍象
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1.憂鬱な気分に浸る天才



「今日も俺より高得点たたき出したプレイヤー一人もいなかったなあ……」

 高校の制服に身を包んだ少年、鈴宮剣也は肩にかけたカバンの位置を戻しながら、紅に染まる夕焼けを見てボソッとぼやいた。

 ガンシューティングの虜になってからおよそ8年。始めたての頃こそすぐに順位を抜かれてしまっていたが、それから半年後には近場のゲーセンのほとんどのガンシューティングでトップから微動だにしなくなっていた。

 いわゆる、シューティングにおける『天才』。

 周りはよくそうやって囃し立てていたものの、自分に満足感などは無かった。

 この結果はこの辺り一帯でこそ出せている結果だと、幼いながらにして自覚していたからだ。

 『世界は広い』……まさにその通りだ。この世界には自分よりも上である、シューティングにおけるプロが存在するのだから。

 昨今ではVRのシューティングなども登場し、世界大会なども開催されている。

 その中継などを見ていると、やはりまだ自分が未熟だということがよくわかる。現実に酷似した仮想世界で、よりリアルなガンシューティングをプレイしている彼らを見ているとテクニックもスピードも、何もかもが劣っていると自覚する。

 もっと極めたい。彼らプロの姿を見るたび、何度そう思ったか。

 だから自分は8年たった今でもいまだに近場のゲーセンでガンシューティングをしている。極め切ったガンシューティングでの腕磨きはほぼ無意味だということはわかっているが、たまにいるのだ。自分のプレイヤーネームで埋め尽くした10位から1位までのランキングに食い込むことのできるプレイヤーが。

 今日出会ったあの20代前半の青年もその一人に含まれる。だがしかし……

「やっぱり、俺よりも腕が鈍いんだよなあ……」

 所詮はランキング5位に食い込む程度、自分より劣っていて当然だ。

 その青年本人が目の前にいたら失礼極まりないことを思いながら小さく呟く。

 いつからだろう、ガンシューティングを純粋に楽しめず、自分と互角かそれ以上のプレイヤーが現れるのを憂鬱な気分で待つようになったのは。

「……ま、こんな時は家に帰ってあれ(・・)をするに限る」

 あれ(・・)とはいわゆる自らの精神を完全にゲーム上に投影することのできるVRゲームのことだが……これはまあ、後からでも説明できるので今はいいだろう。

 夕焼けに染まる道を歩きながら、剣也は今日も感じた憂鬱な気分を忘れるため、己の家へと向かうのだった。

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