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昼食と祭り準備

 何かを忘れているのはちょこっと気になるが、とりあえず今は仕事を先にこなしてしまおう。そうすればひょんな拍子に思い出すだろうさ。

 さて、祭りと言っても大きな神社じゃないから、大勢の人が来るってわけでもない。むしろ地区の祭りというぐらいだ。一応、神輿はあるけどね。

 地元の他の祭りと比べても、王子稲荷の規模じゃない。せいぜい七社神社ぐらいかな。それでも屋台の数はうちのほうが少ない。今年も例年通りの規模だと思うし。でも、それでも手伝いとなると少々骨が折れる。

 去年までは兄貴が手伝いに行ってたから知ってるけど、兄貴は祭りの翌日はダウンしていた。体が軋むって。もちろん設営の手伝い以外に理由はあると思うけど。馬を買ってから祭りに間に合うんだったら、それを見れるかもしれないな。


 夏と言えば花火と祭りって気もするけど、その準備をする方の気持ちも考えながら祭りを楽しんでもらいたいもんだ。こんなに暑いのに体を動かして汗だくになって準備して、祭りに来てくれる人たちの笑顔を考えればそれ苦も気にならない--なんて思うほど、手伝いに駆り出された俺の心は広くはない。まだまだ若造なんでね。

 それにさ、祭りの次の日だ。とんでもない量のゴミが出る。まぁ、それでも飛鳥山の花見の後ほどはでないけど。とにかくゴミ屋さんが持って行ってくれるけど、それまでにゴミの分別をして用意しておくのも俺たちなんだぜ、こういうときばっかりはモラルの問題ってのを若いながらも提唱したくなるぜ。


 歩きで祭り会場に着くと、もういくつかの屋台があった。チョコバナナにアンズ飴、焼きそばにお好み焼き。飲食が多くて、射撃やクジ引きは禁止されたんだ。射撃は反射した球が危ないということで、コルク球だけどね。クジ引きに関してはギャンブルの一環と考えられてなくなった。誰が抗議したのかも知らないけどこうやって自由が奪われていくのかな。いや、時代の進化って肯定的に考えたほうがいいのかな。


「おう、ケイジ君! 久しぶり」

「大きくなったなぁ!」

「今年は兄貴じゃないんだな、あとで手伝い頼むよ」

 参道を通る間にいろんな屋台の店主から声がかかる。俺もなかなか有名人なんだぜ。まぁ、親父とか兄貴のおかげ……せいってのもあるんだけど。溝田組の力かな。

 神社の境内に入るとテントが用意あって、半被を着た人たちが集まっている。もう酒を飲んでいるのもいると思えば、それは親父だった。町内会長の隣に座っていた。


「お、ケイジ君、待ってたよ~!」

「こんちわっす」

 周りの大人たちにも会釈程度はしてテントの中に入る。町内会長は子どもの頃から知っているし、毎年お年玉をもらっている。なんでも親父と同級生とか、同窓生とか。ちょっと忘れたけど。俺が生まれた時には泣くほど喜んだと町内会長は酔っぱらうといっつもその話ばかりする。

 

「さっそくで悪いんだけどさ、屋台のほうを手伝ってほしいんだ。ほとんど終わっていると思うだけど、店主たちもジジイになってきてるからさ。なんでも若いのが集まらないみたいでね。ケイジ君が来てくれて助かるよ~」

「親父に呼ばれてきただけですって」

「それでも来てくれてるんだからさ~。溝田さんもいい子を持ったもんだねぇ」

 親父は顔を赤くしてうなずくだけだった。もう酔っている。


「じゃ、ちょっと行ってきます」

「だいたい5時ぐらいには終わりにしてくれていいから。そっからは各自の店の責任ってことでね」

「5時っすか。わかりました」

 スマホで時間を見れば3時前になっていた。5時って……。

「あっ!」

「どうした? ケイジ君」

「い、いえ、なんでもないです。ちょっと思い出したことあるだけです。じゃ、行ってきます!」

 そうだよ、5時って言えば番長に呼ばれていたんだ! タイマン張ってやんなきゃいけねぇんだった!

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