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黒炎龍を宿す者  作者: 黒瀬雷牙
第四章 白雷龍を宿す者

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第六十話 双龍蒼白

 雷光が、戦場を白く染めた。


 レイアの放った剛雷突・虎牙。

 その一撃は、ランスの胸を正確に貫いていた。


「……ぐ、ぁ……」


 雷銃が、手から滑り落ちる。膝をついたランスの視界が、ゆっくりと歪んでいく。


 ――ああ。終わるのか。


 その瞬間、彼の脳裏に、過去が流れ込んだ。


 彼は孤児だった。


 親が誰なのかも知らない。

 名前すら、最初から与えられたものではなかった。


 物心ついた時、すでにそこにいた。

 光神教団の施設の中に。


 銃の扱い。

 戦闘技術。

 殺し方。


 生きるためのすべてを、叩き込まれた。

 感情を持つことは、教えられなかった。

 あるのは、命令と結果だけ。


 やがて彼は、雷帝国へと送り込まれた。

 スパイとして。


 そこで出会ったのが、雷帝インドラだった。


 強く、揺るがず、国を背負う男。その背中に、ランスは初めて“憧れ”という感情を抱いた。


 話し合いよりも、拳で。

 理屈よりも、力で。


 暴力で解決するその在り方が、彼には正しく見えた。


 もともと欠落していた感情は、やがて「非情」だけを残して磨かれていった。


 だが、インドラは討たれた。


 その息子、ハイドが即位した時、ランスの中で、何かが決定的に壊れた。


「……弱い」


 力なき王など、王ではない。


 そう信じていた。


 やがて彼は、白雷龍をその身に宿し、さらなる力を得た。


 だが同時に、黒炎龍の存在を恐れた。

 自分の強さを脅かす存在。

 だから、暗月国を脅し、仕向けた。


 小さい。

 弱い。


 そう言い聞かせながら。


 ランスが求めたのは、インドラのような力による支配。


 強さも、心も。


 いつか光神教団の麒麟を殺し、自らが王になる。

 ハイドを殺し、自らが王になる。


 インドラのように。

 インドラ以上に。


「……くだらん、人生だったな……」


 ランスの口元に、かすかな笑みが浮かぶ。その身体から、白雷の光が消えていく。


 貫かれた胸から、静かに血が流れ落ちた。


 アリスの腕の中で、ランスの力が、完全に抜けた。

 雷銃のランスは、そこで息を引き取った。


 戦場に、静寂が訪れる。長きにわたり、雷帝国を影から支配した男の最期は、あまりにも静かだった。


 戦場に残ったのは、焦げた大地と、倒れ伏す兵士たち。


 そして――


 完全に機能停止した、機械の少女。


 アリスの身体は動かない。

 胸部のコアは沈黙し、瞳の光も消えていた。


「……くそ……」


 クレイは歯を食いしばり、拳を震わせる。


 守れなかった。

 救えなかった。


 だが、立ち止まることは許されない。


 雷帝国に残る敵は、雷帝ハイド、ただ一人。


 別の戦場。


 吹雪の中、二つの“龍”の気配がぶつかり合っていた。


 黒炎龍を宿す、ミリア。

 白雷龍を宿す、ハイド。


 互いに視線を外せば、命はない。


 雷光が、ハイドの周囲を走る。


 その内側で、白雷龍の声が響いた。


『……怖いか?』


 ハイドは、静かに息を吐いた。


「……ああ」


 即答だった。


 死ぬかもしれない。

 負けるかもしれない。


 それでも――


「もう、覚悟は決めている」


 雷を纏う拳を、ゆっくりと握る。


「死んでもいい」


 だが、視線は揺れない。


「……それでも、負けるつもりはない」


 白雷が、さらに強く輝いた。


 黒炎と白雷。

 龍と龍。


 戦いは、最終局面へと突入する。


 吹雪と焦土が入り混じる戦場。

 黒炎と白雷が、互いに睨み合っていた。


 ミリアが、ついに動く。

 全身に黒炎を纏い、一直線に突進する。


「炎装突破ッ!!」


 地面を砕き、空気を焼きながら迫る黒き衝撃。


 ハイドは一歩も退かない。


「来い……!」


 指先に白雷を凝縮する。


「一指雷槍!!」


 黒炎と白雷が、真正面から激突した。


 轟爆。


 光と熱が戦場を飲み込み、二人の身体は吹き飛ばされる。


 だが、空中で終わらない。

 ミリアが叫ぶ。


「獄炎弾!!」


 黒炎の塊が、流星のように放たれる。

 ハイドも同時に。


「十字雷波!!」


 交差する雷の刃。


 再び、爆発。


 衝撃波が雪原を削り、視界は一瞬、白に染まった。


 距離が開く。


 ミリアとハイドは、互いに着地し、静かに構えた。

 空気が、張り詰める。ミリアの内側で、黒炎龍の声が響く。


『……次で、決着だ。間違いない』


 ミリアは、深く息を吸った。


「うん……分かってる」


 一方、ハイドの中では、白雷龍が告げる。


『押し切れば、奴には勝てる。だが奥義の代償として……お前は、もう動けなくなる。その後お前は、奴の仲間に、殺される』


 ハイドは、静かに笑った。


「……それでいい」


 雷を纏う拳を強く握る。


「どうせ死ぬなら」


 鋭い眼光で、ミリアを見据える。


「ここで……勝ち切る」


 黒炎が、白雷が、同時に膨れ上がる。

 大地が軋み、空気が裂ける。

 二つの龍の力が、極限まで高まった。


「終わらせる!!」


「決着だ!!」


 そして。

 ミリアとハイドは、互いの最後の奥義を放った。

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