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美琴とパンケーキ

「んん~美味しい!」

 美琴はメープルシロップとバターがたっぷりかかったパンケーキを口に運び、頬を緩ませた。

 

 ゴールデンウィーク初日の今日、俺と美琴は隣町の喫茶店にいた。

 あの勝負の後、美琴は「私に付き合って」と言った。もちろん、「お出かけに付き合う」という意味だった。おそらく他意は全くない。だって美琴だし。

 紛らわしい言い方をした美琴も美琴だが、一瞬勘違いしそうになったあのときの俺を殴りたい。

 そんな恥ずかしい記憶を振り払いながら、俺はパンケーキを美味しそうに頬張る目の前の女の子を見る。

 「旨いか?」

 「もちろん、すっごい美味しいよ。生地がふわふわで甘さもちょうどいい」

 美琴は、セットで頼んだカフェオレを一口飲む。

 「ところで、なんで今日はこの店に?」

 「この店、最近オープンしたばかりなんだけど、SNSで結構話題になっててさ。一度来てみたかったんだよね」

 なるほど、そういうことだったか。しかし、気になることもある。

 「せっかくの何でも言うこと聞かせられる機会なんだから、もっとわがまま言ってくれてもよかったんだぞ? これくらいだったら、言ってくれれば俺、フツーについていくし」

 そう言うと、美琴は目を細める。

 「ありがとう、康彦。じゃあ今度からはそうするね。でもこの喫茶店、学校からかなり離れてるからクラスの友達は誘いづらかったの。だから、今回は迷惑かけてもいい人にしたかった」

 「いや……迷惑じゃないよ。俺は美琴の頼みで迷惑に感じたことなんて一度もない。実際、このパンケーキ凄い旨いし、勝負だって俺は結構楽しかったぞ」

 俺は大きく切ったパンケーキに生クリームを乗せ、かぶりつく。

 口いっぱいに小麦粉の甘さが広がった。

 「……相変わらず康彦は優しいね。昔からずっとそう」

 「別に、誰にでも優しいわけじゃないぞ。俺がよく知ってる人だけだ。むしろクラスじゃ、ぶっきらぼうな奴だと思われてる」

 美琴はふっと笑う。

 「康彦は、もっと料理以外のことも関心持ったほうがいいかもね。特に……人間関係とか」

 言葉が終わりに向かうにつれて、だんだんと声が小さくなっていく。

 そして、美琴はくるくると前髪をいじり始めた。

 まただ。最近美琴の様子が少し変になる時がある。

 この何とも言えない空気に当てられると、こっちまで調子が狂うな……。

 「そうだな。中学の時は料理のことばっかだったし、高校では人間関係も頑張るよ」

 休み時間には常に料理本を読み、放課後になったら、速攻で帰宅し家の手伝いをする。

 中学ではこのルーティーンで三年間を過ごした。これはこれで楽しかったが、その代償として友達がほぼできなかったのだ。幸いにも、美琴がよく話しかけてくれたのでぼっちにはならずに済んだのだが。

 せっかくの高校生。初めての部活動。楽しまなかったら損だろう。

 俺は今後の期待と目標を胸に秘め、最後の一口になったパンケーキを口に入れた。

 

 

 

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