第10話:誰が為の理想郷-Who is an Utopia of a sake. -
※小説家へなろうへ移植する際、エキサイト翻訳の英文追加を行っております。
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・2015年5月7日午前2時8分付:行間調整、前書きコンパクト化
5月18日午前10時、綾瀬エリア+葛飾区の一部エリアを使用する形でアイドル・クラッシャー2の本戦がスタートした。
前日に決定した第1回戦の対戦カードは、以下の通り。
〈チーム・アリス〉(予選8位)対〈チーム・レギオン〉(予選1位)
〈チーム・メガブレイド〉(予選4位)対〈イージスAI&ハルト〉(予選2位)
〈イージスAI&水上〉(予選6位)対〈チーム・パンツァー〉(予選7位)
〈チーム・ランスロット〉(予選5位)対〈チーム・トルーパー〉(予選3位)
対戦カードに関してはハンデがあるのでは…と言われていた。しかし、チームメンバーの数やメンバーの強さなどを考慮した上での組み合わせと運営は発表する。
その一方で、組み合わせにIKS47の上層部が進言したと思われるような物もあったのだが、これに関しては却下される事になった。
対戦カード決定後、第1回戦の2試合が同時にスタートし、その後に残り2試合、準決勝が午後と言う予定になっている。
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〈第1回戦ハイライト〉
〈チーム・アリスVSチーム・レギオン 勝利:チーム・アリス〉
この試合に関しては大波乱が起こる。何と、レギオンのリーダーであるレギオン本人が試合直前に不在と言う状態になったからだ。
最終的に、虎の覆面をした人物がリーダー代理として参戦する事でレギオン不在の穴埋めをする事に。本来のリーダーが不在の場合、サブメンバーの補充が認められる。
それでも、メンバーの数は100対250で人数はレギオンの方が1.5倍差で有利。しかも、副官クラスのメンバーが強豪ぞろい。
しかし、人数で大差が付いているのならば…とチーム・アリスは助っ人を投入して勝利を収めた。
〈チーム・メガブレイドVSイージスAI&ハルト 勝利:ハルト〉
メガブレイド側も数人のメンバーを入れ替えての試合となった。一方でハルトは単独参戦だが、修理および補給が不可能と言うハンデがある。
今回は本戦と言う事もあって、特別に修理及び補給能力を持ったコンテナを試合エリアに配備する事で修理および補給を可能にした。
メンバー数は300対1という事で、観客や周囲の評価は圧倒的にメガブレイド優勢だった。だが、実際に試合が始まると別の意味でもワンマンゲームと言う展開となった。
何と、5分でメガブレイドのリーダーを発見し、最速撃破をしたのである。最終的には、チーム・メガブレイドがリーダーの行動不能で敗北する流れになった。
〈イージスAI&水上VSチーム・パンツァー 勝利:水上〉
こちらもハルト同様に、試合エリアに修理及び補給能力を持ったコンテナを配置するというルールになった。しかし、メンバー数は1対5と言う事で、短期決戦も予想された。
ところが、実際に蓋を開けると、心理戦とも言うべき展開になっていたのだ。前半はイージスが残りライフ30%を割る所まで追い詰めるも、修理ユニットを発見して修理した事で勝負が振り出しに戻る。
それでもイージスの攻撃を見切り、更には技量でカバーするようなシーンもあったのだが、最終的にはイージスに個別撃破されるという流れになった。
試合の方は30分、試合終了後には温かい拍手と歓声が周囲を包んだという…。
〈チーム・ランスロットVSチーム・トルーパー 勝利:チーム・ランスロット〉
チーム・ランスロットは紫のイージスも投入する方向になったが、メンバー数的な関係でハンデルールは適用しないという事になった。
メンバー数は100対100だが、イージス1体だけで50体は撃破できるという周囲の予想を覆すかのような展開には観客も驚いていたようだ。
最終的には、イージスが撃破したのは20体程度に。それ以上撃破しようとした所で、赤騎士がトルーパーリーダーを追い詰めて勝利を収める。
ある意味で赤騎士の本気を見る事が出来た試合でもあった為、観客からは「試合時間としては短かったが、面白い物を見る事が出来た」という感想が多い。
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準決勝を前にした午前11時30分、準決勝は午後1時開始となる。
「さて、仕上げと行くか」
黄金色のSF系パワードスーツを準備し、ある作戦を実行しようと考えていたのはクラウド=ノエルだった。
彼が完成させたパワードスーツ、それはインフィニティ・ピースに存在した設計図から作り出した物。それに加え、別の切り札も用意しているという展開もある。
「チーム・レギオンは手筈通りに敗北したようです。談合や無気力試合とも判定されていないので、何とかなったようです」
別のアイドルグループの女性がノエルに報告をする。どうやら、彼女も今回の作戦に参加しているようだ。
「どちらにしても、我々が行う事はひとつだけだ」
そして、ノエルはパワードスーツの最終調整に立ち会う。その一方で会場の外では…。
「BL勢の侵略を許すな!」
「海外がBL規制をする前に歯止めを!」
「全てを消滅させようというクラウド=ノエルは、コンテンツ業界から撤退せよ!」
試合会場では、何かを訴えながらIKS47・チームUと試合を展開しているチームがある。何と、チーム・IKS47反乱軍と表示されている。
「反乱軍? これって、どういう事なのよ」
上条麗菜は、この試合の様子を見ていて何か疑問が浮上していた。
本来、IKS47同士でマッチングが組まれるという事はない。これは、八百長等の観点を踏まえての運営側の処置とも言われている。
しかし、今回はIKS47反乱軍とチーム名を掲げているが、その蓋を開けてみると九音玲二サイドのIKS47関係者だったのである。
少し前に行われた集会で九音はクラウド=ノエル打倒を呼びかけていた。そして、その結果としてアイドル・クラッシャーにBL勢が本戦進出するのを阻止していた。
もちろん、その反動で一部チームが使用していた不正行為やチートも明らかとなり、50チームから上位8チームが本戦へ進むというルールへと変更されたのである。
実際の報道では50チームと言う部分が取り上げられておらず、普通に〈8チームのみ〉と報道されている為、予選落ちした42チームがBL勢絡みなのでは…とも疑われている現状もあった。
「これは、どういう冗談だ?」
チームUのリーダーと思われる男性も、反乱軍に関しては疑問を持っている。上層部の指示なのか、それとも単純に裏切りなのか…。
「チーム・クラウドさえ倒せれば、全てが終わる。そこをどいてもらおうか?」
反乱軍のリーダーと思われる人物が叫ぶが、周囲にはそんなチームが本戦に残っていたのか…と疑問が浮上していた。
「どうやら、踊らされていたのはIKS47も一緒みたいね」
試合会場に乱入したのは、メイド服には不似合いと思われる特殊なグローブとブーツを装備した女性だった。身長は177CM、黒髪のロングヘアという特徴には覚えがあるのだが…。
「あのメイド服は、チーム・アリスの?」
「彼女がチーム・アリスの助っ人だったのか」
「どういう事だ?」
その人物が現れると、周囲が衝撃に包まれた。本戦にも進出したチーム・アリスの助っ人が、この場に乱入する意味があるのか?
「あきら? これはどういう事なの」
思わず麗菜は叫んでしまった。上条あきらは、彼女の妹でもある。その事実は、今まで隠していたのだが…この場でネタバレをしてしまった。
「心配はいらないわよ、姉さん! アイドル戦争を起こした張本人、それは本戦会場にいるから」
あきらの発言を聞き、麗菜は驚く。まさかと思っていたが、全ての元凶がアイドル・クラッシャーの本戦会場にいる…。
「仕方がないわね。本戦に水を差す勢力には、ここで退場してもらいましょうか? イージス!」
麗菜は、あきらと一時的な共闘をする事で第3勢力を何とか会場から追い払おうと考えた。
そして、黄色のイージスを呼び出す。イージスは、ステルスを解除して上条姉妹の10メートル先のエリアに出現、さっそくレールガンでIKS47の大型ユニットを機能停止に追い込む。
「始めますわよ、お姉さま」
「ちょっと、姉さんはあなたでしょ?」
そんなやりとりもありつつ、上条姉妹はアイドル・クラッシャーを守る為の戦いを始めた。
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〈準決勝ハイライト〉
〈チーム・アリスVSイージスAI&ハルト 勝利:チーム・アリス〉
準決勝では、助っ人である上条あきらが不在になると思われたが、ギリギリの所で参戦と言う事になった。
前半はイージス優勢と思われるバトルだったのだが、その後はアリスとあきらのコンビネーションアタックに苦戦する形でハルトは敗北したのである。
試合後、ハルトとイージスは姿を消したのだが…何処へ向かったのかは定かではない。
〈イージスAI&水上VSチーム・ランスロット 勝利:水上〉
ランスロットの方は、紫のイージスを温存して決勝で使用するという作戦に出た。
それが裏目に出たという訳ではないが、開始早々に赤騎士がイージスへ単独で挑むという展開は予想外の流れだったに違いない。
10分近い一騎打ちの末、力尽きたと思われる赤騎士が敗退し、リーダー撃破という結果で水上が勝利した。
この結果、午後2時から決勝戦が行われる事になった。
対戦カードは、チーム・アリスVS水上&オリジナルイージス。裏ギャンブルでは妥当な組み合わせと言う事で倍率は低めらしい。
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同日午後1時30分、会場では準決勝が行われている中で、ノエルはアーマーの最終調整を無事に終えて、スーツを装着しての起動テストを行っていた。
『これだ。これこそ、超有名アイドルを超える真の力…。アイドル戦争で封印されたリアルチートの力だ!』
ノエルは何かに操られているかのような表情で、標準装備のブレードや内蔵火器の性能を確かめていた。
『残された時間は少ない。国際流通正常化組織は偽物だったが、別の市場開放を求める組織も近日中に来日するらしい』
そして、ノエルは今被っているテスト用メットを外し、別のメットに手を付ける。そのメットデザインは、チーム・レギオンのレギオンが使用している物に酷似していた。
『日本の商品が全て輸出禁止になる前にBL勢を根絶させ、市場流通を正常化する事…。その為にも次期総理大臣の座が必要なのだ』
レギオンのメットを被ったノエルはテストを行っていた大型キャリアが展開したカタパルトから発進し、会場へと向かう。
実は、ノエルが本戦会場へ向かわなかった理由、それは新型レギオンスーツの調整に加え、ある物を解析する事が理由だったのだ。
『待っているがいい…。アイドル・クラッシャーを制するのは、この私だ!』
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同日午後2時、遂に熱狂が冷めない中で決勝戦が始まった。
『東側エリアより、チーム・アリスの入場です!』
実況を担当していると思われる人物のコールと共に、東側エリアから姿を見せたのは翼羽アリスとメイド部隊のメンバー、そして、上条あきらの姿も確認出来る。
「まさか、こんな所で会う事になるなんて…」
水上沙夜が決勝に進出した事に対し、上条あきらは一言だけつぶやく。
「みんなー! 遂に決勝戦だよ! 最後まで応援よろしくね!」
アリスに関しては、深刻な表情をしている上条あきらとは反対に、ポジティブ思考と言わんばかりの表情をしている。そして、周囲の声援に答えるかのように手を振った。
『西側エリアより、オリジナルイージス、水上沙夜の入場です!』
コールと同時に上空から西側エリアに降りてきたのは、オリジナルイージスだった。そして、着地したイージスのコクピットハッチが開く。
「私も手加減はしない。全力で挑む!」
ハッチから姿を見せたのは、パイロットスーツにメットを脱いだ水上だった。一言喋った後は、コクピットの中へと戻り、ハッチも閉じる。
同時刻、観客席とは別の場所、葛飾区側の大型映画館では、特別にアイドル・クラッシャーの試合を中継していたのである。
「始まったみたいだね」
2000人は入りそうな大型シアターで中継を見ていた鉄仮面の人物は、何かを見極めるとすぐに外へと出てしまった。
先ほどまでは本戦を含めて試合を見ていたのだが、試合に興味がないという訳ではないようだ。
この映画館で公開されている中継映像は無料で視聴できる。こうした取り組みをしている映画館は150にも及ぶ。
新作映画も不況の為にアイドル・クラッシャーの無料中継に解放したのか…と言うと、そうした理由ではない。
これも、政府主導による経済活性化の一環と言う事らしい。これが表向きの目的なのか、それとも別の目的を偽装する為の物かは定かではない。
大型シアターを出た、黒髪ロングヘアーで背広という外見の男性は、人が少ない事を確かめてから鉄仮面を被る。
「奇遇だな」
鉄仮面を被った後、何かを購入してから映画館を出ようとした彼を止めたのは、狼の覆面をした九音玲二だった。
「あなたが、ここに来た理由は?」
「私が映画館へ来てはいけないのか?」
「そういう意味で言った訳ではない。目的は違うのだろう」
「分かっているなら話が早いな、クリス…。いや、チーム・メガブレイドのリーダー、メガブレイド」
九音にとって、彼の正体はお見通しだった。その正体とはチーム・メガブレイドのリーダーである、メガブレイド本人だったのだ。
「何故分かった?」
「本戦に出ていたメガブレイドはフェイクだ。武装の仕様が違っている時点で、知っている人物ならば見破れるだろう」
九音は、本戦に出ていた方の武装が予選と違っていた事で偽物だと見破っていた。
「武装の変更、カスタマイズは認められている。単純に、武装が変わっただけで正体が違うと見るのは早計だ」
「明らかに遠距離武装主体だった部分で、すぐに分かった。近接武装は、お前の得意分野だろう」
メガブレイドは近接武装がメイン、遠距離はサブだったのだが…本戦に姿を見せたメガブレイドは遠距離メインで、しかも使い慣れている。
「遠距離慣れをしていない人間が精密射撃を行おうとすれば、必ずブレが出るだろう。そのブレも一切ないということは、射撃に手慣れた人物だ」
九音は更に、メガブレイドが急に遠距離へ転向するとは考えにくい事、それに加えて仮にメガブレイド本人だったと譲ったとしてもチートを使った疑惑が浮上する…と。
「そこまで分かっているのならば、話を聞こうじゃないか。おそらくは聞きたい事は芸能事務所側の動向―」
外の喫茶店で話を聞こうと考えていたメガブレイドだったが、映画館の外でも中継映像が流れており、そこで流れた映像を見て焦り始めていた。
「あれは、クラウド=ノエル?」
九音はクラウドがチームを作って参加しているという話は聞いていたが、決勝に進んだとは一切聞いていない。
「急がなければ、完全に手遅れになる」
そして、駆け足ではなく速足でメガブレイドは映画館を出る。
「手遅れ!? 芸能事務所がスケジュールを早めたか? 迂闊な事を―」
九音は芸能事務所が何かを話していたのを思い出し、メガブレイドに続くかのように映画館を後にする。
ちなみに、何故に速足だったのかは【映画館内では走らないでください】と注意書きがあったからである。
同日午後2時5分ごろ、バトルが始まってイージスが索敵をしている途中で事件は起こった。
《未確認パワードアーマーが接近中。識別は、レギオンです》
「そんなバカな事が…! あのレギオンは偽物だったの?」
イージスAIと上条あきらが同時に驚いた。2チームの目前に現れた黄金のパワードアーマー、その正体はレギオンだったのだ。
その証拠に、ライオンモチーフのレギオンメットは本戦に登場したレギオンと全く同じ、持っているレギオンブレードも一致している。
『この茶番も、いよいよフィナーレだ。日本のコンテンツ産業は、一度リセットするべきなのだと確信している』
ノエルが指をパチンと鳴らすと、彼の周囲には飛行ブースターを装着した超有名アイドルが複数人現れたのである。
「この光景って…」
アリスが、超有名アイドルの大軍勢を見て何かを思い出そうとしていた。
《間違いありません。彼は、アイドル戦争の続き…つまり、第2次アイドル戦争を起こそうとしています》
イージスAIは一つの結論を出すのだが、水上は目の前の光景を見て言葉が出ずにいた。
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次回予告
決勝の会場に乱入したクラウド=ノエルとリアルチートアイドル。
ノエルの真の目的とは、超有名アイドルをリアルチートアイドルの力で無力化し、超有名アイドルをアカシックレコードから消し去る事にあった。
その時に突如として現れた赤騎士、彼が剣を向けた相手は周囲の予想を超える人物だったのだ。
そして、赤騎士は遂にその正体を他のメンバーにも明らかにする。果たして、赤騎士の正体とは?
次回、連鎖のアイドルソング『浮かび上がった世界線』
「超有名アイドル商法の連鎖を断ち切れるのは、誰なのか?」
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