第1話:アイドル戦争から得た物-The thing obtained from idol war -
他の世界線シリーズ(なろうへ移植済の物及びpixivオンリーの物を含めて)に出てくる用語等も出てきていますが、チェックが必須という事ではありません。チェックしていると思わずニヤリと思うシーンもいくつかある…という範囲になります。
今回は、今までとは違って専門用語は控えめになるような気配もしますが…。
※相変わらずですが、超有名アイドルネタやタイムリーネタ等が非常に多い傾向もある為、苦手な方はブラウザバック等を推奨いたします。今作は至る所にタイムリーな時期ネタ等を含んでおります。タイムリーネタがあるのは、世界線シリーズでは恒例行事の気配でもありますが。
※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、フィクション扱いでお願いします。あくまで虚構という方向で…。
※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。
※この作品は『pixiv』に連載中作品の移植となっております。向こうがリアルタイム更新に対して、『小説家へなろう』ではDVD及びBlu-ray収録扱いとなります。
※小説家へなろうへ移植する際、エキサイト翻訳の英文追加、一部つぶやきの台詞変更を行っております。
>更新履歴
2015年5月6日午前2時4分付:行間を含め、大幅改稿。内容に変更はありません。
今から5年前、日本ではアイドル戦争と呼ばれる争いがあった。
一般的に言えば戦争は血で血を争う的な要素があるのだが、このアイドル戦争は血を流さない無血戦争とも言われている。
この戦争では、主に超有名アイドルがリアルチートとも言える財力を駆使して他のアイドルを買収するという展開を見せた。
戦争と言う単語を使う事には、もっと別の理由もあった。
実際に用いられた物が、別のサバイバルゲームで用いられるような武器も使用されていたのである。
武器に関しては殺傷力と言う物は一切ない。それらが確認されただけで、超有名アイドルが一気に犯罪者集団になってしまうからだ。
この戦争は、1週間位で終わる物だと誰もが思っていた。
しかし、抵抗勢力が多数存在した事、超有名アイドル側が使用した武装の中にはチートの域を超える物も存在した為に事態が悪化したのである。
アイドル戦争は大きくニュースで取り上げられる事はなく、週刊誌に掲載されたり、テレビのバラエティー番組で特集を組まれる位だった。
これは注目度が低いという訳ではない。実は、別の理由があったと言われているが真相は不明である。
そして、大きな動きを見せたは6月の事だった。
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西暦2009年6月1日午前11時25分頃、北千住上空では飛行ユニットを装着した女性アイドルと男性アイドルが激突するという展開が起きていた。
「アイドルは自分達だけで十分よ。あなた達の時代は終わったの」
「お前達の人気は金の力で得た物であって、本当の人気アイドルではない!」
フリルが特徴な女性アイドルと、赤いスーツを着ている男性アイドルが言い争っているようにも見える。それ以外にも、黒、青、緑、金色のスーツ姿の男性アイドルも確認できた。スーツに関してはメット以外にも微妙なデザイン違いがあり、金色の方はシリーズが同じだが、まるで違うヒーローを思わせる。
男性アイドルの方は5人組で、戦隊物を思わせるスーツに飛行ユニットを装着しているような感じのメンバーである。彼らは同じアイドルユニットとして活動しており、普段はスーツを着て活動する事はない。スーツを着る事になったのはアイドル戦争からである。
実際は1対5で男性アイドル側が有利という流れのはずだが、女性アイドル側の方が数で圧倒していた。その数は100体近くにも及ぶ。どうやら、無人機の類を使っているようだ。
お互いのアイドルグループが使用する装備は、明らかに〈アイドル以外の勢力〉が使用するような物とは比べ物にならなかった位に、その威力が凶悪な武器を使用していたのである。地球消滅クラスとまではいかないが…。
アイドル戦争と呼ばれるコンテンツ消耗戦、それは超有名アイドルの握手券商法や炎上商法が独占禁止法に違反していると〈男性アイドル側〉が告発したことから始まったとされている。
しかし、ネット上では【どちらもやっている事に変わりはない】や【海外は超有名アイドル商法に対して大幅な規制を考えている】という発言が相次いだ。
つまり、この戦争は超有名アイドルが自分たちこそが日本を支配するにふさわしいと考え、男性アイドル側に戦争を起こしたという構図としてネット上では認識されている。
実際、どのような事が理由で戦争が起こったのかは誰にもわからない。
一つだけ言える事は、超有名アイドルが金の力で次々と企業買収を進め、日本を超有名アイドルによる支配国家にしようと考えていた事だった。
【これは、国会が正常に機能せず、超有名アイドルの言いなりで政治が動く予感】
【超有名アイドルのリーダーが総理大臣と言う事になるのか?】
【何としても、この戦争を終わらせないと大変な事になる】
【大量消費型コンテンツの存在に対して疑問を抱く勢力も出始めている。今回のアイドル戦争は、間違いなく何かを予感させている】
【更には、自分のお気に入りのカップリングを広める為だけにランキングを独占させようとする勢力も便乗して動き出しているだろう】
【超有名アイドルが共倒れしても、今度はBL勢が日本を影から支配するのは間違いないだろう】
【それによって脅迫事件やイベント中止が相次いでも、『超有名アイドルファンが起こした』と言う事にすりかえられるのは確実】
【正常なコンテンツ業界を作り出す為にも、こうした暴走するファンを全て一掃し、更にはガイドラインを改めなければいけない】
ネット上でも構図や事件のきっかけは別にして、このアイドル戦争が日本のコンテンツ業界で何かを変えるきっかけになるのは間違いないと考えているネット住民が多かった。
「アイドルの単語自体を商標登録し、自分達が世界規模で莫大な利益を得ようとする。あのプロデューサーが考えそうなことだ」
男性アイドルは次々と周囲にいる無人機の機能を停止させていく。どうやら、実際は女性アイドル1人だけが戦闘を行っていたようだ。無人機の方は遠隔操作の類だろうか?
「だが、これ位で勝ったと思うな!」
機能が停止した無人機が再び動き出し、男性アイドル達に襲いかかろうと準備をしていた。そして、彼らに銃口が向けられた、その時だった。
「どういう事だ? 無人機が次々と撃墜されている」
この光景を見ていた男性アイドルが驚いていた。何と、再起動をしようとしていた無人機が10秒足らずという速さで次々と機能停止していったのである。まるで、自分達が使っている技術であるチートのようでもあった。
「何だ、あのロボットは?」
上空で戦闘中だったアイドル達の前に現れたのは、全長が約5メートルという近未来と言うよりもロボットアニメに登場しそうなデザインをした1体のロボットだった。エッジを効かせたような物ではなく、シャープなデザインが印象的である。
「化け物か? あの威力は、どう見積もっても超有名アイドルの持っている武器とケタが違いすぎる」
ブルーの男性アイドルも、武器の威力には自信がある人物でさえも言葉には若干の震えが見て取れるようだった。
「あの機体も超有名アイドル側の差し金だというのか? 金の力を利用して、軍事転用が容易にできるロボットまで投入するのか!」
男性アイドルのリーダーと思われる赤いスーツの人物が女性アイドルに向かって叫ぶ。
「それは、お前達のロボットじゃないのか!?」
女性アイドルの方は、今回のロボットが男性アイドル側の物ではないかと考えているようだ。お互いにロボットは初見と言う事らしいが、状況が状況の為に責任の押し付け合いのようにも見える。
一方、コクピット内では…。
《無人ターゲットのせん滅を確認しました。周囲には有人ターゲットのみが存在します》
『どちらにしても、金に糸目をつけないような事務所のメッキアイドルを放置するわけにはいかない』
このようなやり取りが行われていた。ロボットは2人乗りではなく1人で搭乗しており、もう一方はロボットのAIであると考えられる。
全長は5メートルだが、コクピットのスペースを考えると…そんなに狭い感じはしない。若干だがスペースにも広さを感じる。2人乗りは無理だが、ボディビルダーのような人物が1人で載ったとしてもスペースに余裕がありそうだ。
操作する為のコントールシステムがタッチモニターと7つの鍵盤、中央モニター脇にある2本のスティックという物で、ロボットを動かすというよりはゲーム感覚を思わせる。
何故、このようなシステムになったのかは不明だが、何かの設計図を発掘してデザインしたような感じを思わせる。それをコピーした結果、一般的なロボットと違うようなコクピットが完成したのかもしれない。
このロボットの名はイージス、同系統のロボットは確認されていないが、何処かの勢力が密かに開発されていた物だろうか?
イージスに乗っているのは、身長170センチ、若干細身の黒いノーマルスーツを着ている男性である。メットを被っている為に、顔は確認する手段はない。口元などは見えるのかもしれないが…。
女性の声は、イージスAIと呼ばれる自立思考型超AIでもある。しかし、超AIは開発中止と言う事をニュースで報道されていたような気配が…?
《有人ターゲットのせん滅は推奨されていません。相手の戦力無力化を推奨します。繰り返します―》
イージスAIの声がメットに響いている。どうやら、敵勢力のアイドルを殺傷する事は認めている訳ではないようだ。
『芸能事務所が同じようなアイドルを生み出さないという保証はない。ならば、アイドルの1組や2組、消えてなくなったとしても問題はないだろう?』
《その指示には従えません。これは、計画立案者の命令でもあります》
『イージスの力を示せば、超有名アイドルも芸能事務所も自分達が行ってきた事に対する代償を支払わせる事が可能だ』
《人命を軽視するような事を起こす事は、BL勢力と全く同じ事の繰り返しになります。その指示には従えません》
『超有名アイドルの芸能事務所は莫大な金が手に入れば、その後の事はノータッチだ。例え、メンバーのブログが炎上しようともお構いなしだ。そんな連中に日本のコンテンツを動かす力はない!』
《それでも、力によって言論や自由を弾圧する事は憎しみの連鎖を生み、それこそ流血のシナリオをたどる事になります》
『それは日本の話ではない! 今ここで超有名アイドルを倒さなければ、日本は鎖国時代に逆戻りする事を意味する!』
男性パイロットとイージスAIの議論が続く。そして、平行線である事を判断したパイロットはタッチパネルをタッチし、ホーミングレーザーのアイコンを指定した。パイロットの方は超有名アイドル商法に関して敵意をむき出しにしており、両者をせん滅させる事が目的で、この場所に現れたのかもしれなかった。
『日本を鎖国時代へ逆戻りさせる超有名アイドルは、ここから消えてなくなれ!』
ロボットからの声を聞いた超有名アイドルは混乱していた。男性アイドルの方は逃げずにロボットに攻撃を仕掛けるのだが、その攻撃は全く効果がなかった。
「バカな! オリハルコン製のソードでも通じないのか!」
レッドがオリハルコンソードで切りかかったのだが、装甲に傷1つ付くような気配はない。
「駄目だ! ビームライフルも通じない。何て硬い装甲なんだ」
ブルーもブラックと共に援護射撃をするのだが、そのビームはイージスの装甲には全く効果がない。
「ならば、方法はこれしかない!」
金色のアイドルがイージスに向かって突撃をするのだが、数10センチ辺りまで近づいた所でホーミングレーザーの直撃を受け、そのまま地上へと落下していった。
「「「ゴールド!!」」」
ブルー、グリーン、イエローの3人が叫ぶ。そして、レッドは言葉にはできないがゴールドの無事をひそかに祈っていた。爆発などは確認できないので、何処かで助かっているはず…と。
『やったのか…超有名アイドルを?』
パイロットの手が震えていた。偶発的な事故とは言え、超有名アイドルの1人を倒したのである。しかし、倒したのは1人だけ。この場には、他にも多数の超有名アイドルの姿が確認出来る。
今まで彼らの商法を恨んでいた。それによって、アイドル破産をした人物を何人も知っている。その悲しみの連鎖を…絶った瞬間でもあった。
「よくもゴールドを!」
ブルー、グリーン、イエローの3人はオリハルコンソードでイージスに斬りかかるのだが、結果はレッドと同じ物だった。
「手を止めれば、自分がやられる!?」
女性アイドルの方は、手持ちのライフルでイージスへ向けて攻撃をするのだが、全く効果がないように見える。
『無様だな。金の力で頂点になったアイドルが、同じような力の前に絶望を見せられるというのは!』
そして、背中にある12枚のウイングを分離して、ファンネルのように周囲に存在するターゲットに向けて攻撃をする。
どうやら、あの時に大量の無人機を撃破した攻撃は、ファンネルによる射撃だったらしい。
『アイドルにリアルチートやメッキアイドルの概念は必要ない。これからのコンテンツ業界は、全ての人間にデビューのチャンスが訪れる、新たな世界になるのだ』
パイロットは、タッチモニターに表示された〈ディーヴァシステム〉と書かれたアイコンをタッチする。
次の瞬間にはイージスの装甲がスライドし、両腕、両足、腰アーマー、肩アーマー、ボディの一部分から姿を見せたのはプレート型スピーカーだった。
《ディーヴァシステム 起動》
そして、システム起動と同時に流れ出したのはイージスAIの歌だった。歌と呼べるかどうかは不明だが、曲は間違いなく完成されたトランス曲調の物である。
『超有名アイドル、コンテンツ業界の歪み! この時代から永遠に消えてなくなれ!』
この瞬間、他のエリアで交戦していた超有名アイドルの武装は全て動かなくなり、事実上の超有名アイドルが敗北をした瞬間でもあった。
一方で、北千住のヘリポートと思われる場所では、アーマーが大破した状態のゴールドがいた。
「結局…チートアイドルは存在がチートと言われたイージスに敗北した。これは芸能事務所も…ショックだったかもしれない」
意識を取り戻したゴールドことクラウド=ノエルは、自力で自分の所属する芸能事務所へと戻ったのである。
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午後1時、他のメンバー4人は北千住の芸能事務所へ帰還、負傷しつつも彼らの前に姿を見せたノエルを見て、4人は驚いたようでもあった。
「ノエル、無事だったのか」
イエロー、グリーン、ブルーの3人は行方不明と思っていたノエルが無事だった事に喜んでいるようでもあった。
「色々とすまなかった。あの時の油断が、このような結果になるとは…」
ノエルは4人に対して謝罪をする。しかし、レッドの方は若干だが不満の表情を見せていた。
「ノエル、あの時に勝ち目がないと判断して逃げたな?」
レッドはノエルが、あの時に敵前逃亡を図る為に意図的にイージスへ突撃したのでは…と考えていた。
「レッド、よすんだ! アイドル戦争ではヤラセや談合と判断できる敵前逃亡をすればグループ全体にペナルティが入る。それはお前も分かっているだろう」
レッドとノエルの口喧嘩に横槍を入ったのはイエローだった。確かに、彼の言う事も一理ある。
「今回はイエローの顔に免じて許してやる。だが、談合バトルを行えばどうなるか…お前も分かっているだろう」
レッドはメットを外すことなく、事務所の会議室へと向かった。
「何かがおかしい。アイドル戦争自体、超有名アイドルを締め出す為だけに計画されたのではないか…」
今までの戦いや今回のイージス、他にも疑問点は多い。それを踏まえ、今ならば辞めるタイミングには最適だとノエルは考えていた。
会議室ではノエル以外の4人と事務所関係者が集まってミーティングを行っていた。そして、そこで重大な事を告げられる。
「それは、芸能界全体の安泰を考えて言っているのですか!?」
メットを外し、黒髪のセミショート、赤い両目という男性、九音玲二が事務所関係者に抗議をする。
「超有名アイドルは例外なく解散が決定される事になった。今後は新しいアイドルを育成する事になるが、そこに君達が入るスペースは存在しないだろう」
事務所関係者の話をまとめると、今回のアイドル戦争に関係した超有名アイドルを全て解散、今後再編成されるアイドルにはアイドル戦争の関係者は入れないという物だった。
「既に警察が女性アイドルグループの家宅捜索を始めている。我々が警察に逮捕されるのも時間の問題だ」
「警察に捕まる前に、アイドル戦争の関係者を締め出すという事ですか?」
「締め出すとは言っていない。一時的なリストラと考えてもらっていい」
「結局は小手先だけの変更だけで警察の強制捜査を切り抜ける…と言う事ですよね!?」
九音と事務所関係者の議論は続く。その中で、既にノエルはグループを抜ける事を決めており、先ほど受理されたのだという。
「ノエルが…辞めるのか?」
「どういう事なんだ?」
「俺は、アイドルと言う物が信じられなくなってきた」
ブルー、イエロー、グリーンの3人はノエルがグループを抜けるという話を聞き、アイドルとしてやっていく自信を失いつつあった。
「アイドルを辞めるのか? 今まで正規グループに入る事も出来なかったメンバーの気持ちはどうなるんだ?」
九音は3人を何とか引き留めようと説得をするのだが、やはりノエルが外れたという事によって自信を失った影響もあり、九音の話を聞く事もなく辞表を提出した。
10分後、ミーティングも終了し、その頃には別の芸能事務所にも警察の強制調査が入ったという話が九音の耳にも入った。
「悪いのは超有名アイドルではない。悪いのは、超有名アイドルに全ての責任を押し付けようというBL勢だ。あの連中を根絶出来ていれば、アイドル戦争は起きなかった」
そして、九音も荷物をまとめて事務所を後にした。
九音が事務所を出た10分後には、この事務所にも強制捜査が入り、そこでアイドルCD購入詐欺や悪質な握手券商法、炎上商法等に関与したとして事務所関係者が次々と逮捕されたという。
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同刻、足立区の工場、そこには複数のイージスと同じ機体が置かれていた。そして、そこへ1体のイージスがパイロットと共に帰還する。先ほどの戦闘に現れた機体である。
「これで、本当に超有名アイドルによる悪質商法は根絶できるのか?」
男性パイロットがメットを外し、前面にあるイージスのコクピットハッチが開く。銀色のセミショートヘアに青い瞳の少年である事が分かる。
「若干の不安材料はあるが、問題はないだろう」
ツナギ系とは違うような作業服に帽子を被った男性スタッフの一人が、パイロットに声をかける。そして、パイロットはイージスから降りてきた。
「本当に根絶できるか不満がない訳ではない。だが、超有名アイドルだけではなくBL勢も―」
彼がどのような理由でイージスに乗る事になったのかは不明だが、その表情は満足と言うような物ではなかった。
「そちらに関しては泳がせるらしい。あくまでも、今回の問題となったのは超有名アイドルだ」
スタッフは彼にスポーツドリンクを手渡す。そして、パイロットは渡されたスポーツドリンクに口を付ける。
「倒すべき敵は、無数に存在する。ある勢力には味方に見える勢力も、別の勢力にとっては敵にもなる。超有名アイドルを根絶しただけでは、全ては終わらないはず―」
パイロットは改めてイージスの方を振り向く。あれだけの攻撃を受けたにもかかわらず、装甲に傷1つ付いていないのはリアルチートと呼ぶべきなのだろうか?
機体を降りてから数分後、彼はスタッフから衝撃的な事実を告げられる。
「工場を閉鎖する? どういう事だ」
パイロットは彼の話を2度聞いて、それでも信じられないようだった。
「ハルト、お前の言いたい事は分かる。しかし、あれだけの力は超有名アイドルにコピーされる可能性が否定できない。それを踏まえての判断だ」
スタッフは、彩月ハルトに分かるように閉鎖の理由を説明した。
ディーヴァシステム、超AI、未知の解明できていない超文明の技術、それらを利用して完成させたのがイージスである。
このイージスは量産化する予定で準備が進められていた。しかし、実際に起動出来たのはハルトの使用する1台だけだった。
どうやら、スタッフが発見した超文明の設計図が不良品だったのか、それとも別の要因でイージスが動かなかったのか…その理由は分からない。
どちらにしても、イージスの存在は昼のニュース等でも大きく取り上げられており、廃工場の位置が特定されるのも時間の問題。
その為、イージスを量産していた工場を閉鎖、更に量産型を含めたイージスは別の工場へと移動する事になったのが、工場を閉鎖する理由である。
「あの技術をコピーする? 金の力を使ってでも、イージスに傷一つ付けられなかった超有名アイドルが?」
ハルトは断言していた。あれだけのオーバーテクノロジーを簡単にコピーできるはずはない。それも、イージスに大敗した超有名アイドルには不可能な行動である…と。
「ハルト、一つだけ言っておく。この日本には絶対と言う物はない。コピー出来るはずもないイージスの技術も、それに近い物を完成させる可能性は否定できない」
「確かに絶対と言う物は存在しない。だからこそ、超有名アイドルが未来永劫まで1番人気でいる事が不可能なように、イージスのオーバーテクノロジーをコピー出来ると断言できる証拠もない」
スタッフの水を差すような発言も、ハルトにとっては全く聞こえていないようだ。
「工場の閉鎖は決定事項だ。イージスも別の場所に移送する事になるだろう」
スタッフはハルトにイージスの起動キーとパイロットスーツの返却を求めた。
数分後、ハルトは私服に着替えて、起動キーであるカードとパイロットスーツはスタッフに渡して工場を立ち去った。
「いずれ、超有名アイドルとは違う勢力が同じような暴挙を行う事は決まっている。しかし、その時にイージスが切り札にならない…では話にならないのだ」
スタッフは悔しがっていた。イージスに対して対策を組まれ、更なるリアルチートが現れる事はスタッフにとっても耐えがたい物だったのである。
「技術革新が起こるのは避けられないだろう。それでも、イージスだけは守らなければいけない」
それから1ヶ月後、工場は閉鎖され、イージスの一部は廃工場内へ隠すという事になった。それ以外の技術や設計図は別の会社が保護する事を約束してくれた。
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次回予告
時は流れて西暦2012年、日本政府は『アイドル・クラッシャー』という新たなエンターテイメントを立ち上げ、その一方で九音はIKS47という超有名アイドル解放組織を立ち上げた。
再びアイドル戦争を思わせる戦いが始まろうとしている中、一人の少女がイージスを操って圧倒的な力を見せつける。
あのイージスは本物なのか? ネット上でも噂になり、次第には例の勢力を動かすまでに波及していく…。
次回、連鎖のアイドルソング『イージス、再起動』
「超有名アイドル商法の連鎖を断ち切れるのは、誰なのか?」
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まさか、小説家へなろう版では若干よりも多い加筆修正を行う事になろうとは…別の意味でも驚きました。
今回は特殊ケースの為、2話以降は微妙な修正のみに落ち着く方向になるかもしれません。