祭り準備と番長
確か5時に校庭に行かなければならない。番長を待たせてもいいんだけど、なんていうか俺は律儀だから約束は守っちゃうんだよな。めんどくさいが番長の相手をそろそろしてやろう。入学したばっかりは何もなかったが、どこで目を付けられたのかだいぶ絡んでくるようになった。さすがに俺も絡まれてばっかりは癪だ。これを最後にケリをつけてやる!
なんて心の中で決意を固めていても、今やっているのはたこ焼き屋の組み立て。環境と心情がまったくのミスマッチだ!
たこ焼き屋の親父は鉄板の用意をしながら聞いてきた。
「そういえば、兄貴くんは祭りに来るのかい?」
「たぶん今年も来ます」
「そうかぁ、助かるな~。去年なんかさ、いくつかたこ焼きがいくつか余っちゃってね、兄貴くんが全部買って行ってくれたんだよ。道行く人たちに全部奢ってたんだけどね、助かっちゃったよ」
「そうですか」
「なんか悪いことしちゃったな~と思ってねぇ。今年は余らせないようにするつもりだからさ」
確かに去年の祭りの後に、そんな話を聞いたな。
そのあと、神社までの道路に出る屋台の前をうろうろしながら手伝いが必要な店を探した。いろんな店を手伝い中でチョコバナナやアンズ飴の店主に、たこ焼き屋と同じように祭りの最後には兄貴が残っている商品を全部買っていってくれたと言われた。だが、それだけじゃない、他にもいくつかの店からも言われた。屋台の品物と言っても全部をまとめれば結構な額になるとは思うんだが、その金はどこから出てきたんだろう。
本当に兄貴は何をしているのか、どうやって稼いでいるのか気になるな。
今は4時半。そろそろ学校に行かなきゃいけないが、もう屋台も大丈夫だろう。屋台が勢揃いして祭りらしくなってきた。この設営の半分は俺が建てたものだ。体の疲労を吹き飛ばすぐらいの充実感がある。いいウォーミングアップになったし、喧嘩は気合だ。精神が充実していれば十分動ける。
境内に向かうと神輿が用意されていた。大きな神輿ではないが、装飾はしっかりしている。俺も日本人ってことだな、日本に生まれてよかったとつい感じてしまう。
町内会長を探し出して、仕事が終わったこと報告して神社を後にした。親父の姿は見えなかったけど、たぶんお祓いでもしてもらっているじゃないだろうか。神輿を担ぐ前にお祓いを受けるのが親父のしきたりだと、子どもの頃に聞いた。ようはゲン担ぎね。神主さんとも知り合いだからこんな忙しい祭りの日にもお祓いをやってくれるんだとさ。
神社から自転車で15分ぐらい。夏休みなのに学校に行くとは思わなかったな。でも、これで番長との関係は最後だ。どうせ番長のことだから舎弟がたくさん控えていることだろう。袋叩きにされることも覚悟しよう。それとも少年誌みたいに何人か戦い抜いてから、番長と言うボスが出てくるのか。どちらにしろ今日はしっかりと喧嘩してやろう。
実は、喧嘩は苦手じゃない。俺には兄貴がいる。この学校で伝説の番長と呼ばれた兄貴がね。喧嘩の作法や戦い方を教わったし、兄貴とタイマンを張ったこともある。過去2回とも俺の負けだったが、前回はもう少しのところまで行ったんだけど、その時は気合負けした。今なら勝てる気もするけど、兄貴はまだ手を抜いていたような気がするんだよなぁ。
さて、学校に着いたが校門は開いてない。だが、そんなことは関係ない。乗り越えちゃえばいいんだから。夏休みだし、教師も事務員さんもいないだろう。もしかしたら防犯装置とかあるかもしれないけど、まぁ、大丈夫じゃないかな。
誰かに見つかって喧嘩を止められることもない。ここは外といえども密室状態だ。罠を張るには十分な場所だ。校庭まで50mぐらい。決闘の地に向かうという感じは緊張感を増していい感じだ。兄貴とタイマン張った時よりも気合が入っている。
さてと、校庭には2人しかいない。片方は番長だけど、もう一人は誰だ? 舎弟もいない。わざわざ校舎内に隠れるだろうか? これはどういうことだ。




