01 転生
何だか暖かい。
目を開けると、白い光が飛び込んできた。
ここはどこなのだろうか?私は死んだのではなかったのか?そんな疑問が、頭を駆け巡る。
何があったのかを必死に考えていると、突然青白く光る球体が現れた。
『やあ』
次は突然声が響いた。誰かいるとかと周囲を見渡したが、やはりそこには先程の球体しかなかった。
『ここだよここ。君の目の前にいるだろう?』
目の前と言われても、やはりあの球体しかない。もしかして、目の前の球体さんがそうなのだろうか。
『あはは、球体さんか。そうだね。僕は球体さんだ』
まるで私の心を読んでいるように球体さんが答える。
『うん。僕は君の事が何でもわかるよ。ここでは僕が神だからね』
カミ?カミというのは、神の事だろうか?
『そうそう、その神だよ』
神なんて実在するとは思っていなかったので、私は驚いてしまった。
『大丈夫さ。みんな同じような反応をするから』
みんな?私以外にも人がいるということだろうか?
『それは違うね。ここは一時的に魂を保管する場所さ。僕は気に入った魂があったらここへ連れ込んできているのさ』
拉致誘拐?
『違う違う。連れ込むのは死んだ人の魂だけさ。本来は死んだら魂は浄化されて新しい魂にされてしまうんだけど、面白い魂を浄化してしまうのはもったいないだろう?』
それは、私が面白いということ?私は今まで人に避けられてきたから、そんなことはないと思うけど。
『いいや、君は面白いよ。
そこで提案だ。僕なら君の魂を浄化せずに転生させることが出来るんだけど、転生したくはないかな?』
別にいいです。私はもう辛いのは嫌だから。
『そう言うと思ったよ。
普通は転生させてあげるだけなんだけどね。君は特に面白いから、特別に特典をあげよう』
特典?
『うん。何でも一つ、好きな力をあげるよ。転生先は僕が管理する世界に行ってもらうけどね』
地球じゃないの?
『ああ。地球じゃないさ。だから、君が辛い思いをすることももうない』
本当に?
『本当さ。いざとなったら僕が君の事を助けてあげられるしね』
そこはどんな世界なの?
『剣と魔法。スキルとレベルの世界さ。君の好きなゲームみたいなもんだろう?』
確かに、私は一人でいる時間が多かったのでゲームにはお世話になった。でも、そんなことまで知られてるなんて…ストーカー?
『酷い言われようだね…でも、心が揺れてるのが僕にはバレバレだよ』
そ、そんなことない。
『強がらなくてもいいんだよ。
もちろん君には色々と特別な力を与えるつもりさ。君は特に面白いからね』
それは例えば、どんな?
『そうだね。今はもう失われてしまったスキルとか、強い装備なんかでもいいよ。
それとは別に、便利なスキルとかはタダであげよう。すぐに死なれても困るしね』
それじゃあ例えば、人の心を読む…なんていうスキルは?
『君は正直だね。
……うん。いいよ。それも面白そうだ』
本当に?
『ああ。読心術っていう、相手の心を読むスキルがある。ただ注意しなければならないのは、妨害系のスキルを持っている相手だと、読みにくかったり読めなかったりするけどね』
それは、どのくらいいるの?
『かなり珍しいさ。強い人はだいたい皆持っているけど、普通は持ってないよ』
じゃあ、それがいい。
『それじゃあ、契約成立だね。姿や年齢は面倒だから元の姿でいいかな?帰ることも出来るけど』
じゃあ、14歳の頃の私にして欲しい。
『14?たった3歳しか変わらないけど?』
うん。14がいい。
『そうかい。じゃあ適当な森に転送するから、後は自分で頑張るんだよ。
まあ、いざとなったら僕が助けに行くけどね』
わかった。
私が返事をしたのを最後に、目の前が真っ暗になり、抗えない眠気が襲ってきた。
私は現実離れした先程までのことにほうけながら、意識を手放したのだった。