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シンクロナイトROBO(錆びない情熱)

「さあさあロボットの話はそれぐらいにしておいて・・」


「料理が出来上がったので、まずは乾杯と行きますか?」


 みんながテーブルについたところでマスターのKJがなぜかマイクを持って乾杯の音頭をとりだした。


「え〜え〜・・本日はお日柄も良く・・」


「・・・」


「うちの兄貴、ホンマアカンわ!」


「マイク持たせたら緊張して、どもるクセがあんねん!」


「MCの練習のためにマイクに慣れてもらってんねんけど・・」


 優花がダメ出しを始めたところで・・


「マイクを持たせたら三流ですが、プレスをさせたら超一流!梶原プレスをごひいきに宜しくお願いいたします〜」


「あのしゃべりとノリが一部の客層に受けてるのが不思議でしょうがないわー」


「優花さん まっ、良いって事よ〜」


 いつの間にか健二と八木の中を割って顔を出してきたのは光一だった。


 光一は優花に恋心を抱いていたが告白できない少年のような状態が続いている。


 マスターのKJ(梶原)と優花は15才年が離れた兄妹である。


 ODTECに度々顔を出していた時に大学生だった光一と高校生だった優花は知り合う事になる。


 優花は光一の事をギターのコードを教えくれた「優しいお兄さん」と「話を聞いてくれる良き相談相手」であり恋人の対象にはしていなかった。


「可愛い女の子」は認めつつ、友達としての良好な関係を保っていた光一だった。


 光一は高校生の時に結成したバンドでドラムの担当をしていたが、健二が無理矢理誘ったロボ研でその能力を発揮してゆく事になった。


 ドラマーが入れ替わって暫くの間バンドは活動していたが一年後に解散する事になる。


「優花さん?KJのあのノリと優しさは昔から変わってないよなぁ〜」


「うん、そんな兄貴が唯一怒ったのは・・光一さんと出くわしたあの時だけ。」


「あっ、みんな飲むの早いなぁ〜」


 優花がビールを取りに行くためテーブルから離れた。


 兄を少しでも助けるためミナミのキャバクラで働いていた優花。


 偶然、店から出て来た別人の優花と出くわした光一だが・・


 あどけなさが残る瞳を見てすぐに優花と気付いた。


 とっさに彼女の手を掴んで家に連れ戻した事がある。


「光一はん、あの時はホンマにお世話になったな・・」


「その話はもう勘弁して下さい。梶原社長。」


 言葉の少ない照れ屋の光一。


 そんな瞳の奥の情熱を梶原は感じとっていたが・・


 その情熱と温もりが小学生の時に体験した悲劇から生まれ育った事を誰も知る由も無い。


「おーい、早よビール持って来んかいー」


「ハーイ!」


「でっ、話は変わるけど「ロボットハピネス」とやらで世界的権威が集まるグローバルな研究会が今度大阪であるやろ?」


「ああ国内外から集まるロボティクス達の交流会やね・・」


「前のダイジェストでロボタス社が出ていないような気がしたんだが・・?」


「ああ、出る出ないは任意だから出ないだけさ」


 健二は淡々と説明した。


「なんで?」


 と梶原が尋ねる。


「まず第一に、ロボット技術は軍事産業への転用が容易である。」


「第二に、世界のエージェントが研究会が公開する技術を欲しがっている。」


「第三にロボット革新を名目にして共同開発を唱える不届き者がいる」


「共同開発は悪い事ではない。むしろ我が社も望むところだと言いたい。」


「ロボットのオープン性は研究初期段階のみに限定するべきに至った理由」


「それは日本のロボティクス技術に世界各国が注目し開国を迫る理由と同じなのです。」


 健二は若くして見抜いていた。


 世界に誇る精密テクノロジーが昔から「鎖国」扱いにされてきた。


 昔と今は違う。


 世界のビジネスも進化している。


 技術を隠すのでは無く、より良く生かすためのタイミングがその国やそのメーカーによって異なるのは当然である。


 ロボタス社がアメリカのエージェントを通じて技術提携を投げ掛けたが拒否された事実。


 その会社はロボタス社が最も信頼していた歴史ある企業だった。


 国家権力が間違った道を示唆してきたら外交を通じて突き返すか、条件を提示して交渉に挑むかの二択だ。


 アメリカがCO2削減を引き延ばしたように、

 TPPの撤退を示唆したように、立派な提案もその国の事情により刻々と変化してゆく。


 その前にテーブルの上で調印させるダサいやり方をする国に大切な技術は渡せないのが結論である。


「ギュィーン ギュギュギュイーン」


 ぶったまげた。


 宮澤と梶原社長がロボット産業の現状と未来について真面目な話をしている時に・・


 ほどよく酔って、ネクタイを緩めた二人


 八木と光一がステージに上がる。


 そして昔ポールダンスを習っていた優花がステージ真ん中のポールに絡み付く。


「何年ぶりのドラムやろ」 光一


「この感触やっぱいいですねぇー」八木


 三人は飲んでいる時にセッションする曲を決めていた。


「エストロックにもこの曲を弾いてもらおーと!」


 演奏曲をスマホのDTMアプリを使用してエストロックにダウンロードさせる事ができる通信機能付ロボットだ。


「ダウンロード完了!曲名をスマホのアプリから選定してください。」


「BPMとKEYを入力して下さい。」


「これめっちゃ簡単!」


 優花はロボット演奏の操作性に満足していた。


 そしてポールにまた絡み付く。


「1 2 3 4!」


 ギュィーン ギュィーン ダダ ダッタ


 ギターとドラムのセッションが始まった。


 エストロックもアドリブで盛り上げる。


 違うテーブルに人が座り始めている。


 東大阪工科大学の学生が先輩達が来る情報を嗅ぎつけていた。


 そしてマスターのKJにこっそりお願いしていたみたいだ。


「先輩!やるっすね〜」


「きゃー 優花さーん!」


 優花はポールから降りてボーカルマイクを手にして歌いはじめた・・


 ギュィーン ギュィーン ダダダ ダダダダ


 学生達が連れて来た女の子や友達やらでいつの間にか平日のライブ会場さながらの雰囲気に包まれていた。


 よっしゃ今夜はとことん付き合うぜ。


 健二はテーブルからステージの前に移動してKJと学生達と一緒に踊っていた。


 シンクロした夜は更け行く。








































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