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結果と歴史

「おっ! てことは番長をやるってことか? おい、番長くんやったな。俺のおかげだけど」

 はぁ……番長か。そんなことをやるつもりもなかったのに。自分が弱かったせいだな。今回は勝てると思ったのになぁ。昔の兄貴にだったら間違いなく勝っていた。それは実感できる。

「ケイジ。顔、平気か?」

「ん? あぁ、平気だ」

「よしよし、泣いてないみたいだしな」

「泣かねぇよ!」

「さてと、番長くん、君たちがケイジに番長とは何ぞやということを今後みっちりと教えてやってくれ。それからケイジは君たちと匹敵する実力がある。この俺が保証するが……実力不足と思った時は気兼ねなく俺のところに来てくれ。いいな」

 なんだろ、番長たちは昔みたいに『押忍』って言いそうな雰囲気だな。


「さてと、神社に行くぞ。ケイジ、乗せてってやるよ。番長くんたちも学ラン脱いでから祭りに来るといい。酒でも……いや、まだか。なんかおごってやるから実行委員席に来いよ」

 俺は番長達に別れの挨拶することなく、兄貴によって車に乗せられた。連れ去られたような気分だけど、そういえばベンツ売るんじゃなかったっけ。

「あっ! 自転車で来てたんだ。降りてくよ」

「いいから、いいから。後で誰かに持ってこさせるって。信、出せ」

「はい」

 おいおい、自転車置きっぱなしになるんだけども! 校門前の自転車を通り過ぎていくとは思いもよらなかったわ。


「ケイジ、ちょうどいい機会だから言っておくわ。これから先にお前と喧嘩、殴り合いになることもないだろうし。……お前は知らないだろうが、ちょうどお前と同じ頃、高校に入ったばかりだった。あの高校は荒れていてな。親父から溝田橋組を作る前に実力を見せてみろって言われて、俺は番長になった」

 なになに、急に語り出したけども。どうでもいい話だわ。やっぱり無理にでも降りておくべきだった。

「その当時では珍しかった、1年生にして総番を張ったんだ。ここから俺の伝説は始まっていたわけだ。そう思うと、俺は持ってる人間だったんだな」

「兄貴、その話長い?」

「他校とも喧嘩の毎日だった。2年になった頃には次第に王子周辺から十条、赤羽、浮間まで俺の支配は広がった」


 うわ、陶酔してるわ。聞こえてねぇよ。

「3年になる時は豊島区、文京区との抗争が始まりかけたんだ。たんにプライドだけで大戦争が始まりかけたんだ。だが、その無益な戦いを事前に止めたのは俺の番長としての最大の功績だった。我ながらあれは素晴らしかったなぁ。なぁ、信」

「あの頃の組長は荒れてましたよねぇ」

「なぁ、兄貴! 何の話をしてるんだ!?」

「これから番長となるお前に、兄の偉大さと番長の心意気を教えておいてやろうかと思って」

「兄貴の自慢話にしかなってなかったし」

「久しぶりに体を動かして、昔を思い出したんだから。お前も兄貴孝行と思って話し相手ぐらいになれって」

「一方的に話してんじゃん」


「まったく。わがままな弟だなぁ。そういえば祭りの準備は終わってんのか?」

「兄貴が押しつけていったから俺が終わらせた」

「まっ、当たり前だな。……やべぇ、法被忘れたわ」

「もう神社に着いちゃいましたよ。俺、戻って取ってきますよ」

「いや、家に戻ろう。取ってきても神社近くに車置いておけないんだからよぉ。失敗したなぁ~。車も置いてきちゃおうぜ。ケイジは降りてっていいぜ」

 やっと解放される。

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