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今の気分

 週に5日間働き、2日間休暇をとる。たまに休暇をとらず働くこともある。針は2と6を指している。お昼のピークが足早に過ぎるとそれからはゆっくりと時間が進む。職場の人と少し世間話で盛り上がり、一息つく。客のいないテーブルを周り、砂糖や爪楊枝などの補充を行う。度々、店のドアにつけている鈴の音がする。補充を終え、カウンターへ戻ると、また鈴の音が聞こえた。

「いらっしゃいませ。」

 2人の婦人が入ってきた。

 まだ学生の三上みかみちゃんがオーダーを取りに行った。

「ケーキセットツー、ドリンクはレモンティーとミルクティーです。」

「はーい」

 カウンターキッチンに居る、私より2歳年上の野田のださんが返事をした。私はケーキ用のお皿とフォークを用意し、野田さんがケーキセットを作るのを見守った。お皿にはチョコレートソースとストロベリーソースで花の絵が描かれた。何を描くかは決められていないが、より良い印象を与えるためにお皿の空いたスペースに描き込まれる。一人一人違ったものを気ままに描くようになっている。初めては苦戦していた私も今は気楽に描ける。楽しいと思える時のひとつでもある。フルーツを盛り生クリームを絞り、ハーブを飾る。美味しそうなケーキに見とれていると、ドリンクも出来上がっており、すぐさま三上ちゃんと共にテーブルへと運んだ。

「美味しそうだわ。」

「美味しそうね。」

 そう言い、婦人たちは頬を緩ませていた。その後も緩やかに時が流れ、定時で店を後にした。


 連日の雨のせいか、朝から晴れていても、土の香りがまだ少し残っている。私の通勤手段は自転車、又は、オートバイであり、その日の気分で決まる。久々の晴れた天気ということもあり、今日はゆったりと自転車で通勤した。生暖かい春の風を優しく肌に感じ、土の香りに混じり、春の香りも感じた。今日は歩いて帰ることにした。徒歩で30分程度になる。コンビニへ寄り、季節限定の桜・オ・レと、桜のスノーボール、桜のミルクプリンを手に取りレジへ進んだ。桜づくしである。最近の季節限定商品の多さについ目を見張ってしまう。そして、今季もまた、つい、つい手を伸ばしてしまうのだ。


 歩道脇には手の施された腰ほどまで高さのある花壇があり、花を沢山つけたパンジーが植えられている。大きな通りは人や車が多いので、なるべく避けて通るべく、私は間道へと入った。車の音が小さくなっていき、自分の自転車の音がよく聞こえるようになった。ふと、猫が現れた。三毛猫である。首には赤い首輪がついており、毛も汚れてはいない事から、飼い猫であると察する。こちらを見る猫を通り過ぎようと横を通る。逃げるのでは、と思ったが、全く物応じない様子に、撫でてみようと試みた。あっさり撫でる事が出来、足にまとわりついてきた。この道を通るといつもこうである。足を止めた事に気付き、また足を進めると、猫もついてきた。先に見えていた十字路へ着く。ここまで来ると猫はついては来ない。自分の家へと戻るのだ。猫に別れを告げ、更に先を行くと公園が見える。小学生らしき女の子が2人居る。地面の草を積んでいるその姿を見て、自分の昔の姿が浮かんできた。


 先ほどコンビニで買った桜・オ・レを飲みながら無心に足を進め、自宅へたどり着いた。これだけで私の心は満たされた感覚になる。何故か、私の心が小さい気がしてならない。


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