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第一話 プロローグ


異能。


それは古代から存在した神秘の力であり、その異能を操る数少ない者達を異能者と呼んだ。



それから数十世紀が経ち、各国には異能の才能を持つ者が集まる教育機関が存在するようになる。


その中の一つ、王立特殊異能育成機関。通称『学園』。

桜が舞う季節、そこにある男が入学する所から物語は始まる。





「ここが『学園』か~。でかいな」


黒髪の少年、コウは片手に地図を持ち、門の前に立ち止まる。コウの視線の先には噴水がある広場に、奥には巨大な建物が幾つも立ち並んでおり、これから入学する学校の大きさに驚いていた。


「さて、行きますか!」

「待ちなさい!」

「ん?」


コウが門くぐり、『学園』の敷地内に入ると、後ろから少女に呼び止められる。


「あなた、見ない顔ね。ここに何か用かしら?」


少女は警戒する様子を見せながら、コウに近付く。コウは警戒されている事に少し首を傾げ、少女の問いに答えた。


「俺はここに入学することになったんだ」


コウがそう言うと少女は馬鹿にしたように笑い、コウを睨む。


「入学式は一週間前に終わってるわよ?それに誰かが編入してくるなんて話も聞いてないわね」

「聞いてないって言われてもな......」

「それで?本当は何が狙いでここに来たのかしら」


コウは少女に問われて考える。自分がここに来たのは勿論『学園』入学する為だ。そして学校で学生として生活するなら、それをただ勉強するだけの生活にするのは詰まらない。コウとしては薔薇色の青春を送りたい所だ。コウは目の前の少女を見る。長く綺麗な青色の髪に、少し切れ長の目でコウを見る少女は間違いなく美少女だ。スラリとした体型に服の上からでも主張してくる胸は男の一つの憧れとも言える。そう、例えばこんなに美少女と学生生活を送れるならそれはとても素晴らしい事ではないか。そう思ったコウは胸張り、拳を握り締める。


「俺は美少女と学生生活を送りたい!」

「何の話をしてるのよ!!」


コウの宣言に少女は更に怒りの声を上げ、ワナワナと身体を震わせる。


「いいわ......そこまで惚けるならこっちにも考えがあるわ」


、と少女が言うと、少女はコウに右腕を付きだし、


「【雷縛】!」


そう少女が言うと二本の雷が太い縄状になって出現し、コウを縛った。


「うお!?」


コウに巻き付く雷に威力はないが、コウが外そうと力を入れてもびくともしない。


「無駄よ。それを力ずくで外すのは不可能よ」

「......どうやらその様だな」


きっちりと自分を縛る雷を見て、コウはあっさりと諦める。あまり動じてないコウに少女は眉をひそめるとコウの襟を掴み、ひきづる。


「あなたを学園長所に連れていく。そこで処断を仰ぐ事にするわ」


そう言って少女はコウをひきづる。すると当然コウは地面と擦れ、とても痛いので、


「自分で歩く。別に逃げたりしないからさ」


、と言うのだが、少女は黙ってコウをひきづる。コウはため息を吐き、


「あんた名前は?」

「よくこの状況で聞けるわね」

「可愛い女の子の名前は出来るだけ知っておきたいのさ」

「そう」


少女は小さくため息を吐くと、


小百合さゆりよ。西岡小百合」


、と答える。コウは名前を教えてくれた事に驚いた。普通なら、コウのような怪しい(?)奴に名前を聞かれても絶対に言わないだろう。いきなり縛られ引きづられているが、もしかしたら根はいい奴なのかも知れない、とコウは思う。まぁ、名前を教えてくれただけで良い奴というのもおかしいが。


「そっか。俺はコウって言うんだ。よろしく、小百合」

「気安く下の名前で呼ばないで」

「...よろしく、西岡」

「あなたの様な怪しい人と宜しくなんてしたくないわ」


......良い奴かも知れないが、毒舌だ。コウは若干引き吊った顔で苦笑した。


「ここが学園長室よ」


長い廊下を引きづられて暫く。やがて、コウ達は大きな扉の前にいた。横には『学園長室』と書かれたプレートが壁に埋め込められている。西岡が軽く扉をノックすると、


「どうぞ」


、と少し経って返事が返ってくる。西岡はそれを聞いて軽く咳払いすると、


「失礼します」


、と言って扉を開ける。大きな扉がギィと音をたてて開くと、そこには一人の女性がいた。彼女入って来た西岡を見ると少し首を傾げ、すぐに後ろのコウを見て、あぁ、と頷き、小さく笑った。


「どうしたの?」


学園長は机にほほ杖をつき、西岡が少し緊張した顔で、


「はい、この男が学園に不法に侵入しようとしていた所に私が学園に何か用があるのかと問いただした所、抵抗しようとしたので捕まえ、指示をリーゼ様に仰ごうとここに連れて参りました」

「抵抗......ねぇ」


リーゼと呼ばれた学園長はコウに視線を向ける。それに対してコウは首を横に振った。確かに抵抗はしようとしたが、それは捕まってからであり、それも抵抗と言える抵抗ではない。リーゼの反応が薄い事に気が付き、西岡続けた。


「なんでもこの男によると、自分今日からここに入学するのだと言い訳を......」


、と西岡が話した所でリーゼが遮る。


「大丈夫よ。彼の言う通り、彼は今日からここに入学するのだから」

「はい?」


リーゼの言葉に西岡が固まる。その様子をリーゼはクスリと笑い、


「本当に彼は今日から『学園』に入学する事になっている編入生よ。勿論、ちゃんと正式な手続きをした上でね♪」

「え、あ.....っ」


リーゼがウィンクし、西岡は明らかに狼狽した様子で視線がリーゼとコウを行ったり来たりしている。


「落ち着いて西岡さん。取り敢えず、その拘束を解いてあげたら?」

「そ、そうですね!」


西岡は慌ててコウにかけていた魔法を解く。


「よいっしょ!っと......」


ようやく解放されたコウは引きづられたお尻を撫でながら、服に付いた埃を払い落とす。


「さてと、誤解も解けたし」


そう言ってリーゼは椅子から立ち上がると、コウに手をつき出し、


「ようこそ『学園』へ!」




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