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第四話 救えなかった夜 草案

共同生活が始まってから、約2年が経っていた。

俺は顔料屋としての基盤を少しずつ固めていた。

電磁石を使った砂鉄の分離方法は、この時代の人々から見れば「不思議な石を使った秘法」のように映るらしく、質の良い酸化鉄顔料は画家や鍛冶屋の間で少しずつ評判になり始めていた。

目立たない範囲で、慎重に。

フランチェスカは変わらず家事をこなし、時折俺の作業を静かに見守っていた。

彼女の視線は日に日に熱を帯び、俺もそれを無視できなくなっていた。

しかし、そんなある夜。

街の外れにある俺たちの小さな家に、粗暴な男たちが押し入ってきた。

「プレーラティの娘がここにいるって聞いたぜ?」

三人の男たち。

一人は街の有力な商人の息子で、残り二人はその手下らしかった。

どうやらフランチェスカの実家が昔、借金を抱えていて、その返済を巡る因縁があったらしい。

「出てこい、フランチェスカ! お前はもう、逃げられねえんだよ!」

男の一人が叫びながら、俺の作業場を荒らし始めた。

俺はすぐに状況を理解した。

この時代、女性の身分や家族の負債は、現代の感覚では想像もつかないほど重い。

法的に守られるはずもなく、力関係と世相がすべてを決める。

フランチェスカは震えながら俺の後ろに隠れた。

その肩を抱きながら、俺は必死に頭を回転させた。

(……銃をもう一度使うか?)

しかしすぐに思い直した。

この街でまた銃を撃てば、俺の存在が一瞬で目立ってしまう。

顔料屋として細々と生きていくという、これまでの戦略が全部瓦解する。

最悪の場合、異端審問にかけられる可能性すらある。

俺は歯を食いしばった。

代わりに、持っていたわずかな銀貨をすべて差し出した。

「彼女はもう、俺が面倒を見ている。借金の件は話をつけよう。 これで勘弁してくれ」

男たちは銀貨を奪うように受け取ったが、満足しなかった。

「金だけじゃ足りねえよ。この娘は俺たちのものだ」

彼らはフランチェスカの腕を掴もうとした。

その瞬間、彼女が初めて声を上げた。

「……やめて! 私はもう、この人の……!」

しかし男たちは聞く耳を持たなかった。

結局、俺は力ずくで彼女を引き離されるのを、ただ見ていることしかできなかった。

その夜、フランチェスカは連れ去られ、翌朝になってようやく解放された。

彼女の頰には打たれた痕が残り、瞳からは光が失われていた。

俺の前で、彼女は小さく震えながら言った。

「……あなたは、力があるのに。

あの銀色の光で悪魔を倒したのに……どうして、私を助けてくれなかったのですか?」

その言葉が、胸に深く突き刺さった。

俺は救えなかったのではない。

この時代の法と力関係と世相が、俺を縛っていただけだ。

でも、そんな理屈など、傷ついた少女には何の慰めにもならない。

フランチェスカの瞳に浮かんだのは、失望と、深い悲しみ、そして……裏切られたような色だった。

その夜、彼女は初めて俺の顔をまっすぐに見ずに、毛布にくるまって背を向けた。

俺はただ、暗い天井を見つめながら、静かに拳を握りしめていた。

この別離が、もうすぐ訪れることを予感しながら。

※備考

もう少し共同生活の描写や時間を伸ばしたい

プレラーティが未来技術に触れるためのエピソードが必要か。

あとこれでは足りない。全般的に再考。


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