風情
風情
ラジオで流れたひと言。世界で一番小さな音はアリんこの足音。なんともほんわかとした優しい音なんだろう。1匹の蟻を想像するから、耳を澄ましても聞こえそうもないイメージだ。実際に聴診器等で聞いたら働きアリの集団の音は、一斉にバラバラに踊るタップダンスの様にとても騒がしい音だろう。
好きな音の一つにSLの音がある。山の坂道を登っていく「シュッシュッ」と聞こえる蒸気の排気音だ。あのどっしりとした力強い音が好きだ。負荷がかかり重苦しい音、なかなか進まず砂を撒き空回りする音。アナログだからこその音の変化が気持ちの変化に聞こえる。機械に気持ちなどないが擬人化して聞いてしまう。なんか頑張っている。そういうのが伝わってくる。機関手の汽笛のならせ方にも味がある。単なる合図だけでなく、途中で音程を変えるのは気合や意気込みを感じる挨拶だ。
嫌いな音の一つに鰹節を削る音がある。小学生の頃カンナで鰹節を削っていた時、誤って爪ごと指先を削り半年間包帯をしていた。爪を抜いたおかげで完治して、どの指を怪我したのか分からないほどだ。自立して料理中にスライサーでまた指先を削ってしまった。今度は皮膚を削っただけだから、血はなかなか止まらなかったものの大した怪我ではなかった。1か月くらいは丸くへこんだ状態だったが完治した、しかしトラウマになった。鰹節を削る音を聞くと、当時は手足の指先を曲げしゃがみこんでしまう。今ではしゃがむ事は無くなったが、その場で手足の指先を曲げ体が硬直してしまう。どうにも困った状態である。なんとかその場から離れて深呼吸して平静に戻している。嫌いな音は人それぞれだ。ジェット機のような大きな音 黒板をひっかく音 嫌いな上司や先輩の声は もはや雑音にしか聞こえない。困ったものだ。
音楽も好き嫌いがはっきりと分かれる。本人にとってはストレス解消や癒しの音楽でも他人にとっては騒音になる事が多い。ジャンル、重低音、音の大きさで騒音になる。私にとって日本の伝統音楽、歌舞伎、能楽などの邦楽と呼ばれる曲。あの超スローな音楽が苦手だ。なぜかイライラする。日本人なのに邦楽を受け付けられないのはちょっと残念である。デスロック以外は概ねどのジャンルでも楽しめる。気分次第で聞くジャンルが変わる。一口に音楽の好き嫌いと言っても、メロディや歌詞の内容で好き嫌いが同時に存在する。演歌やシャンソンではメロディは好きだか、歌詞の内容が嫌いだ。すぐに死ぬとか生きていけないとか、そういった表現が嫌いだ。ブルースやバラードのスローな曲はメロディだけは好きだが、こちらも歌詞は悲しすぎるからあまり好きではない。勝手な楽しみ方であるが翻訳を見ないで、悲しいけど頑張っていると言うイメージで楽しんでいる。
お経は嫌いだ。単純に怖い。お経の内容は素晴らしいし賛同しているし考えが好きだ。でも 一人で唱えても大勢で唱えていても怖い。邪念無く真剣に唱えているからなおさら怖い。葬式の時しか聞かないから、死者と結びついているイメージが強いからだろうか。仏教以外の宗教の教会、モスク、寺院で流れている曲は神聖な気持ちになる。なぜなんだろう。どの宗教も曲の内容も詳しくは知らない。死者と触れ合う場所での曲なのに、お経の様に恐怖を感じない。単純に他宗教との交流がないから、映画や小説でしか他宗教を知らないから、無知だから恐怖を感じないのだろうか。ホラー映画では、呪いの呪文としてラテン語やヘブライ語を使われることが多い。私がお経を怖がるように他宗教の人もTPOにより特定の音楽に恐怖を感じるのだろうか。
虫の声、波の音、風の音、炎の音。日本人には季節感や風情を感じる。インバウンドで来日する外国人には、ただの環境音のノイズにしか聞こえないらしい。日本に長期滞在すると帰国する頃には、この風情の感覚を少しでも味わえるようになるのだろうか。
昨日より素敵な明日に出来ますように




