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主役と日記

「ケーちゃん、お祭りって楽しいね」

「そうか? こんなことになるならもういいわ」

「カッコよかったよ?」

「でも、一緒に出店周れなかったじゃん。悪いな~って思って」

「ケーちゃん……」

「ちょっと! お二人さん! 俺の事を忘れちゃいないですかね? 彼女もいない男の前でイチャイチャしないで貰えます?」

「トモノリ……それはひがみだよ、別にイチャイチャしてないからね」

「出た出た、リア充発言。ケイジ~、俺にも彼女を紹介してください!」

「うるさいな~、もう向こう行けよぉ!」


「おう、溝田ケイジ~」

 番長か、副番もいるけども、2人とも半被が似合うな~。

「お前を上に乗せてやったことを光栄に思っていいんだからな。先輩が後輩のために肩を貸すなんて、なんて俺はいい先輩なんだろうな」

「いい先輩は自画自賛しませんって。つーか、兄貴に付き合ってもらってありがとうございます」

「な、なんだ急に! ……ここだけの話だ、俺は毎年、憧れていた。神輿の上に乗るなんて大胆不敵なことをやったお前の兄貴さんにな。今年は担ぎ手として参加できて嬉しかったんだが、まさかお前を担ぐとは思わなかったぜ」

「すんません」

「いいのいいの、兄弟を支えることに番長は嬉しかったみたいだよ」

「宮堀! 黙ってろ! と、とにかく、2学期からは番長学を教えてやるからな! 覚えておけよ!」

 なんだよ、捨て台詞見たいだな。


「ケーちゃん、番長学ってなに?」

「マイは知らなくっていいことだ」

「ケイジが番長になるってことだよ」

「トモノリ! お前、なんで知ってんの?」

「ケーちゃん! 番長になるの! なんで!」

「マイ、ちょっと待ってて! トモノリ!」

「なんでって、宮堀先輩からメールが来た。まぁ、いろんなところから周ってきたメールだけど、たぶん全学年が知ったんじゃないか。つーかメールしたじゃん。マイちゃんにも」

 スマホの電源は切れていた。電池切れかも。

「ほんとだ。見てなかったから気がつかなかった。ケーちゃん! なんで番長に!」

「えっと……番長に負けちゃったから。も、もうこの話はなしだ! よ、よし。足も治ったから帰るぞ!」

「ちょっと~、ケーちゃん!」

 まいったな、そんなに知れ渡っているのか。2学期からどうなっちまうんだ。


 その後は、トモノリが帰る間際に番長たちにつかまって、巻き込まれないうちにマイを連れて神社から出た。マイとは家の前で別れて、マイの浴衣姿も見納めと思ってマンションに消えていくその後ろ姿をずっと見ていた。

 充電してからスマホを起動させると十数通のメールが来ていた。着信し過ぎて電池が切れたんだろうか。案の定、番長になるのかという問い合わせで、一括送信で『よろしく』って返してやった。

 とにかく今日は日記に書くことがたくさんありそうだ。1日にこんなにイベントがあったのも初めてだし、今日中に書ききれるかな。振り返っても本当に長い一日だった。

 こんなことになるとは思ってなかった。書き出しはこれにしようようかな。

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