家政婦ロボットと呼ばないで!(MEOFAの奇蹟)
ピー ピー ピー
MEOFAはSUMITと通信を始めた。
SUMITはそれに応えMEOFAに近づいてゆく・・
修二は怪獣映画の親怪獣が子怪獣に超音波で何かを知らせているシーンを思い出していた。
MEOFAの脚は二足歩行で歩行システムはキャタピラ型を採用している。
階段を登る時は脚を胴体の半分まで収納させる。
その後四つ足体型に姿を変えて、犬のように階段を登る事ができる。
ギュィーン
MEOFAの右足キャタピラ部分が90度向きを変える。
垂直状態のSUMITの内輪はスローダウンしながら停止した。
その瞬間
SUMITはMEOFAの開かれたキャタピラ部分のマグネットに吸い込まれて合体していた。
例えるならば、宇宙ステーションに人工衛星がドッキングする光景は誰もが想像できるだろう。
それのロボット版だ。
会場はその機械的な光景一点だけに視線を注ぎ込み集中している。
このあと何が起こるかの期待を胸に留めながら次のアクションを待っていた。
SUMITは回転を停止した時からMEOFAが全ての主導権を握っていた。
MEOFAは主役となって独壇場のステージパフォーマンスを見せる時間だ。
サポートスタッフとイベントコンパニオンの沙也加は注意深くMEOFAを見守る。
MEOFAは自らサポートスタッフに通信できる手段を持ち合わせている。
家族用の通信システムとして標準装備され外出先から遠隔操作ができ、MEOFAと会話もできる。
「沙也加さん?今から30秒後にフロアを掃除します。」
「おーお!凄いよコレ。」
沙也加の持っているタブレット端末にメッセージとカウントダウン用タイマーが表示された。
MEOFAの粋な計らいだ。
「会場の皆さーん?今からカウントダウンしますー」
「カウントダウンの後に、MEOFA GO!の掛け声を一緒に唱えましょうか」
「用意はいいですかぁー!皆さーん!」
「それではいきますよー 54321」
「ゼロー!」
「MEOFA GO!!」
Ueeen
Ueeen
MEOFAは来場者の期待通りにフロアを掃除して行く。
MEOFAはSUMITには無い機能の臭覚センサーと高感度画像判別センサーの搭載によりゴミや食べかすの他、ダニやそのフンまでもピンポイントで探し捕獲できる能力が備わっている。
臭覚センサーは目に見えない臭いの位置を特定して位置データで保存する。
MEOFAは集塵後、その臭いのある部分をスチーム洗浄してくれる。
光一が撒いた目に見えないゴミの粒子は、臭いセンサーには反応しないが、高感度画像判別センサーの働きで面で広くキャッチングできる。
SUMITとMEOFAは一心同体となって来場者を歓ばしている。
そして次なる必殺技が飛び出す。
ギュィーン ガチャ
ギュィーン ガチャ
ビュイーン
「そこのカメラマンさん・・今がシャッターチャンスですよ・・」
パシャパシャ!
サービス精神旺盛なMEOFAの掌から細いノズルが出てきていた。
「おーお、最新兵器のお出ましか?」
と会場は騒つく。
その光景はビデオカメラもズームインで迫り会場の各スクリーンに映し出されていた。
直径5ミリ程度のノズル先端には吸入口とは別に小型照明とカメラが装備されている。
天井に近いエアコンにターゲットは絞られた。
ギュィーン
MEOFAは安定を保つために少し脚を広げ、脚部が天井方向へ機械的に伸びて行く。
そしてMEOFAの手がエアコンの上に到達した時、カメラが何かを捕らえ始めている。
ビュイーン
チュルチュルチュル
永年積もってきたホコリのかたまりはMEOFAを介してSUMITの胃袋に吸収されて行った。
MEOFAは作業を終え、SUMITを切り離しチャージステーションへ帰還させた。
お掃除プログラムは無事終了した。
「ハイ皆さーん!MEOFAのパフォーマンスの一部を、その目で確かに見て頂きましたねー」
沙也加は来場者の視線と意識を自分に向かせるためにハッキリした口調と少し大きめな声で語りかけた。
「それでは皆さん第一回目のプログラムはこれで終了させて頂きます。」
「今からスタッフが簡単なアンケートとパンフレットを配ります。恐れ入りますが会場に設置している回収ボックスに記入されたアンケートを入れていただければ助かります」
「イベントコンパニオンの評価欄もありますので記入してねー」
抜け目の無い沙也加の攻撃的で正確な進行。
それを思わせないところが彼女の個性でもある。
修二と鉄平は沙也加のプロ意識に脱帽していた。
「沙也加さん、ありがとう!MEOFAの能力を最大限に引き出してくれて。」
「いえっ、とんでもない!こんな素晴らしいイベントに出れる事は光栄そのものですよー」
「途中、しくじったらどうしようとヒヤヒヤした時がありましたがMEOFAが間合いを埋めてくれたようですね・・」
「MEOFAうちの親父に言って一台買ってもらおうかなぁ?」
「いえいえ沙也加さん!パンフレットとアンケートにも書いてありますが、MEOFAの発売時期は未定です。」
「それ以上学生の僕達は言えませんが、顧客の反応と動向次第と言う事で伺っています。」
「あっ、そうでしたよねぇースミマセン。」
その時、宮澤と源田が一緒に入って来た。
「みんなよーくやったな・・MEOFAもさぞかし喜んでいるだろう。」
MEOFAもそれを聴いていて首を縦に振っていた。
「水樹さんと言ったっけー?」
「あっハイ」
「このイベントの次は、ロボタス社のイベントへの応募も宜しく頼むよ」
健二からの最高の褒め言葉だった。
「いえっ、みんなチームワークが良くて素敵な人が多いですね」
「まっ、合コンの時から分かっていたけど・・ね」
「ハハッー」
沙也加は修二の目をチラっと見て、皆んなの笑いを誘った。
第二回目のプログラムは昼からになる。
健二の息子翔太が駆け寄って来た。
「お父さん、ご飯食べたら外のゲームに参加してもいい?」
ブース内のイベントより外のゲームが気にかかる翔太であった。
「あ〜ら、可愛いお子さんですねぇー」
「お母さんは?」
「今友達とおしゃべりしているよー」
「あらっそう。」
「翔太くん?ロボット好き?」
「うん!」
「だったらMEOFAと握手してみたら?」
確かにそうだった。
健二は子供を会社のイベントすら連れて来なかった。
仕事漬けの毎日を言い訳にはしていない。
健二は特に意識していないが、研究室が彼の「聖域」になっていたのかも知れない。
会社と言う「立ち入り禁止のバリア」は子供達にとっては関係の無い事で、工夫を凝らせば良い遊び場所になるところだ。
健二は沙也加の開放的な提案をありがたく思い、快く受け入れた。
「よーし翔太。これがMEOFAだ。」
MEOFAは健二の事をよーく知っている。
「こんにちは翔太くん!今日は君に会えて嬉しいよ」
「あっ、メオファがしゃべったあ〜」
「翔太くん?握手しようよ!」
MEOFAの手の指と掌には敏感な圧力センサーが備わっており、子供の柔らかい手でも優しく包み込むように握る事ができる。
「ちょっと手が冷たいね、メオファくん」
「そうですか翔太くん・・」
「でも心は温かいですよ。」
MEOFAは翔太の手を取り、ディプレイ横の部分を触らせた。
「あっ本当だ」
MEOFAの機転の効きすぎが後々大騒動を起こす引き金になるとは誰も予想する事は出来なかった。




