プロローグ 黒炎と白雷の伝承
――人の世が、戦乱に覆われし時代のこと。
大陸は火と血に染まり、王も将も領地も、争いの炎に喰われていた。
人々は互いを疑い、奪い、滅ぼし合う。誰も、未来を語ることはできなかったという。
その時、天空の奥深くより、二柱の龍が目覚めた。
一柱は漆黒の鱗をまとい、炎の如き瞳を燃やす黒炎龍。
もう一柱は銀白の雷を纏い、嵐の如き轟きを宿す白雷龍。
つがいの龍――
古の伝承に曰く、二つの力は世界の均衡を司る者。
彼らは、人の欲望と憎悪に応え、戦火の大地に降臨せしめられた。
黒炎龍は怒りを糧に、敵を焼き尽くし、世界を焦土と化す。
白雷龍は正義と裁きの雷を振るい、暴虐を貫き、天罰を下す。
伝えられるところによれば、人は龍を畏れ、恐れ、時に宿す者を選ぶことがあるという。
宿主となる者は、幼き娘、若き少年、老いし戦士。
形は問わぬ。だが一度、龍の力を受け入れれば、もはや人であることは許されず、世界の秩序を変える存在となる。
そして再び、世界が争いに染まるとき――
黒炎と白雷は、大陸を裂き、天空を焦がす。
戦火の時代は、龍の咆哮とともに幕を開ける。
――これは、遠き未来に語り継がれる伝承。
人の世の悲劇と栄光は、常に龍の影に隠されている。




