最上階は果てしなく
今の気持ちを書いてみました
夢の世界まで導いてくれる存在『ユメバク』に案内されるがまま歩き続け、どのくらいの年月が経過しただろうか。
『ノゾミビト』の足、そして精神、全てが疲労をともなっている。
何処まで続くのか先が見えない階段を上り続けて気が狂いそうになるが、それでも立ち止まる事は出来ないのだ。
何故なら、先ほど登ったばかりの階段がもう、無くなっているのだから。
「休んでいたら階段ごと墜ちてしまう。
力をふり絞って、ひたすらこの階段を上るしかないんだ」
『ユメバク』は文字で出来た輪郭をひねり、『ノゾミビト』へと振り向く。
蹄の音を空間に響かせ、歩みを止める事を許さないと云わんばかりに、進みを促す。
「勿論です……!
私自身が望んだ事……ですから……この階段、最上階まで……!」
階段の途中で、覚えのある姿が視界に入った。
その瞬間、心に黒い渦が生まれた。
「!」
背後の階段が崩れ落ちている事に気付き、急いで足を動かした。
忌々しい姿が後ろへと遠ざかる。
「辿り着いてやる‼
辿り着いて、心の底から幸せを噛み締めてやるんです‼」
「そうだ、その気持ちを保ったまま、最上階を目指すんだ」
「はいっ‼」
その時、薄く広がる雲の切れ間から眩い光が射し込み、胸が高鳴る人の姿が見えたのだ。
「あ……!」
〈♪~~~~~~~♪〉
突然のアラーム音。
「夢の時間が終わり、現実の時間が始まる。
貴女は現実で最上階へと向かう階段を上り、夢を現実にする鍛練を行うんだ」
「絶対、最上階まで行きます‼」
「今夜また、夢に現れるよ」
夢から覚めた私は、朝食を済ませ洗顔と歯磨きを済ませると、机に向かい小説を書き始めた。
(夢の最上階まで辿り着いて、あの人と釣り合う自分になってやる‼)
心に力を込めて、私は昨日書いた文の続きを書いていく。
ふと、匂いがした。
(リオの部屋から……同じ匂い?)
廊下を挟んだ向かいにある妹のリオの部屋から、『ユメバク』の匂いがするのだ。
筆を進めながら、私はリオの夢を記憶でなぞる。
リオは保育所を目指して、勉強している。
とは言えリオはまだ中学生なので、勉強といっても保育関連の本を買って知識を得ているステージだ。
学校で色々あり、現在引きこもり。
私もだが……。
〈コンコン〉
「おねいちゃん、起きてる?」
気配なく、部屋の前に来ていた。
超能力……のような質を宿しているせいで、『色々』あるのだ。
「起きてる……親はまだ、夢の中だね」
「そうね。
真夜中だからね。
あの、今日、久し振りに外に出ようと思うの」
脱引きこもり宣言プラス、半外出デビュー宣言。
勇気を出そうとしているらしい。
「付き合うよ。
好きな場所何処でも、行くよ」
扉越しに話すのが楽しく、そして凄く凄く凄く嬉しい。
何故なら、小説の人物になれた気持ちになるから。
「おねいちゃん、嫌な人がいるのにゴメンね。
でも、わたし、一人じゃ……」
「リオは強い、偉い、半外出デビューしようてしてるもん。
クラスの嫌な奴なんかより、ずっと強い。
あいつらが『引きこもり姉妹』なんて言ったって、スルーすれば良いんだよ」
「ん……ん……」
「私たちには、夢があるんだから。
『ユメバク』がついてるもん‼」
夢がある人は最強なのだ。
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