35. 完全体
女は瞬時に私の目の前までやって来た。
そして、私が持っていた丼を奪い、箸も使わず一気にラーメンを口の中に流し込み、すぐさま店の外へ走り去っていった。
一瞬の出来事に全員がポカーンとしている。
「……ナイスジャッカル!」
「「「ナイスジャッカルじゃねえよ!」」」
店員(男)のつぶやきに、店員(女)たちが一斉にツッコむ。
「食い逃げですよ!どうするんですかチーフ」
……何なんだ今のヤツは!
……絶対に許せない!
走って追いかける。
けれど、こういう時って何て言えばいいんだろうか?
『待てー!』だろうか?
『私のラーメン返せ!』だろうか?
『止まらないと撃つぞ!』だろうか?
結局は無言で走って追いかけるんだけど、そういやお箸を持ったままだった。
広場まできた。
先日も通った所だが、周囲は破壊されてガランとしている。
女の足が止まる。
「……あ……ああ……」
四つん這いになって震えている。
食後の急激な運動でお腹が痛くなったのだろうか?
急に体が変形する。
緑色になり鱗に覆われる。
顔が大きくなる。
どんどんどんどん大きくなる。
―――ケツァルコアトル!
人間の姿に変身してラーメンを奪いに来たのか!!
私は『通常攻撃』することにした。
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」
」
」
キンバリーの攻撃!
ヒット!
ケツァルコアトルに9,130ポイントのダメージを与えた!
」
」
」
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ケツァルコアトルが吹っ飛ぶ。
それでも体が大きくなっている。
顔だけでなく胴体も長くなる。
ダメージは与えている。
しかし、大きくなるのを止められない。
ケツァルコアトルが私を睨みつける。
大きく口を開け、その中が光り出した。
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」
」
」
ケツァルコアトルの攻撃!
」
」
」
『灼熱の咆哮』
」
」
」
キンバリーにヒット!
しかしダメージは与えられない。
キンバリーは吹き飛ばされた!
」
」
」
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爆風。
直前にガードはしたものの、まともに食らってしまった。
弓で放った矢のような軌道を描き、私の体は飛翔する。
空から見たケツァルコアトルはまだまだ大きくなっている。
私は城壁の外まで行ってしまった。