食堂メニュー採用対決⑤ 結果発表
俺と美琴の勝負が終わり、いよいよ明日からゴールデンウィークが始まるという頃、俺たち三人は沖田先生から家庭科室にされていた。
「お前達、先日は食堂メニュー採用企画に参加してくれてありがとう。おかげで、想像していたよりもずっといいメニューが集まったと食堂の料理長が喜んでいたぞ」
そう言う沖田先生もいつもよりも表情が柔らかい。
「それで、今日集まってもらった用件だが……募集企画の結果が出た」
俺たちはゴクリと喉を鳴らす。
沖田先生は知らないだろうが、俺と美琴はこの企画で採用された方が負けた方に何でも言うことを聞いてもらえるという勝負をしている。
俺は大葉チーズとんかつを作り、美琴はヨーグルトポムポムを作った。
美琴のヨーグルトポムポムはかなりの完成度だったが、俺だって負けていないと信じたい。
さて、結果はどうなった……?
「結果は……大葉チーズとんかつとヨーグルトポムポム。両方採用だ。おめでとう」
採用。採用された! でも……
「先生、複数品採用されることってあるんですか?」
勝負の仕掛人である美琴が真っ先に質問する。
「私は一言も一品だけだとは言ってないぞ。食堂のメニューとして並ぶにふさわしい料理なら何品でも大歓迎だそうだ。だから、採用されたお前たちの料理はそれに値する素晴らしいものだ。胸を張るといい」
頑張った成果が報われ嬉しい気持ちが湧いてくると同時に、何だか急に肩の力が抜けていくのを感じる。
美琴だけは、なぜか悔しそうな顔をしていたが。
「良かった……。本当に良かったです。お二人のおかげで、料理研究部として初めての活動で良い成果を残すことができました」
今回の一番と言っていい功労者の桃瀬は、涙を浮かべながら、俺と美琴に満面の笑顔を見せた。
「こちらこそ、ありがとう、桃瀬さん」
「私からもありがとう。沢山お願い聞いてくれて、すごく嬉しかった」
家庭科室に和やかな笑い声が響く。
大葉チーズとんかつ、ヨーグルトポムポム。俺たちの誰か一人が欠けても、この二品は作り上げることはできなかった。だから、この二品は俺たちの絆の証しでもあるのだ。
今まで一人で料理を嗜んできた俺は、俺たちは、それが本当に嬉しい。
俺はこの幸せの時間を噛み締めるように、静かに湯呑みを口に運ぶのだった。
◆
「で、私たちの勝負のことなんだけど」
沖田先生が帰った直後、美琴が話を切り出す。
「お前……その勝負のことまだ覚えてたんだ」
「当たり前でしょ⁉ 誰が持ちかけた勝負だと思ってんの」
俺はふうっと息をつく。
「それで、二品とも採用されたんだから勝負は引き分けで良いんじゃないのか?」
「だめに決まってるでしょ⁉ いい、泰彦? 私は『採用された方が勝ち、負けた方が勝った方の言うことを何でも聞く』って言ったの。つまり、私たちはお互いに何でも言うことを聞かせられるんだよ」
何だそれ……そんなの絶対後付けだろ。
「はあ……。分かった、それでいいよ。で、お前は何を俺にお願いするんだ?」
俺が聞くと、美琴はビクッと身体を震わせ俯いた。
それから、前髪をくるくるといじり出す。
え? 今度はどうしたんだよ。
俺が戸惑い、桃瀬が俺たちの様子を静かに見守る中、美琴はゆっくりと俺に歩み寄る。そして、美琴は口を俺の耳元に近付け、近くにいる桃瀬にも聞こえないくらいの小さな声で、囁いた。
「明日、休みだから……私に付き合ってよ」




