食堂メニュー採用対決②
桃瀬は俺たちの応募するメニューを考えるのに三日間待ってほしいと言った。
この企画は俺と桃瀬、美琴と桃瀬でそれぞれ合作という形で提出することになっている。
そして3日後、桃瀬からメニューが完成したので家庭科室に集合してほしいと連絡があった。
俺は速攻で放課後の掃除を終わらせ、家庭科室に向かった。
中に入ると既に桃瀬と美琴がいて、お茶をしていた。
二人は俺に気づき手を振る。
「泰彦、遅いよー」
「勝野さん、こんにちは。どうぞ座ってください」
桃瀬に促されるまま、俺は彼女と向かい合うように美琴と並んで座った。
「さて、大変お待たせしました。今から、お二人の要望を踏まえて私が考えてきたメニューをお見せします」
そう言って桃瀬は、一枚のプリントを俺と美琴それぞれに渡してきた。
俺が桃瀬に頼んだのはとんかつだ。それに加えて、女性にも食べやすいとんかつにしてほしいとお願いした。
裏向きに渡されたプリントをひっくり返して、俺はメニューを見る。
メニュー名は大葉チーズとんかつ。
衣の中に大葉とチーズが入ったとんかつだ。
大葉を挟む事でさっぱりとした後味になり、脂っこいのが苦手な人でも食べやすい。それに加えて、チーズも入れることでコクが生まれ、食べ応えが出る。
そして、カツの上にはおろしポン酢をかけるようだ。ソースのかわりにこれを使うことで、揚げ物なのに最後までさっぱりと食べられる算段だろう。
俺は「女性にも食べやすいように」としかお願いしていないのに、男子にも喜んでもらえるような一品に仕上がっていた。
「凄いな……ありがとう桃瀬さん、こんなにも色々考えてくれて」
俺が礼を言うと、桃瀬はにっこりと笑う。
「気に入っていただけて良かったです。私も頑張って考えた甲斐がありました」
俺は、同じくメニューを渡された美琴を見た。
彼女はメニューを隅々まで噛みつくように眺め、溢れる興奮を抑えるように身体をふるふると震わせていた。
「凄い……凄いよ桃瀬さん! 私、結構沢山要望を言っちゃったんだけど、それが全部このメニューに入ってて、それにプラスしてもっと良くなる工夫もされてる! ホントにありがとう!」
身を乗り出して言う美琴に桃瀬は応える。
「こちらこそ、ありがとうございます。私も考えていてとても楽しかったですよ」
俺は美琴のメニューは見ていないが、どうやらあちらも桃瀬の手によって素晴らしいメニューが考えられたようだ。
美琴の興奮が落ち着いた頃、桃瀬は俺たちを見て、言った。
「残念ながら、私が活躍出来るのはここまでです。応募するには、実際にお二人が調理をして、それを動画に収めて提出しなければいけません。今回の勝負で私は中立の立場ですが、私はどちらも応援していますので、採用目指して頑張ってほしいです。よろしくねお願いします」
そう言って、桃瀬は俺たちに頭を下げた。
このメニューには、料理が出来ないが誰よりも料理に対して情熱を持っている桃瀬の想いが込められている。そして、俺は……その想いに応えたい。
「ああ、任せてくれ。絶対に採用を勝ち取ってみせるよ」
「言ったね。見ててよ泰彦。私だって、あっと言わせる料理作ってみせるから」
準備は整った。後は俺たちが桃瀬の生み出した構想を実現させるだけだ。
こうして、食堂メニュー採用対決の本番が始まった。




