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 マップを透過モードにして、ボス部屋へと広人達は進んだ。そこに到るまでの道筋は、ユナが自ら赤い線を書き込んだ地図を共有という方法でPTメンバーに開示していた。ゲーム攻略情報のほとんどはユナが担当していたのだが、その正確さと詳細に至っては極廃レベルと言えるものだろう。特にマグナスキルについての情報は簡単に公表されるものではないし、一部の人々だけが秘匿しても誰も責めることが出来ない類のものだからだ。

 マグナスキルの種類や数について、運営は一切の情報を公表をしないと断言していた。それに付け加えてこうも言っていた。「一体のNMDネームドモンスターから得られるスキルは一つとは限らない」

 もちろんスキルはNPCから購入したりノーマルMOBを狩ることで得ることが出来るものもある。それらは純粋にゲームを楽しむだけなら充分と言えるものだろう。だが最強のスキルと装備を持つという夢は、プレイヤー達にとって最大の魅力であった。

 過去に広人はユナに聞いたことがある。どこで情報を手に入れてくるのか?と。それに対してユナは笑いながら答えた。…内緒と。

 

 狭い洞窟を進んだ先には広い場所があった。直径50メートルはあろうかという円形のホールで、天井は高さ10メートル以上はありそうだった。お目当てのボス部屋はその奥となる。

「戦闘はここで行います」

「何もないところだね。充分すぎる広さだけど、なんだか物足りないな…」

 広人がそう言うとユナはくすりと笑い、ボス部屋を見てくるように促した。

 言われるまま広人はボス部屋の入口に立ち、顔だけを突き出すようにして中を覗いた。

 その部屋だけがやや暗めになっていて、奥にはボスらしきMOBのシルエットが確認できた。

「なんだよ…これ」

 部屋の暗さに目が慣れてくると、ボス部屋の異様な光景が浮かび上がってきた。ボスを取り巻くように地面には無数の卵がいたるところに有り、天井には繭と思われる物体がぶら下がっていた。卵や繭は不規則にそれぞれが時折左右に揺れ動いていた。

 背筋に悪寒を感じ、広人はユナの元へと駆け戻った。

「HP残り75%でボスは悲鳴を上げます。それに呼応して…」

「やっぱ自由に動けるところっていいな、サクッといきたいよねサクッと」

 広人の言葉にユナは声を上げて笑った。

「あれ?まだ始めてないの?」

 リナとカナが揃って到着した。

「やはり主役抜きじゃ話になりませんよね~、ほ~っほっほ」

 高笑いを上げるリナの隣で、カナは満面の笑みを浮かべていた。

 女子キャラ三人のうち、カナだけがゲームキャラらしい服装をしていた。胸元に赤い大きめのリボンがついた黒色のメイド服、長髪の黒髪には広人とお揃いの猫耳。

「レア出まくり」

 リナは近接物理攻撃、広人は盾役から遠距離物理攻撃を担当し、ユナが回復担当でカナは魔法による支援攻撃を担当していた。カナを除く三人はアイテムスロットのほとんどが装備で埋め尽くされるため、ドロップ品の管理は軽装で済むカナの役割となっていた。

「結構レアスキル出たみたいでさ、相場より少し安めにして捌けばいい感じになりそうだって」

「おー」

「帰ってからの楽しみが増えましたね。とりあえずここ済ませちゃいましょうか」

 ユナの言葉に三人は頷いた。

 

 広人は武器を弓に切り替え、ボス部屋の入口から少し入ったところで狙いを定めた。弓矢による攻撃は標的以外のMOBのリンクを招かないからだ。さらに安全確保のため、放ったあと標的に矢が当たる前に移動を開始することがポイントとなる。

 弓から放たれた矢は、静かな風斬り音をまといながら奥へと真っ直ぐに進んでいった。広人は移動しながら武器を剣と盾に持ち替え、広場中央でボス部屋のほうに向き直った。

 ふた呼吸ほどの間を置いて、ボス部屋から蒸気のような湯気が溢れ出し広場に充満していった。

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