第14話
不定期更新です。
あれから願いを叶えてもらう為に、今までの出来事を勇者に話しました。この国にの王子様に見初められ、祖国と父親から婚姻の許可を得たといい無理矢理に近い形で連れて来られた事。それに、私の知り合いの家族が巻き込まれた事や、先ほどこの国に古くから仕えてきたクロイツ一族に、この国の最愛になって王族全員の子を生むと言われた事を話しました。
「ごめん!それ俺の所為だ!」
勇者が気の毒そうに謝ってきました。とっても悲しそうな顔をしていますから勇者にすればいい話ではなかったのだと思います。
「俺?原因が貴方?」
だから思わず理由を聞いてしまいました。
「話し方、日本にいた時と同じでいいかな?君は元日本人の記憶があるんだろう。普通に話したい。」
勇者と言う事で、差別でもされたのでしようか?力がありますから扱いが難しいとでも思われたのかもしれませんね。
「それは構いませんが、原因が貴方にあるとはどんな意味でしょうか?」
普通に喋れる人がいなかったのですね。それも気の毒です。本に書いてあった事が、物語ではない勇者の日常だとしたら不幸としか思えません。
「話が長くなるけどいい?」
中に侍女長が入って来なければいいですが、そんなに長くは無理でしょうね。
「外で見張ってる、侍女長に気付かれない範囲でお願いします。」
例え呪いでも、勇者に力をもらっている一族ですから油断はできません。
「腹が立った俺が掛けた呪いみたいな物だよ。召喚されて戦争を彼方此方の国に仕掛けたんだよ。悪い国を倒してくれ!と頼まれて。でも違った、悪いのはこの国だったんだ。俺は騙され沢山の人の命を奪った、俺を好きだと言っていた侯爵令嬢は、本当は王子様が好きで二人に裏切られた!利用する為の色仕掛けに見事に騙されたよ。それと、俺を親友だと言って騙したのがクロイツ一族だ。」
「今は最愛を守るのが一族に宿命と聞きましたが。」
「ははは、俺が言ったんだよそんなに二人が好きなら永遠に守ればいいと!勇者の力を使いの呪いの言葉と共にクロイツの男に掛けた。自暴自棄になっていたから深く考えずやった事だよ。」
勇者に罪は問えませんわね。無理やりこの世界に召喚され、誰もいない世界で優しくされれば信用しますわ。それを裏切られれば自分の中の世界が終わったと、感じた事は仕方のない事だと思います。
でも、巻き込まれたおばさん一家と子供達は守りたいですから、勇者に助けてもらうしか方法がないのは残念です。虫のいい事を言う私は最低の人間かもしれません。
「私、この国を出て巻き込まれたおばさん達一家と静かに暮らしたいのですが、助けてもらえますか?」
それでも守りたい者の為には、手段を選んでられないのですから私も勇者から見れば悪人と変わらないのかもしれないですね。自分の望みを叶える為に眠っていた人を起こしたのですから。
「協力するよ、俺の所為もあるからね。しかし随分長く眠ってたんだな。」
六百年程だと思います。本には保存の魔法が掛かってましたし日付がかいてありました。
「昔と変わらない姿なんですね。本の絵と一緒です。」
本当に年を取らないのだと見れば実感しますね。表紙をめくった一枚目の絵姿にそっくりです。
「勇者特典でね、不老不死なんだ。死ぬ事もできず生きているのも嫌になって眠っていたが、……あの呪文を言える人と会えるとは思わなかったな。」
ものすごく懐かしそうで切なそうな顔をしていますね。日本語で書いてありましたので、この世界の人には読め無いと思いました。
「前世の記憶を思い出して、懐かしくなって取って置いたのですが役に立つとは思いませんでした。」
何が役に立つか分かりませんね。無駄だと思っても手放せなかったのですからこれも何かの縁ですね。
「自分のやった事の後始末はさせてもらうよ。自己紹介がまだだったな、神崎洸夜俺に任せてくれ。」
そう言って決意を固め、真剣な表情で私に名前を教えてくれました。
「ありがとうございます。私はダリアと言います、神崎君よろしくお願いします。」
私は、勇者の事を神崎君と呼ぶ事にしました。そう呼ぶと嬉しそうにしていますので、昔前世の世界で呼ばれていたのだと思いました。例え私より六百年以上年上だろうが若い時の記憶のまま眠っていたのですから君付けで呼ばせてもらいます。この世界では君呼びはしませんから、余計に嬉しかったのだと笑顔見て思いました。勇者と呼ばれて、まともに名前では呼ばれなかったのかもしれませんね。




