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序章

 時は一八世紀初頭。フランスのルイ一四世の孫、フェリペ五世の即位に反対してイングランドス、オランダ、プロイセン等が連合軍を結成してスペイン継承戦争が開戦。




 暗闇に潜む影。

 ロンドンから少し離れた所にある城から山を下ると大きく真っ暗な岩陰があった。そこに隠れているのは大きな軍艦と同じ作りの船だった。

 月明かりで地面に人影ができる。彼らの腰には剣が下げられ、手の内にはキラリと輝く短剣や槍、斧などの人を殺める道具があった。

 「六人でいい。後の者は船を見張り、時折見回りをしておけ。いつでも出られるようにな」

 「ああ、気ぃつけて」かなりの人数を前にして言った若めの男に老けた男が言う。

 答えることもなく、その若い男は「行くぞ」と五人に命じ、背を向けた。命令した男は五人の若い男たちを連れてまだ暗い山道を登っていく 。その時の男の瞳は暗闇と同じくらい暗かった。

 そんな男を気にかけることなく、バンダナを頭に巻いたグレーの瞳の男が尋ねる。「船長、何でまたこんな田舎町に?」

 「そうさ、もっと広大な金持ちが居そうな町を狙えばいいのにさ」一人が聞くともう一人も同調して尋ねた。船長と呼ばれた若い男は腰に二本の剣を携えた男を見て言い放つ。

 「黙って歩け。ここは確かに他の町と比べたら偏狭な町だが、侯爵が避暑地としてカントリーハウス(田舎屋敷)を構えている。想像出来ないだろうが田舎屋敷と言っても、あれは城だがな。今は社交界シーズンだから侯爵はロンドンにいるだろう。そうなるとここには使用人ばかりで手薄だ」

 「なるほど。さすが船長だ、抜け目ねえ」感心したように手を叩く男は笑いながらそう言った。

 山を登り終えると少し先に大きな屋敷が見えた。やはり男が言った通り屋敷ではなく、城であったが。五人の若い男たちはその広く大きな城に目をぱちくりと瞬いている。

 「こんな所に入るのか…?」

 「本当に城だぞ。完全防備じゃないか」

 次々に今から自分達が行うことに対する不安を口にした。船長と呼ばれた男は彼らを無視して草むらに隠れ、先の完全防備の城を睨みつける。

 「所で船長、一体何を盗む気だ?」

 「お前達が望むものだ。それが手に入らなければ、もう一つのものを盗めば手に入る」

 「なるほどな!もう一つを狙ってしまえば早い話ってこった。だがよ、シエル。こーんなだだっ広い所、何日かけても何も見つからねえよ」この中で一番歳を食っている長身の男がそう諭した。それに周りの男達も大きく頷く。

 「中の構図はもう分かっているさ」

 「これを抜け目がないって言うんだな」逆に一番若い男が笑って言い、また他の男達も笑った。

 「あっちだ」船長は笑いもせずに城とは別の方向を指差した。


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