俺は逃走します
万里はそれなりに美形で気さくなんですよ。
表立ってはモテないが、バレンタインの時は山盛りのチョコを貰う隠れモテ男、それが万里なのだ!
万里が才花と話をしている時、一階と三階で異変が起き始めていた。教室から勢いよく飛び出していく女子生徒、職員室から飛び出していく女教師。手には綺麗にラッピングされたチョコを持ち、ぎらついた目で走っている。
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廊下で立ち話をしていた男子共を撥ね飛ばし、或いは踏みつけていきながら、女子たちは万里の居るB組の教室目指して爆走していた。止められる者は居ない
『B組・教室』
地面を揺らす音と叫び声が段々と俺の耳に聞こえてくる。机に腰掛けていた才花が怪しい目で俺に視線を向けてきた。その目を止めろ、顔が(俺が見た感じには)綺麗だから余計に迫力がある。
「そろそろ準備しなよ、喰われたいの?」
「分かってる。てか、俺は食い物じゃねぇ」
「万里って柔らかくて美味しいんだよね……」
「涎垂らすな、獲物を見る目で見るな。タノムカラミナイデ」
昔、コイツに喰われた記憶が蘇ってくる。言っておくがお楽しみタイムではない。断じて違うからな!! コラそこ!ガッカリするな!
布団に押し倒した俺を旨そうに食べるコイツの顔は、恍惚としていて妖しい魅力を放っていたな・・・間近で見るものじゃない
俺は恐怖のあまり動けず、親父は生暖かい目で俺と才花を見ると外へ逃げ、お袋は「あらあら、ふふふ」と笑って台所に向かい、春海は真っ赤になって「みみみみ、見てないから!」と言って逃げ、辰己はにやけながら俺たちを見つめ(直後、春海に耳を引っ張られて消えた) 結局、才花が満足するまで俺は喰われたのだった。因みに俺は上半身を露出した状態で気絶したらしい。脱がしたのは勿論才花だ。
そんな悪夢と不意に蘇った感触に鳥肌が立ちながらベランダに速攻で向かい、ロープを手すりに頑丈に頑丈に縛り付け、ロープの逆の方を一階に垂らす。背後の音がかなり近づいているようだ、ロープを掴んでベランダから一階に降りていく。
逃走開始だ
※才花視点
万里に脅しを掛けたらあの時みたいな顔をしたよ。ああ・・・、思い出したら涎が止まんない・・・。ペロリと舌嘗めずりをすると万里の顔が青ざめた。気絶するぐらいだったからよっぽど恐かったんだろうな、うひひひひ♪
あたしがクスクス笑ってる間に万里は逃走準備を済ませていた。ロープを伝って一階に逃げた万里にあたしは小さく手を振る
「頑張ってね、万里♪」
因みに万里は才花に襲われた経験から『才花が空腹になったら兎に角、何か食べさせる』という教訓を学んだのでした。