第2話
不定期更新です。
手遅れだと、記憶を思い出して気が付きました。屋敷には、私しかいません。昨日、池に落ちたのは背後から突き落とされたからでした。何故分かったかと言うと、池の水面に映る旦那様を見たのです。
「そんなに嫌われていたのね、今世の私」
今世の、私の意識は心の奥に隠れたようです。辛かったのだと思います。
「思い悩むのは辞めるわ。どうにもできないのなら、前に進むしかないわね」
旦那様の事は、もう諦める事にしました。殺したいほど憎まれているのですから、元々悪かったのは今世の私ですから仕方ありません。実家のお父様に手紙を出してお願いして、旦那様とは別れる事を決めました。
次に、どこに嫁がされても今の現状よりはましでしょう。
「実家に帰るわ。馬車を準備してくれないかしら」
荷物を纏めて帰った方がいいわね。もう、ここには帰らないから。
「はい奥様、かしこまりました」
用意された馬車に乗って、実家の公爵家に戻りました。
「お嬢様、お久しぶりです。ご主人様がお待ちです」
久しぶりと言っても、今世の記憶が曖昧な私にはこの家も初めて来た場所に思えました。ドアが開いて貫禄たっぷりの年配の男性がいます。
そう言えば、この人がお父様のようです。
「お父様、お久しぶりです。この度は私の我儘を、聞いてくださってありがとうございます」
どうしてか、お父様が驚いた顔をしています。唯の挨拶に、驚く要素があるとは思いませんが、どうしたのでしょう。首を傾げて不思議そうにしていると、お父様の顔が怒りに染まってます。
「余程の事があったのか?あの男に何かされたなら言いなさい!」
とても心配してくれてます、本当に甘やかされてたのですね。薄っすらと思い出すと、今世の記憶が少しだけ浮かんできました。
「いいえ、何もありません。子供も生まれないし寂しくなったので、何処か別の子持ちの人に嫁いでみたくなりました」
お父様が、思案顏で考えこんでしまいました。誰か当てがあるのでしょうか?
「子持ちなら……誰でもいいのか?一人当てがあるのだが、良いのか?」
新しい生活を始めたら、気持ちが変えられるかもしれないわ。
「ええ、お父様お勧めの人なら構いません、新しい生活を始めたいわ」
そして私は、今世の記憶が薄れゆくままに旦那様を忘れ、新しい生活を始めるために、お父様のすすめる人に嫁ぐ事に決めました。