表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

マイと放課後

 1学期最後の授業は社会だった。でもなんの話をしていたかは覚えていない、寝ていたからね。昼休みにマイとの交渉に成功したその安堵感でぐっすりだった。学校ではケーちゃんなんて呼ばれることもなくなったからOKだ。


「ケイジ! 帰ろうぜ!」

 こいつはトモノリだ。いろいろあって高校に入ってから親友と呼べるヤツだ。

「明日から夏休みだな~! どうする? 明日どこ行く? つーか祭りだな! 何時集合?」

「俺は夕方から手伝いだから、お前一人で行ってこいよ」

「えぇ~、マジかよぉ。あれか、実家の手伝い?」

「そうだよ。何をやるのかは知らねぇけど、親父が来いって言うしさ」

「もしかして兄貴さんの代わりじゃねぇ? しばらく見てないし」

「いや、昨日帰ってきた」

「おぉ~、じゃあ、今年も楽しい祭りになりそうだなぁ~!」

「楽しくねぇって」

「兄貴さんが暴れるからか?」

「そうだ」

「まぁまぁ、それも祭りのイベントと思って楽しめばいいじゃない? どうせマイちゃんとは会うんだろ? 楽しい祭りじゃねぇか! 親友の俺とは会わないくせに~、うらやましいな~、いいな~。なんで俺には彼女がいないの? なんで、なんで?」

「……スケベだからな」

「ケイジほどスケベじゃない。超紳士だよ、もはや男爵だから!」

「意味が分からねぇよ、それに俺はスケベじゃない」

「ほんとに? マイちゃん見ても何とも思わないわけ? 思わないとか言うなよ、あんなに可愛いんだからよ! なんでマイちゃんはお前と付き合ってんの? お前は……さほどイケメンじゃないし。俺のほうがカッコよくない?」

「少なくともお前よりか俺のほうがカッコいい」

「なんだか、むなしくなってきた。嗚呼、俺も彼女が欲しい! やべ、用事が会ったんだわ! お先!」

 やかましいほど明るいヤツでさ、あいつの真剣な顔を見るのは女に告白する時だな。まっ、そんな真剣な顔でも俺のほうがイケメンだけど。フラれても笑顔で戻ってくる。そこがいいんだ。


 下駄箱に行ったらマイがいた。そうだった、一緒に帰る約束してたんだった! トモノリめ、邪魔しやがって。

「ケーちゃん、遅いよぉ」

「わりぃ、トモノリと話してた。ねぇ、ケーちゃんって呼ばないって約束したよね?」

「……もしかして恥ずかしいの?」

「は、恥ずかしいわけ無いだろぉ~」

 女の手前で恥ずかしいなんて言えるかよ。素直に恥ずかしいと言えればいいんだろうけど、まぁ、言えないよな。

「でも、今は……2人っきりなんだよ?」

 放課後というのに玄関には誰もいない。部活が盛んな高校だから帰る生徒が少ないのは知っているが、このタイミングで2人だけになるとは思わなかった。

「じゃケーちゃん、帰ろ?」

 可愛い。胸が締め付けられるようだ。どうしてマイは恥ずかし気もなく言えるんだ?


 校門を抜けて王子駅とは反対に歩いて行く。俺んちは学校から十分ぐらい歩いて、明治通りから脇に入ったところにある純和風の二階建て一軒家だ。うちの前は片側1車線の車道だが、車はほとんど通らないから静かなもんだ。この車道を渡ればマイが住んでいるマンションが建っている。

 家の前まで来るとマイは俺んちの門を眺めている。

「やっぱりさ、ケーちゃんちって大きいよね」

「そう? マンションのほうが大きいじゃん」

「そうじゃなくて! 庭付き一戸建てじゃない。私も住みたいな~」

 ……一緒に住もうって言ったらプロポーズになるんだろうか。


「古い家だから鴨井は低いし、ドアじゃなくて襖だし。古~い旅館みたいだぜ? 畳だし。フローリングとか憧れるわ。一軒家ってのもいいもんじゃないぜ?」

「それって自慢?」

「え? そ、そんなつもりは無いって」

「私は住んでみたいのにさ」

 難しいやり取りだ。マイが一軒家に憧れているのなら、そこに住んでいる俺が何を言ってもダメなんだろう。

「なぁ、明日来るじゃん? 家の中を隅々まで見ていっていいから、自分の目で見てみな~」

「う~ん、ケーちゃんの言うとおりかもね。それじゃ、明日のお昼に来るからね」

「わかった。よろしく~」

「じゃあね~!」

 マイは狭い車道を渡っていった。いくら車が来ないといえども、信号があればいいんだけどな。

 ん? 俺んちは自動ドアじゃないよな? 門が勝手に……。


 門が開ききると兄貴が立っていた。

「兄貴!?」

「ケイジぃ~、帰りか?」

「おぉ。制服着てるんだからわかるだろ? で、兄貴はスーツ着てんだから出かけんだろ?」

「おっ、当たりだ。じゃあ、俺も当ててやろうか? マイちゃんと一緒に帰ってきたろ?」

「!? なんで、わかんだよ?」

「後ろにいるから。ね? マ~イちゃん?」

 あっ、マイが戻ってきていた。今のやり取りを見ていたんだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ