その2
今、私はおばさん達と一緒に宿屋を営んでいます。色々ありましたが、今は概ね幸せです。
「いらっしゃいませ!お泊まりですか?お食事だけですか?」
宿屋件食堂で毎日楽しく暮らしてます。今日もお客様が来てます。
「泊まりだ!一泊で」
「はい!一泊ですね。お代は銀貨1枚です。お食事は六の刻です。お風呂の使用は七の刻朝食は別料金になります」
この宿は普通の宿より少し高めのになってます。シオンから夢のお風呂、大浴場を作ってもらいました。姉の私が昔からお風呂好きだと知っていたシオンのプレゼントでした。
「ああ、分かった。朝もお願いする」
「はい、分かりました。用意しますね」
辺境の宿屋ですが、国境近くなので割とお客さんが多いです。冒険者や警備の騎士様がいます。夜は食事だけしに来る人もいるので繁盛しています。
「ダリア〜!食事運ぶの手伝ってー!」
「はーい!今行くわ」
「ギル、お客さんを部屋に案内してね」
「分かったよ。任せてお母さん!お客さん〜こっちだよ」
そんな毎日を過ごしていた私の元に、1人の男の人が来ました。ウッディさんです。偶に、宿を利用てくれる気前のいい人で、私にも子供達にも優しくしてくれました。その人が、ローズガーデンの薔薇の花を両手いっぱいに抱えて目の前にいます。
「あ、あ、あ、の、ダリアさん!私と結婚してください!」
「え?え??」
「お願いします!貴方以外を妻にはしたくないのです」
その人の横で従者3人が土下座で頼み出しました。
「お願いします!旦那様の奥様になってください!もし断られたら死んでしまいそうで怖いです!」
「お願いします!私達皆、奥様に誠心誠意仕えさせて頂きます!お子様達も大事にします!」
「お願いします!私達は旦那様に命を救ってもらいました。旦那様を幸せにしたいのです!」
周りに人が集まって来ました。驚いて見てる人や、ニヤニヤしてる人に、同情の眼差しを向ける人と様々です。
「ごめんなさい、私……2度結婚に失敗してるので、貴方には相応しくないわ」
どう見ても人の良さそうな感じの方だけど、私は2度も失敗してるし子供達もいるので遠慮したいわ。
「そんな事は関係ありません!私が貴方を幸せにします!子供達も大事にします!」
勢い良く私の手を握り懇願してきます。気不味い!誰か助けて!
「ダリア、この旦那本気そうだね。お付き合いしてみたらいいさ」
おばさん、そっちの援護ですか!
「お母さん、このおじさん悪い人じゃなさそうだね。話くらい聞いてみたら?」
来る度に優しくするのは勿論ですが、息子の欲しがっていた物や助言、相談などを真剣に聞いてくれていたと後から聞きました。
「お母さん、僕もそう思うよ。このままじゃ見世物になるよ」
2人共この人を認めているのね。ですが、やっぱり結婚には踏み切れません。今の子供達との生活が楽しいからです。
「ダリア、新しい幸せを考えるのもいいじゃない」
「ダリアおばさん、頑張れ」
え?おばさん達も賛成⁉︎誰も反対しないの?3度目ですよ、もっと自信がないのだけれど……。
「お願いします!大切にします!お母さんを私のお嫁さんにください!貴方達の事も大切にします」
子供達に土下座をして頼んでいます。それに続く様にお付きの人達も同じく土下座をしてしまいました。
「お願いします!お母様を旦那様にください!お子様である貴方達にも精一杯仕えさせて頂きます」
「お願いします!皆様を全員で誠心誠意仕えさせて頂きます」
「お願いします!皆様をどんな危険からもお守ります!」
私が返事をする迄この状態ですか!同情する声が聞こえてきました。
「悪い人じゃないよ、ダリアさんお付き合いしてあげたら」
「恥も外聞も無く頼んでいるのだから本物だろう」
「子供達が巣立ったら寂しくなるぞ」
周りの皆が彼を応援しています。もう一度だけ夢見てもいいかしら?幸せな愛ある人生を。
「ウッディさん、私と子供達を幸せにしてくれますか?」
私の答えを聞いたウッディさんが泣いてます。
「ありがとう…ダリアさん!ぐすっ、幸せにします」
いろんな事があったわ。記憶を思い出して、自分が嫌われ伯爵夫人だったと分かった時に絶望しそうになったけれど生きてるのだもの、ずっと幸せになる努力を惜しまず続けるわ。今度こそ幸せになるために。




