10. 麺祭り
ガイヤガルドは城壁に囲まれた円形の街である。
十字に走るメインストリートから1本奥の道に入ると、屋台や商店などが多く並ぶ。
様々な飲食店を横目に見ながら、ブレアが先頭を歩き、その後にミアと私が続く。
縦にならんで歩いていれば私と目を合わせることがない。
ブレアは取り乱すことなく、お店まで案内してくれた。
最初、訪れたのはおしゃれなカフェ。
店内から甘い香りが漂ってくる。
オープンテラス席に若い女が座っている。
テーブルには琥珀色のスープが入った透明の器。
果物やクリームが乗っている。
黄色い麺をフォークでくるくると巻いている。
「なんか、違う。」
その次に訪れたの屋台のお店。
客の男が、店員から壺のようなものを受け取っていた。
どうやらその中に麺が入っているらしい。
壺の口から太いストローを突っ込んで、チュルチュルと吸っていた。
「全然違う。」
その次のお店。
魔道具屋。
食べると魔力を回復するらしい。
麺とスープと紫色をしたスライム状のモノが瓶の中に入っている。
「絶対違う。」
―――――
「あのお店は何?」
別の場所に向かう途中だったのだが、変わった建物を見つけた。
赤と黒ツートンカラー。
形はほぼ四角形で、非常に目に付く建物だ。
黒い木の看板には金色の字で『ハンプティ飯店』と書かれている。
入口の横にはメニューが張られている。
ラーメン1杯:金貨2枚
「「「高い!」」」
3人の声がハモった。
こんなに高価なモノを食べに来る人いるのか?
「この……ラーメンってどんな料理?」
ブレアに……聞いたらダメだったので、ミアにたずねる。
「ラーメンってどんな料理?」
ミアがブレアにたずねる。
「ああ、それはですね……。焼いたオーク肉の薄切りを山のように積み上げて、海の魔物や陸の魔物を煮込んでドロドロにしたものと一緒に食べる料理らしいですよ。」
「え~……何それぇ」
ミアも私も眉をひそめる。
「聞いただけで胸やけしそうですね……。でも、一回食べたら食べると病みつきになるらしく、ハマっている人も多いらしいです。」
さっきまで見てきたお店はどれも甘い匂いがしていた。
しかし、このお店からはとてもいい匂いがする。
魚介類がたくさん入ったブイヤベースのような。
「このお店の料理を食べてみたい」
「「えっ!?」」
「お腹もすいたし。2人には協力してもらっているし、お礼におごらせてくれないかな?」
意図的にではないにしろ、ブレアはかなり怖がらせてしまっているし、仕事まで休ませてしまった。
もちろん、ミアにも感謝している。
「さすがに悪いですよ、こんなに高いのはさすがに……」
と、ブレアが言った途端
―――グ~キュルキュル……
ミアのお腹がなった。
「さすがに悪いよ、こんなに高いのは……。あ、でも他にもいろんな料理があるみたい。他のはそこまで高くないみたいだね。これくらいだったら……」
ブレアと私の顔色をうかがうミア。
「どれでもいいからおごるよ」
「わーい!やったー」
「……すみません、ご馳走になります」
少し遅いめのお昼ご飯を三人で食べることにしたのだった。