第21話
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伯爵の話を聞く事は出来ない。弟が言った通り今更なのです。もう道は違えてしまった、私と伯爵の人生が交わる事はないわ。終わった愛を私は取り戻したいとは思っていません。唯、悲しさがほんの少し残っているだけ。
「忘れてください。私と貴方の道は別れて交わる事はないですわ」
「しかし!私は子供達の父親だ!」
例え血が繋がっていてもそれだけでは父親とは言えないわ。真実を知った子供達が父親だと認めるとは思えない。私は伯爵に向かって首を横に振りました。
「あの子達は私だけの子です。父親はいません!…いないのです」
もう、十年も前に捨てられた私と子供達。疑われなければ伯爵の子供として生きていたはず、でも現実は違います。義娘を殺したと疑われ、最後まで言葉ひとことも交わさなかった。心が狭いと言われるかもしれません。信じて貰えなかった私は、多分あの時に伯爵を好きだった心を本人自身に壊されてしまった。
「伯爵!これ以上姉さんに言い寄るのは止めて下さい」
「だが!納得できない!」
「世間では姉さんを悪く言っているが、一度目の結婚も相手を助ける為だった!二度目は伯爵自身が姉さんを裏切った!それが事実です」
「…私はそんな積りはなかった」
「伯爵!どんな思惑が有ったとしても、真実を知りながら姉さんの噂を止めなかった貴方に!貴方に、何も言う資格はない!」
弟が言うように、伯爵が何を考えていたかなんて私には理解できないわ。分かるのは私が、あの一番苦しい時に突き放されて信じて貰えなかったことだけだわ。私を信じてないから、離婚して半年にもならないのに新しい妻をむかえたのだから。
「私は、伯爵と関わり合いになるつもりありません。真実はひとつですわ。伯爵は、私と離婚して新しい妻をむかえられた。その事実が変えられないように」
失った時は取り戻す事はできない。大地に落ちて染みた水を元に戻せないように。修復不可能なほど、私と伯爵の心は離れてしまった。
「だが!…私は子供達を諦めきれない」
「今、伯爵の側にいるお子様を大事になさってください。私達の事は忘れて欲しいのです」
伯爵には、今の奥様との間にお子様がいたはずです。ご自分のご家族を大事にしてください。
「…忘れろと言うのか?」
「その方がお互いの為になりますわ」
私は、今の現実を受け止めて生きて行きます。伯爵も昔の事に囚われず、自分自身の幸せを大切にしてください。私に言えるのはそれだけです。




