表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/20

番長と副番長

 ドラマや漫画で描かれる番長の定番キャラと言えば、体が大きく、力もある、いわゆる粗暴、粗野にして頭が弱いというパワー型パターン。もしくは頭脳明晰でメガネをかけているのに喧嘩はめっぽう強い、危険な匂いもするけど女の子も惚れちゃうイケメン番長パターン。そして俺の目の前にいる番長は長ランの前者だ。その隣にいるのは制服をスマートに着こなす後者だ。なんなんだ、この王道設定は。


「溝田ぁ、よく逃げずに来てくれたな、嬉しいぜ」

「俺は律儀でね。5時ピッタリだ。これを最後に、あんたに絡まれるのも終わりだ。しかし……舎弟を呼んでいるかと思ったけど、1人しか集まらなかったのか? それとも舎弟は夏休みか?」

「男と男の勝負はタイマンだ。真剣勝負に場外のガヤはいらない! そうだろ?」

「意外に番長らしいじゃねぇか」

「俺は番長だ」

「……で、じゃあ、隣にいるのは誰なんだ?」

「こいつはタイマンの見届け人だ。知らないのか? 副番長だ」

宮堀(みやぼり)だ。はじめまして、溝田君」


 副番長か。しゃべり方までして外見通りというか、キャラ通りだな。体の大きい番長、体の細い番長、2人の外見は相反する。こういうタッグはドラマで王道中の王道じゃないか、やっぱり現実がこうだからドラマができるのか? なんだか2人を見ていると青春ドラマを見ているようで戦う気が失せてくる。

 もしかして、受験勉強のために引退したという3年生の番長と副番長もこの2人みたいに王道のキャラだったんだろうか?

 ちょっと待てよ。ていうことは今のこの状況が王道ならば、俺は……よくありがちな上級生に反発する生意気な1年生!? 


「おい! 溝田ぁ、聞いてんのか! 3年の元番長は受験のために高校総番長を俺に譲って引退された。俺も来年には誰かに番長を譲らなければならない。その番長を探している」

「引退の話も、番長が代々続くことも知っている。それと新入生の何人かが番長になろうとして、あんたに挑んで負けたってことも。だけど、副番がいたのは知らなかった」

「確かに俺に挑んできたが実際にやったのは宮堀だ」

「副番長を倒せない奴が番長と戦えないでしょう。先に言っておきますが番長は僕より強いですよ、だから僕は副番長なんです」

 副番長がニヒルに笑ってら。なんなんだ、このキャラ通りの人間は!


「宮堀と戦って勝てた奴はいなかった。そして、半年も経つと自ら番長になろうという気合の入った奴もいなくなる。そうなるとこっちから探しに行くわけだ。入学当初からお前には目を付けていたが、まさか伝説の番長の弟とは知らなかったぜ」

「溝田君のお兄さんはこの高校の伝説の番長だ。未だに語り継がれているんだ。ならば弟の君も伝説になれると思わないか? 番長の資格があるとは思わないか?」

「……番長、副番、期待をさせるようで悪いんだけど、いや、勝手に期待をしているのが悪いんだけど……俺と兄貴に血の繋がりはないんだ。世間的に言う義兄弟ってやつで、だから俺は番長の資格はないし、なるつもりもない」


 番長、副番ともさすがに驚いたみたいだな。希望を失ったような顔をしている。そんなに俺に期待していたのか?

「そ、それは本当かい? 溝田君。番長になりたくないから、だ、騙そうったってそうはいかないよ?」

「わざわざ、こんな嘘をつくわけがないでしょう? あんた達は結構情報を持ってるみたいだけど、さすがに家庭内の事情までは知らなかったか。……どうする番長、それでもタイマン張るか?」

「……溝田ぁ、俺はお前と勝負がしたいんだ。伝説の番長の弟というのは関係ない。まぁ、宮堀は浪漫とか言ってたけどよぉ」

 副番は首を振ってなんだか落胆している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ